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女装ではない女装:自分を美しく魅せる方法を見つけた話

私は未熟児として生まれ、幼少期から体が細く、筋肉がほとんどありませんでした。周りの男の子たちと自分が少し違うことに、小学校の身体検査がきっかけで何となく勘づいていました。というのも、保健室でパンツ一丁になり並んで待たされるわけですから、普段見ることはないクラスメイトの半裸を嫌でも見ることになります。みんなはガッチリとした骨格に筋肉のしっかりついた厚みのある体なのに、私はとても細身で骨と皮しかない身体で、今でもその体つきは変わりませんし、私の顔立ちも男の子というよりは中性的な顔立ちでした。そんな見た目ですから、当然イジメの対象になることもありましたが、「筋トレして見返してやる!」なんて考えたこともなく、それは私が自分を「男」ではないということを早期から自覚していたからです。

さらに、私は子供の頃から主に女性に多い疾患を2つも抱えています。遺伝子検査は受けたことはありませんが、何らかの染色体異常があるのかもしれません。それが性別に対する違和感や、典型的な男性らしくない身体的特徴の原因だったとしても全く不思議ではありません。

実は、私はこの細身でくびれのある体が好きなのです。しかしこの体に対する世間からの批判の声に晒されてきたため、本当は自分の身体を好きだと気づくまでには随分と時間が掛かってしまいました。

「すっごいガリガリ!骨と皮しかないじゃん!ちゃんと肉食べてるぅ〜?(笑)」

そんな言葉を何度も浴びせられ、自分の体についてネガティブなイメージしか持てませんでしたが、今は違います。「素材を活かす」方法を身につけ、自分の中性的な魅力を引き出すことができるようになったからです。

「男らしくない身体」で生まれてきたのなら、その自分を美しく魅せればいいのです。

男性的なステレオタイプに縛られることなく、自分らしく生きていくことこそが生きる戦略だと考えるようになりました。私の場合は、特徴的な肉体を活かした独自の美的センスを磨くことでその戦略を実践しました。そのためにまずは、自分らしくないものを排除し、自分らしいものを取り入れることから始めました。

コロナ禍のロックダウン中に伸びた髪を綺麗に整え、最終的には薄くなりはじめた髪を毛髪移植で修復しました。さらに邪魔で仕方なかった髭は医療脱毛で取り除き、メイクをしても違和感のない顔に仕上げました。ネイルも綺麗に整え、清潔感を保つように心がけています。

服装についても「女装ではない女装」というスタイルを追求しました。私の身体は他の男性とは違うので、男性用の服はなかなかフィットせず、デザインもあまり好みではありません。そこで思いついたのは、性別にとらわれず、自分にぴったり合うと思った服を選ぶことでした。ここでのポイントは、着てみたい服ではなくて自分に似合う服を選ぶことです。男性である私がスカートやワンピースを着ても、美しく見えるどころか滑稽に見えてしまいます。ところが、女性用であっても女性らしさを強調しないストレートジーンズやシンプルなセーターなどを着てみると、あら不思議、驚くほど自分の体型にぴったり合ったのです。

この「女性用だけど自分にフィットする服」という裏技スタイルを見つけてから、服選びが楽しくなりました。それまでの苦痛だった服選びが、今では楽しみになったのです。

こうして私は「男性らしくない身体的特徴」という一見欠点に思える特徴を活かし、自分らしいスタイルを確立しました。周りと違うため、多少は目立つ存在になってしまいますが、それが生活に悪影響を与えることはありません。むしろ、仕事では顔と名前を覚えてもらいやすくなるというメリットもあります。しかし、これまでの人生で苦しい経験が多かったために、人から注目されることに対して自信を持つことが難しいと感じることもあります。これからは、より健康的な自信を身につけるための方法を模索していきたいと思っています。

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