デジタル写真のbitとレンジ
デジタルカメラって今やスマホを含めて当たり前になりました。それを仕事にフル活用しようとすると様々な問題も出てきます。もちろん利点もあります。
・<良いところ> ほぼ無制限にシャッターが切れる。壊れない。止まらない(フィルムカメラはよく壊れて使えなくなりました)寒冷地や酷暑でもあまり心配しなくて良い。AIが進化して露出やフォーカスに気を使わなくても撮れるからフレーミングに集中できる、、などなど言い出せばきりがない。
・<ネガなところ> バッテリーが心配。いつかわ壊れるかも?という猜疑心が払拭でき切れないw。CCDのゴミの写り込み(結構頻繁にクリーニングに出してますが)。そしてレンジが狭い。
今回はこの<レンジ>の問題について諸々(オタク度がかなり高いお話ですが)
ほぼ全てのデジタルカメラは8ビット再現を終着点としています。モニーターも大体8ビット?。印刷も8ビット(だと思います。)じゃぁ8ビットって何? R,G,Bそれぞれのチャンネルに256の諧調がある情報です。言い換えればたったそれだけのステップで自然を写真に置き換えています。全体として色表現すると3チャンネルですから、256X256X256=16,777,216ステップです。問題は自然界の光の状態がその幅の中に収まりきらないほどワイドレンジなので、収まらない部分はツブレたりトンダりしてしまうことです。8ビットで再現できる光の幅が1〜10だとすると、32ビットはその10万倍くらいの幅という感覚です。自然界て一体何ビットの光に包まれているんでしょう?もっともっとワイドレンジだと理解できます。第一、自分の目で見ている時に<トブ>とか<ツブレル>ってあまり経験しませんよね。眩しい太陽を見たら初めてトビますが。じゃぁ擬似的にでも良いから<ビット数を上げて>撮影できないか?で、辿り着いたのが<HDRI>です。
<HDRI>はHigh Dynamic Range Imagesの略です。スマホカメラの<HDR>High Dynamic Rangeも意味は同じです。但しスマホはCCDの情報をチップで自動計算してレンジの広い絵を自動合成していますが、<HDRI>処理をしようとすると、かなりの部分ソフトと手作業に依存することで解決します。
(ここまで書いて一体誰がこんなことに興味あるんだろう?と不安になりつつ。。)
実際の写真で説明してみます。カメラの<ブラケティング>を+ー1段、7枚1組にしてシャッターを切ります。で、これらの写真を32BIT画像(HDRI)に合成します。私はBridgeとPhotoshopで作業します。
作業画面キャプチャー動画を貼りました。ご興味あればダウンロードしてご覧ください。ここまではソフトが自動で処理してくれます。この工程は7枚を1枚に合成している、、というより7枚のそれぞれの光のエネルギー情報を1枚に統合して光のマップを作る、と言った方が正しいかも知れません。
8ビットファイルと32ビットファイルの決定的な違いは、モニターで見ている画像はあくまでも8ビット環境に合わせた見え方ということです。実際はピクセル一つ一つに深度の深〜い光の情報が埋め込まれています。ですから、コントロールするとハイライトもシャドーもキチンと調子を持っています。結局最終的にそのファイルを8ビットに定着するのが仕上げ作業です。
それぞれの画像です。
8ビットは適正露出に−1段の画像を貼り空のトビを抑えました。32ビットファイルは逆に地面の暗さを明るくしました。引き絵で見るとあまり違いがわかりません。でも、それぞれを拡大するとディテールに違いがあります。
微細な差です。ポイントはどっちが優れているか?ではなく、どちらが自分の視覚に近いか?だと思っています。8ビットはコントラストが高くディテールが弱く感じます。物の輪郭にジャギーと偽色が出がちです。32ビット処理の画像はシャドーにも調子があって物の輪郭が柔らかく感じます。また空の中にもキチンと調子が出ています。それが自分の見た目の記憶に近しいと感じ、HDRI処理をするようになりました。
問題もあります。風で揺れている物、動きの速い物は画像がズレてしまい結果的にその部分は適正になる露出の一枚画像を貼りズレを修正する必要があります。また1カットあたり7枚シャッターを切るので、1日あたりのシャッター枚数がとても増えます。1日フルにロケに出ると約2000枚程になります。今の自分のカメラのシャッターライフ(メーカー指定40万回)を半分使い切ってしまったのも、この撮影の影響が大きいです。
様々な自然条件の中で、たまにこの手法がバッチリ決まる時があります。その時の喜びが忘れられずシャッターを切っています。