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写真の話、デジタルの事、転機。

長いキャリアの間には大きな転機がやってきます。仕事の中での出会いだったり、時には思わぬ形で唐突に。

一つは仕事の中での出会いでした。

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CLINIQUEの仕事。この3商品がその当時(2007年)のBIG3と云われる看板商品でした。CLINIQUEの広告アイデンティティーを作り上げた人がIrvingPenn氏です。その年アジアリージョンにおける、PENN氏とCLINIQUEのビジュアル使用契約が失効する年でした。クライアントからの意向は「PENN氏の表現をそっくりコピーしてください。それがQLINIQUEだから。」

すごい事だと思います。一人の人がブランドの顔を作り上げている。究極のブランディングです。そこでクライアントに依頼をして可能な限り元の状態がわかるレイヤーデータを入手してもらいました。そのレイヤーをマスクを外し構成を掘り下げてゆくと、約200枚ほどの素材写真で構成されていました。あるものは8X10、あるものは4X5、小さいものは35ミリのスキャンデータです。水滴の一粒、文字一文字ごとにライティングを変え、タイミングを変え、これがベストだという写真たちの集積でした。

自分がデジタル化をして10年ほどのタイミングでした。Irving Pennほどの世界的な巨匠が、この方法論で仕事に取り組んでいるのなら、自分がそれに習っても間違っているはずがない!まさに確信出来た仕事です。結果として上のビジュアルを作りました。100点近い素材の合成です。それから暫くの間、デパートの化粧品売り場でこのビジュアルが活躍しました。


2つ目の転機は311です。

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ボランティアとして向かった先(岩手県山田町)は一面の荒廃です。感情が揺さぶられました。仕事の事など吹っ飛んでいきました。ボランティア作業の傍ら撮った写真です。でも伝えきれないモドカシサが募るばかりです。臭気が伝わりません。始終空気に舞っている粉塵が映りません。人の悲しみが伝わりません。

確かに自分はソコに立ってこの様子を見て強烈に感じているのに、それをリアルに写真を介して人に伝える術を持たない自分。「情けない」

それからデジタルデータや再現性、bitコントロール、レンジとは?現実世界と人の視覚、写真との違いなどを意識して可能な範囲で視覚にビジュアル表現を近づける工夫をスタートしました。トライアンドエラーの連続が今の自分の写真の方法論になりました。

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自分の仕事場です。ずいぶん長い間にこの形に収まりました。全ての仕事がデジタルです。CANON_1DxMk2+CaptureOne+Photoshopの組み合わせが出来ました。自分にとっての最適ツールです。動画の場合はPremiereProです。

「銀塩写真でなければ写真でない」と云う判断もあるかもしれません。自分はフィルムは使いません。制作過程の可能な全てを自分でコントロールしたいからです。現像=ヒトに委ねる、偶然性に委ねる事だからです。(あくまで自分にとってですよ。)もちろんコストの問題もありますけれど。こんな転機を迎えスチルにおいては全て自分で仕上げて納品するのがスタイルになりました。プロのフィニッシャーってスキルはプロですけれど、そもそもシャッターを切った時にその場所、その時に居なかった訳ですからソコを委ねることにどうしても違和感を感じでしまうのです。

次回は<デジタル写真のbitとレンジ>について書きたいと思います。


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