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バーチャルマーケットとはなんだったのか

祭りの終わりに。

 バーチャルマーケット(以下、Vケット)が終わり、一週間が経ちました。

 開催期間は終わり会場もクローズしたけれど運営的にはまだまだVケット2の後処理が続いていて、閉会式で「Vケット3をやるぞ!」とぶち上げたものの下準備を粛々と進めるのみで表に出せるものはまだ何もありません。
 ほっとしたような、祭りの熱に浮かされたような、次へと向かう熱量に滾っているような複雑な感情ですが、ともかく一つのコトが終わったということで、このタイミングでしか語れない「想いの塊」のようなものをここに記します。

勢いから生まれたVケット

 私が初めてHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被ってVRChatの世界に降り立った時、言いようのない感動を覚えました。

 そこには確かに自分の「身体」があり、ゲームの枠を明らかに超えた「人々の生活」がありました。
 何もかもが足りていないけれど、何でも作り出すことができる世界。
 幼い頃からずっと、何かを作っていないと気が済まない性質だった私にとっては天国のような場所でした。

 私は思いついたら即実行な脊髄反射行動人類なので、物事を始めるときには深く考えません。
 Vケットをやるぞー!と言い出した時も、単に「VR空間上で3Dモデルの同人即売会みたいなことができたら超面白くない?!」と思ったことが始まりでした。
 思いついたが吉日、勢いで開催日を決めてしまいます。
「それ面白そう!」と乗っかってきてくれた人、もしくは「またフィオっさんが変なこと言ってる手伝ったるわ」といって手を貸してくれた人、私が「助けてくれぇぇぇ!」と泣きついて、救ってくれた人。
 たくさんの人の助けがあり、おかげさまで多くの出展サークル様に恵まれ、Unityのド素人が集まって無茶苦茶やりながら七転八倒の末に第一回が開催されました。
 当時、中心となるスタッフは、私と水菜ちゃん、モスおじの3人しかいませんでした。

良貨が悪貨を駆逐すると信じていた

 VRChatにはアバターペデスタルという、アバターを着替えることのできる更衣室のようなシステムがあります。ペデスタルは、ユーザーが自由に中身のモデルをアップロードし、ワールドに設置することができます。VRChatの面白さの根幹の一つを成す機能ですが、この「自由に」という所が魅力である反面、問題でもあって「そのモデルの権利は誰が保有しているのか」という点はアップロード時に問われません。(何か問題が起きてもアップロード者の責任なのでVRChatは知らんよ、というスタンス。最近素早く対応してくれるようになった)
 権利的に問題のあるアバター(ゲームからのリッピングモデルやMMDからの無断流用など)も残念ながらVRChat上には存在していて、そうと知らずにペデスタルでアバターを着替えて自撮りをアップしたら権利侵害で炎上、みたいな出来事も起こります。
 そもそも「VR空間でアバターとして利用する」という用途が、これまではほとんど存在しない需要だった為、利用規約や仕組みの整備が追いついていない状態とも言えます。

 一方、そのような問題を解決したい、と考えて行動した3Dモデラーさんがいるのもまた事実で、VRChatでのアバター利用を前提として作られたモデルも多数存在しています。
 ただ、利用可能なモデルがたくさんあっても、その存在を知らなければ手に取ることはできません。
 だから、Vケット1は「アバターを作る人と使う人を繋げる出会いの場でありたい」という想いがありました。
 良いモノの選択肢がたくさんあれば、わざわざ後ろ指をさされかねないモノを使う人は減るだろうと考えたのです。
 VRChatの仕様上、悪意のアップロードを防ぎ切れないということもあり問題は今も起き続けてはいますが、Vケット1でアバター利用想定のモデルが多数発表されたことで、日本コミュニティにおいては問題抑制の一定の効果があったのではないかと感じています。

VケットはVR空間を豊かにする

 Vケット1の企画を進めていくうちに「これはとんでもないことになるぞ」という予感めいたものは感じていて、実際に蓋を開けてみるとTwitterのトレンドに乗ってしまったり、VRの住人たちの使用アバターの顔ぶれが激変したりと、多くの反響と変化を呼びました。

 その後「Vケット2もやるよ!」と宣言しながら「これは一体なんなんだろう?」と考えていました。
 何のためにVケットをやるんだろう。
 自分は、なぜVケットをこんなにもアツいと感じるんだろう。
 Vケットを続けていったら、VR空間はどうなっていくんだろう。

 答えは、Vケット1のアンケートや感想ツイートの中にありました。曰く。
「VケットをきっかけにVRChatをはじめました!」
「Vケットに出展したからモデルを完成させることができた!」
「Vケットでお気に入りのアバターに出会えた!」
「普段は遠くて行けない即売会イベントだけど、Vケットならバーチャル空間だから行ける!」

 Vケットがもたらしたものは、一言で言えば、
「VR空間を豊かにする機会」なんだ、と私は感じました。
「Vケットという、なんだかよく分からないけど未来っぽいイベントがVR空間で行われているらしいから、HMDを買ってみようかな」とか。
「BlenderもUnityも初心者だけど、モデル作って販売してみよう」とか。
「今自分が使ってるモデル、試しに販売してみようかな」とか。
「このパーツ、まさに欲しかったんだ」たくさんの3Dモデルが流通したり。
「次回は自分も出展したい……!」創作のモチベーションになったり。

 人が増えて、ものが増えて、出会いが増えて。
 少しずつだけど、VR空間が豊かになっていく。
 好きなアバターを着て、好きなアクセサリや武器を身に着けて。それだけじゃなくて、VR充してるから現実もがんばろうと思えたりとか、モデルを売ったお金でちょっと良いお肉を食べれたりとか。
 個人だとか企業だとか権利だとかお金だとか、そういうのももちろん大切なんだけど、それよりももっと尊い「豊かさ」とか「何かをやろうとする原動力」とか。
 Vケットはそういう目に見えない何かが集まる場所になったし、これからもそうあるべきなんだろうな、と思っています。

じゃあこれからどこにいこうか

 ここに「Vケットは参加者皆のものであり、誰のものにもならない」ということを宣言しておきます。

 Vケットには、お客さんは一人もいません。
 関わる全ての人が参加者で、全員が対等なイベントです。ゆえに、全ての出展ブースは平等に表現の機会があるべき(他のブースの表現を阻害することがあってはならない)だし、会場とブースは相乗効果で高め合うことを意識している(会場ごとにテーマを持っているのはその為)し、例え多額の協賛費用を支払って頂いている企業ブースであっても動線を破壊することは許容しません。

 来場者と出展者と運営スタッフと協賛企業とVRChatとが一体となって一つのイベントを作っていて、そこには主従も、取引上の優劣も、サービスを提供する側受け取る側という区切りも一切無い状態が理想の姿です。

 Vケットのようなイベントは私が始めなくとも誰かが始めたでしょうし、VR空間上の展示イベントというのは今後他にも出てくるでしょう。
 ただ、VR社会黎明期のこのタイミングで、クリエイター個人の主催で、クリエイター個人の力の集合体としてのVケットが開催できたことには大きな意味があると思っていて、これは営利の判断が先に来がちで、利害関係や思惑が裏に走りやすい企業の主催ではなかなか成立しづらい現象だったでしょう。
 誰かが作った座組の上に乗っかるのではなく、個人が集まって一個のプロジェクトを作るという点に特異さがあり、きっとこれは「Vケットは参加者皆のものであり、誰のものにもならない」ことを皆が信じていようとする限り、決して覆らない優位性だと思います。

 たくさんの出展者さんと来場者さんと、海のものとも山のものともしれないプロジェクトを支えてくれた協賛企業様とクラウドファンディングの支援者様、超有能なスタッフの面々のおかげで、Vケット2は大成功といえる部類の結果を残したと思います。
 解決できなかった課題も、新たに生まれた課題も山積みですが、何事もやってみないと分からないから、たくさんの課題や痛みと向き合いながらVケットは前に進んでいきます。
 誰のものでもない、皆のものとして、Vケットを育てていきたい。

 Vケット2の開催を決めた時に感じた直感は、確信へと変わりました。
 Vケットは、その開催を通じて「仮想現実空間を発展させ、豊かにする」ことを⽬指します。
 Vケット3、Vケット4と開催を重ねていくにつれ、私達の生きるVR空間はより豊かで暮らしやすい場所になっていくでしょう。
「それって良いじゃん!」と少しでも共感して頂けたなら、是非とも一緒にVケットを企てていきましょう。

 まずはVケット3に向けて、出展サークルの募集も、協賛企業の募集も、スタッフの募集も始めていきます。近々お伝えできると思うので、今しばらくお待ち下さいね。



仲間たちについて

 私の「想いの塊」の話はここまででおしまいですが、最後に感謝を伝えさせて下さい。きっと長くなります。(なんと、ここまでで2合目です)

 まずは、出展サークルの皆様。
 大切な我が子のような創作物をVケットに預けて頂き、本当にありがとうございます。
 ハチャメチャに難解な入稿ルール、未決事項の多い運用、押しがちなスケジュール…運営としての未熟さを恥じるばかりですが、それでもなお手を差し伸べ、我々を助けて下さり本当にありがとうございました。
 出展者DiscordやTwitter、VRChat内で、出展者同士の支え合いで解決された事は数知れません。400人以上ものクリエイターが一堂に会し、準備から開催に至るまでの長い期間、支え合い刺激し合いながら一つのイベントを作るというのは、他に類を見ないバーチャルだからこそ成立するコミュニティの強さだと感じました。
 これからも、ぜひ一緒にVケットを育てて下さい。またの出展を心よりお待ちしています。ご一緒できて光栄でした。ありがとうございました。

 ご来場頂いた皆様。
「Vケットに行ってみようかな」そう思って頂けたことがまずとても貴重なことだと思います。
 お気に入りのモデルは見つかりましたでしょうか。皆様の夢想するそれぞれの未来のイメージは、感じられたでしょうか。
 Vケットでの体験が、皆様のVR生活をほんの少しでも楽しいものにできていたなら、それに増す喜びはありません。
 Vケット3が開催されたら、是非また遊びに来てください(サークル出展でもいいのよ)。お越し頂き、本当にありがとうございました。

 協賛企業様へ。
 Vケットはまだまだ未発達のイベントで、運営組織の形すら曖昧です。
 そんな中で「何か」を感じ取って下さったからこそ、ご支援を頂けたのだと思います。
 歯に絹を着せずに言えば、頂いた協賛費用を金銭でリクープすることは現実的ではないでしょう。今はまだ、そこまで成熟した市場ではありません。
 しかし、VR空間はこれからきっと大きく花開く市場であり、VR空間内での展示・販促ノウハウは、現実空間のそれとは全く異なる次元の発想が必要になってきます。今からその方法を最前線で共に模索することに、必ずや意味があると信じています。
 共に栄える未来に向けて、手を携えながら歩めることを願っています。この度のお力添え、誠にありがとうございました。今後ともご支援賜れますよう、よろしくお願い申し上げます。

 クラウドファンディングでご支援頂いた皆様へ。
 産声を上げたばかりのVケットという文化。その始まりは、今この瞬間にしか味わえません。だからこそ、皆様と一緒に形に残るものを作りたいと思いました。
 考えた末、現実と仮想でお揃いのTシャツだったり、会場に残り続ける石碑だったり、世界に一つだけのアバターだったりといったプランを用意しました。
 クラウドファンディングが成功するかどうか、魅力的なプランを作れたかどうかはプロジェクト開始まで本当に不安でしたが、目標額の150万円は1時間半足らずで達成し、最終的には557万円の支援額、915名以上もの支援者様に恵まれました
 私達が見た夢を、共に追ってくれる方がそんなにもたくさんいて、思い出を共有できる人がこんなにもたくさんいらっしゃるのが、嬉しくて仕方ありません。
 遠い未来、Vケットが当たり前の存在になった時「Vケットっつーのはな、ワシらがわけぇ頃に始まったんだ」と言って、ボロボロになったTシャツを若人に見せてあげたいですね。

 運営スタッフの皆様へ。
 私はすごく偏ったスキルの持ち主で、企画を前に進める馬力だけは人一倍あるものの、足元固めも弱くコミュニケーションも下手くそで暴走しがちでスピード感を求めるあまり他の全てを軽視しがちな欠点ばかりの人間です。
 集まってくれた皆の、包容力と人間力、磨き上げた技術の数々。それらが奇跡的に噛み合って、最高のチームになったと感じています。
 一人一人私が声をかけて集まってもらったから、すごく思い入れがあって、最後までご一緒できたことが本当に嬉しいんです。本当にありがとうございました。

 ワールド制作の6名。
 通称世界創造主の、モスおじ。カンナちゃん。Sigちゃん。RootGentleさん。ぱしりさん。ヨッシャさん。

 モスコミュールおじさま。
 圧倒的なデザインセンスと感性の持ち主であり、また、彼が作り出す空間にあるモノはその全てに意味があり、考え尽くされています。そしてメチャクチャ手が早い。驚愕のクオリティのモデルをわずか数日で完成させてしまう地力の強さを感じる場面が何度もありました。
 感性と理性のバランスに長け、多くの素晴らしい実績を持つ、私が最も信頼しているVR空間デザイナーです。

 番匠カンナちゃん。
 凄く気になる人で、いつか絶対に一緒に何かがしたいと思って惹かれていました。バーチャルミュージアムの作成を依頼して引き受けてもらった後、史上初のバーチャル建築家を名乗り始めたカンナちゃんは、次々とVR建築史上に残る偉業を打ち立てています。私の見る目、最高だったのではないでしょうか(突然のドヤ)。

 Sigちゃん。
 FutureTerminalの構想が出来た時、彼以外にこれは作れない、と思いました。VRoadCasterスタジオを代表とした彼の作品は、現実の延長線上ではない遥か未来の光景を、まるで見てきたかのように切り取って現代に表現します。深海に漂う未来の駅。クリエイティブの輝きが集まる場所に相応しいTerminalとなっていたのは、皆様ご覧になられた通りです。

 RootGentleさん。
 言わずとしれたJapanShrineやSakuraHirobaの作者で、VRChatで彼の作品に触れたことが無い人は恐らくいないでしょう。日本VRChatを代表するワールドクリエイターのRootGentleさんにどうしても異世界マルシェを作って頂きたくて、依頼させて頂きました。ワールドの完成も最も早く、テストでログインした時、路地裏に「人の生活の息遣い」を感じて息を呑みました。光の表現や演出への造詣も深く、多くの気づきを頂きました。

 ぱしりるいさん。
 モクリチームのリーダー的存在としてワールドのベースを作成頂いた他、最終的には配置まで含めてバザールの全てを担って下さいました。つくしあきひと先生のイメージを忠実に再現し、負荷も最小限に抑えた素晴らしいワールドでした。責任感が強くて行動や反応も人一倍早く、何事も安心して任せることができる方でした。
 もちろん、モクリチームのつくしあきひとさん、さわえみかさん、さかにゃさん、やまかみさん、ナイアさんの全員が丹精込めて力を集結してくれたからこそ、あのワールドができました。テーマワールドを複数の人が手がける、という、一つの成功事例を示したチームだったと思います。

 ヨッシャさん。
 Vケット1では出展サークルだったヨッシャさん。ブースの造形に一目惚れした私が、絢爛博覧会を作って欲しい、とお声がけしました。その時点でモデリングを始めて数ヶ月しか経っていないと聞いた時には本当に驚きました。
「ワールド制作やUnityは分からないです」というところを無理くり引き入れ、途中サポートが足りずご迷惑をおかけしてしまったこともありました。
 絢爛博覧会の会場は、私が思い描いていたイメージそのもので、夕焼けを見上げて涙したことを覚えています。最初から最後まで、出展サークル様にとって良きように、と考え続けているのがとても印象的でした。

 SDKアドバイザーにしてギミッククリエイター、通称SDKの神々こと、ナルくん。ちうさん。ziritsuさん。はつかさん。サークルのブースチェックでは、400ブースに対して800以上のunitypackageを目視し、クオリティチェックをして下さいました。

 ナル(momoma)君。成長速度が凄まじ過ぎる技術者です。
 会う度見る度に新しい技術を作り出していて、彼の発明にワクワクさせられている人も多いのではないかと思いますし、私もその一人です。
 VRChatを始めてすぐの頃からの友人で、Vケット2以前にも様々な企画で彼の力を借りていました。
 SDKチームのリーダーを依頼しまして、縦横無尽の活躍をしてくれました。彼の尽力が無ければ、Vケット2は絶対に成立しなかったでしょう。それくらいにチームにとって欠かせない存在であり、頼れる名技術者です。
 ワールド間移動に使用した、動く城感のある扉が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。あれは、彼が培った技術を注ぎ込んで作成したギミックです。

 ちうさん。
 is GOD。VRChat運営も一目置く技術者で、数々のエディタ拡張の開発を通じて運営チームの効率化に貢献して下さいました。
 また、拡張メニューもちうさんの培った技術で、その存在に驚いた人は数知れないでしょう。
 とても主体的にチームに関わって頂き、何度も何度もその存在に救われました。新モデルのZちゃんはメチャクチャ可愛いので全員買って下さい。

 ziritsuさん。
 イワシファームの主です。音声周りや動画再生周りの知識が深く、エントランスの企業ブース周辺の演出に一役買って下さいました。
 1つのワールドに複数のBGMや動画があり、それらが立ち位置に応じてシームレスに切り替わることに気づきましたでしょうか?音が重なることなく快適に過ごせる、当たり前のようで当たり前でないVR空間ならではの演出はziritsuさんの技術の賜物です。

 はつかさん。
 VRChatの同期周りを誰よりも調べ把握し尽くした、同期の神です。
 Vケット1ではObjectSyncにほとほと悩まされましたので、お力を貸して欲しいと依頼しました。レスポンスがとても早く、持ち手のいない浮き玉を積極的に拾って頂いて、本当に助かりました。
 はつかさんの「入稿ブースの作り方」の動画に助けられたサークル様も多いのではないでしょうか。

 配置スタッフの、車軸ちゃん。sabakichiさん。まろんちゃん。yujinnさん。Captainさん。マッスンさん。シンヤさん。サークル様からお預かりした大切なブースを会場に配置し、想定した挙動かどうかを確認する、非常に重要なポジションでした。

 車軸制作所ちゃんは、配置チームのリーダーとしてGitの導入とレクチャー、エントランスの企業ブースの配置、各会場のブランチ統合、配置図の出力スクリプトの作成など、およそ配置に関わる全てのシーンで力を発揮してくれました。
 世界創造主とSDKの神々たちがズバ抜けたクリエイティブを生み出し、それを統合してまとめ上げたのは車軸ちゃんを筆頭とする配置スタッフの面々でした。車軸ちゃんはいつも穏やかで愛らしい、チームのムードメイカー的な存在です。

 sabakichiさん。
 カンナちゃんとタッグを組み、最大のブース数を誇るバーチャルミュージアムの配置を一手に担って下さいました。
 いかにして快適なワールドを作るかを常に考えていて、常に問題提起と解決策の提示を重ね、よりブースが活き、より負荷が低く、よりワクワクする会場を目指して知恵を絞ってくれました。
 我々のような、一人一人の責任範囲が無茶苦茶に広く即時即決のスピード感が求められるチームにおいては、sabakichiさんのような自ら考え意思決定ができそれを共有できる人の存在は非常に心強かったです。

 まろんちゃん。
 異世界マルシェの配置を担って下さいました。
 圧倒的な安心感と安定感。それに尽きます。技術もさることながらとてつもない自燃型で、自分で配置してセルフチェックを走らせ、更に改善して…という工程を誰に言われずとも粛々と進め、気づいたら異世界マルシェが最も早く完成していました。
 コミュニケーション能力も格段に高く、良いものを良いと言い、誰かのファインプレーに誰よりも早くリアクションして讃えるまろんちゃんの姿勢が、チームのムードを引き上げるのに一役買ってくれました。

 yujinnさん。
 絢爛博覧会の配置を担って下さいました。
 スチームパンク集団歯車団のメンバーでもあり、私を「ボス」と慕ってくれる可愛い息子の一人です。
 配置スタッフを募った時「ボスと車軸さんが頑張っているのに、僕が頑張らない訳にはいかない!」と手を上げてくれたこと、本当に嬉しかった。
 黙々と配置を進め、更には本来担当外であった配置数の多いバーチャルミュージアムの一つも手掛けて頂きました。
 寡黙で、表情の読めない背の高いロボットに身を包んだ彼が、一言「任せて下さい、ボス」と言ってくれるだけで、どれだけ私の心が救われたことか。

 Captainさん。
 Vケット1の時も、実は立ち上げ当初から全ての経緯を見てくれていた人の一人です。
 当初はVケット2の配置スタッフではなかったのですが、突然の人員不足により、サークル入稿〆切後にチームに入って頂きFutureTerminalの配置を担って頂きました。
 そこからの作業スピードが圧倒的で、あっと言う間に仮配置を終わらせ、他のメンバーの手助けもたくさんして頂きました。
 開催期間中の三日間、最も忙しかったのはおそらくCaptainさんで、開会直後から終了直前までワールドを改善し続けてくれました。全ては、サークル様のブースがより良く、より希望通りの見え方になるよう追求しようとした責任感がゆえでした。

 マッスンさん。
 モクリバザールチームの配置スタッフとして加入して頂きました。半分くらい配置を終えた頃、突然の出張でネット環境が閉ざされ、やむなく配置をぱしりさんに引き継ぐ形になりました。
 マッスンさんは自作アバター交流会でイベント開催経験も豊富で、以前から信頼を寄せていた為、二つ返事で引き受けて頂いた時は心から嬉しかったです。次回があれば、また是非お手伝い頂けたら嬉しく思っています。

 シンヤさん。
 FutureTerminalの配置スタッフとして加入して頂きました。本格稼働の前に体調を崩されてしまい、残念ながら運営スタッフとしての関わりはなくなってしまいましたが、健康が全ての根源ですから、きっとまた元気になってご一緒できる日を楽しみにしています。

 中心となって運営に関わってくれた方々の他にも、一部コンテンツの提供でお世話になった方々がいます。
 Vケット2はきっと多くの「VRの楽しさをまだ知らない人」が訪れるであろうし、業界外にまで情報が届くだろうから、私が知りうる限りの「今、VRでアツいモノ」を全て備えておきたいと考えていました。

 その一つがFutureTerminalで見ることのできたYORIMIYAさんのパーティクルライブであり。
 また、バーチャルミュージアムのアルテマ音楽祭(カズユキさん、らくとあいすさん、下平公麻呂さん)でした。
 VRを活用した音楽ライブというのはまだまだ発展途上ですが、確実に伸びていく領域だと感じています。しかし、今企業主催で開催されているVRライブはどこかしら「観るモノ」の域を出ておらず、それはコンテンツを作っている側も充分に理解した上で歯痒さを感じているのではないでしょうか。
 PCやHMDのスペック、サーバー、開発コストの問題が立ちはだかっていて、その壁を越えるのは容易ではないのだろうと察します。
 ところが、VR空間に住んでいる人々の中には、VRChatという、スクリプトの使えないUnityと、同ワールド内の同時接続者数最大30人程度という過酷な環境で、没入型のVR音楽ライブを実現してしまっている人々がいます。彼ら彼女らの尖った才能を、バーチャルマーケットというステージ上でより多くの人に伝えたいと思いました。
 YORIMIYAさんのパーティクルライブは、まさにMVの中に入り込む体験ができる、歌詞と踊る音楽ライブ。
 アルテマ音楽祭は、参加者自らが音を奏でて編む音楽ライブです。
 体得しなければ分からない「ライブの中に全身で入り込む体験」に、涙した人も多かったと聞いています。突然の依頼をご快諾頂き、バーチャルマーケットを彩って頂いて本当にありがとうございました。

 別の形で音の演出に携わって下さった方々がいます。
 モクリバザールのBGMを作成頂いたミディさん。
 絢爛博覧会のBGMを作成頂いたバーチャルねこさん。
 Vtuber界の作曲勢といえば、な二大巨頭のお二人です。敬愛する憧れの方々で、依頼のDMを送る時は思わず指が震えました。様々な無茶を飲んで頂き、「応援していますよ!」の言葉とともに楽曲をお送り頂いた時は心が震えました。

 イトッポイドさんというVtuberさんをご存知でしょうか。
 バーチャルイベントスタッフを名乗り、ティッシュを1000袋配ったり、トラックに載せた巨大モニターで街頭サンプリングをしたりする、異色のVtuberです。
 今回、各会場の入り口に案内botが立っていましたが、彼女たちはイトッポイドさんの企画によるものです。Vケット2をきっかけに初めてVRChatを触る方でも充分に楽しめるようにと、まるでテーマパークのキャストのようなデザインのアバターをご用意頂き、各種案内文を作成下さいました。
 更には、ご本人は72時間耐久人力案内bot(botとは…?)にチャレンジしており、publicのエントランスでイトッポイドさんにお会いした方も多かったのではないでしょうか。

 これらVケット内コンテンツの面で協力を頂いた方々もいれば、Vケット外での協力者もたくさんいました。
 クラウドファンディングの可愛いプランイラストは、春日部つくしちゃんの描いたものです。
 公式配信として、YoutubeLiveを通してバーチャルマーケットの光景を多くの方に届けてくれたVtuberの皆様(春日部つくしちゃん、ロボ子さん、さはなさん、魔王ヘルネス様、東雲めぐちゃん、奏天まひろちゃん、のらきゃっとちゃん、あっくん大魔王様、おきゅたんbotちゃん、ぽんぽこちゃん、ふくやマスターさん、バーチャルゴリラさん)。
 納期に追われ、手が回らなくなった私に手を差し伸べてくれたサブスタンスペインター使いの友人もいました。枚挙に暇がありませんが、ともかくたくさんのバーチャルの住人たちの助けの元に、Vケットは成立したということです。

 顔も知らないけれど誰よりもそばにいる愛すべき友人たちに、心から感謝申し上げます。

 私やここまで紹介した面々がバーチャル担当だとしたら、リアルを担当した力強い仲間たちがいます。
 VR法人HIKKYと、その母体でもあるフナコシステムズの皆さんです。

 私、動く城のフィオは、VR法人HIKKYの所属アーティストであり、バーチャルマーケットは私が主催者でHIKKYが主催、という形式を取っています。
 舟越社長はじめHIKKYの現実の事務所メンバーは、バーチャルのスタッフの面々ほどはVRで生活はしていませんが、非常にVR空間での生活への理解が深く、また「ほとんど新人類と言っていいほどに感覚がVRに寄っている私たち」を理解しようと努めてくれます。
 私は元々は現実世界のままならなさに絶望してVRを始めた口なので時折過激なことや突飛なことを言いがちなのですが、それらを寛容に受け止めて「人の言葉」に翻訳して伝えてくれるHIKKYのメンバーはとても貴重な理解者です。

 協賛企業様への営業や打ち合わせ。新聞や雑誌、テレビへの露出戦略の策定と実行。運営スタッフとの契約から金銭授受の整備まで「Vケットの裏側」を全て担ってくれました。
 彼ら彼女らの活躍がなければ、Vケット2はここまで大きくもならなかったし、多くの人に知ってもらうこともできなかったことでしょう。

 出産タイミングが重なったにもかかわらず、Vケットの2Dデザイン面を一手に担い、ともするとバランスを欠きがちな私を優しく諭してくれるさわえみかさん。

 動画撮影や編集に長け、取材窓口や契約窓口も担って下さった新津さん。取材や打ち合わせの日程をバカスカ忘れてしまう私をコントロールするのは、本当に心が痛んだことと思います…。

 既存の業務があるにもかかわらず、私からのヘルプ発信に対して我先にと助けの手を差し伸べて下さった、さん。

 VER.のプロジェクトとの連携を図り、様々なアイディアを出してご相談に乗って頂いたあさみさん。ななこさん。

 Vケットの権利周りや契約周りを、豊富な経験から支えて下さった常吉さん。Vケットはずっと続く文化にしていきたいんだ、そしてそれにはクリエイターがハッピーになる契約を作らないとダメなんだ、と主張する私の言葉を真摯に受け止めて頂きました。Vケットと、それに関わるクリエイターの双方が支え合いながら互いにメリットが享受できる契約になったことと思います。

 協賛企業様への営業を一手に担って下さった、黒銀さん、岡田さん。
「バーチャル空間上に発生した3Dモデルの即売会」という、ハチャメチャに説明が難しいイベントを、各企業のメリットと照らし合わせて提案し、方々を駆け巡って頂きました。
 異世界人のような私の言葉を、しっかりと聞く時間を取り、ビジョンの共有を行い、より盤石な体制を徐々に作り上げていきました。彼らの活躍の成果は、エントランスに燦然と輝く協賛企業様の顔ぶれが、何より雄弁に語っています。

 HIKKY、そしてフナコシステムズの社長、舟越さん。「フィオさんのやりたいことを実現するのが俺の仕事だから、思うまま目一杯やってくれ」と、いつも私を信じて解き放ってくれます。私をマネジメントしないことが、私に対する最も効果的なマネジメントなのだと気づいているのだと思います。
 とても頼りになるのだけど、どこか少し抜けていて支えたくなってしまうような。気づけば周りに人が集まるような、不思議な魅力を持った人です。

 かつて私は現実の辛さに病み、鬱を患い世の中を恨みました。現実に対するカウンターとしてVRにすがり、仮想空間でなら生きられるかもしれないと感じました。
 もう現実とは関わり合いになりたくないと絶望していた私でしたが、気づけばVR空間の中に大好きな人がたくさんいて、VRで楽しそうに過ごす私を見守ってくれるファンの方がたくさんいて。現実世界にも、そんな私の生き方を肯定してくれる仲間がいて。支えてくれる家族のありがたみが身に染みて、もう一度生きてみても良いと思えるようになりました。

 いつの間にか、私にとってのVR世界は逃げ場ではなくて、もう一つの大切にしたい現実になっていました。
 大好きなVR世界の発展と、そこで暮らす愛すべき人々がもっと豊かに穏やかに暮らせるよう、これからも楽しくやっていきたいと思います。


 最後に、忘れてはならない人がいます。私がVRで生きるようになってから、ずっと私を支えてくれてきた青髪獣人の女の子。
 思い付きでドタバタと行動する私を「しょうがないなぁ」と言いながらいつも支えてくれて、私の直感を信じてくれて。
 互いに欠けているところばかりだけど、そこを補い合うようなまったく異なるスキルと長所と感性を持っていて。
 最早、彼女なくしては私の企画は成り立たないでしょう。心から頼り、全幅の信頼を置いています。

 水菜ちゃん、いつもありがとう。


 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。誰かに向けたような、独り言のような文章でしたが、これが、バーチャルマーケット2を終えての私「動く城のフィオ」の赤裸々な感情です。これからも、どうか見守っていて下さい。ありがとうございました!


 一年前よりも好きな人が増えたら、自分のことも好きになれたね。理想に向かって走るのも良いけれど、無理はしないで。家族を大切にね。

                           動く城のフィオ






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動く城のフィオ
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