マイコの場合⑧

中学3年の夏休み前に、もう一度ママと一緒に学校に呼ばれた。このままでは卒業もできないかもしれないと言われ、ママは先生の前ですごく怒った。私のために一生懸命働いているのに、何が不満か?と殴り掛かってきそうな勢いだったので、担任が慌てて止めに入ったくらいだった。

将来がどうのこうのと担任は言っていたが、今のこともちゃんと考えられないのに将来と言われてもどうにもピンと来なかった。これからどうなっちゃうんだろうと不安になるけれど、かといって何をすればこの不安を解消できるのかはまったく考えつかない。だから敢えて何も考えないようにしていたように思う。

ママはキーキーと怒るけれど、何に対して怒っているのかわからなかった。私が学校に行かないこと?私が高校に行けないこと?学校に行っていない私が恥ずかしいから?私がこんな風になっちゃったのは、全部、私が悪いの?誰も私がどうしたらいいかなんて教えてくれなかったのに?私がどんなに寂しくて心細くて悲しかったのか、ママは聞いてもくれなかったのに、今更どうしてこうなったのか聞かれても自分でもよくわからないよ。ママの機嫌次第でキレるのにもううんざりしていた。

マリコは時々、私のことを心配して家に来てくれた。私は学校のこと、ママのことをマリコに話した。マリコは静かに頷きながら聞いてくれた。

「私もね、親との関係はずいぶん苦労したんだ。私は日本で生まれて日本で育ったから母親の価値観には違和感しかなかった。父親もいい加減な人だったしね。でもちょうど今のマイコの同じ年だった時の担任の先生に、親とか関係ない、お前の人生なんだから、お前が立て直さなくてどうすんだって言われてね、そうだよなぁって思ったんだよね。」

マリコは照れくさそうに笑った。言っていることはわかるよ。でもその立て直し方がまったくわからないんだよね。今更勉強してそれなりの高校に行って、友達をたくさん作って楽しい毎日を過ごすなんてことは、宝くじが当たって一生働かなくても贅沢な生活ができるってくらい現実味のない話だった。

高校に行く、行かないはともかく、まずは中学はちゃんと卒業しないと、と毎日学校へ行った。もはや教室に私の居場所なんてなかったから、保健室で本を読みながら過ごした。保健室には私のほかにも何人かいた。みんな何かしらの事情があってここにいるんだと思ったら何だかよくわからないけどほっとしたんだ。


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