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包茎と童貞が研究対象な訳

 「包茎と童貞が専門って変態じゃん」
専門分野の話をすると、興味を示してくれる人は多い。しかし、大体最初は気まずさから話を逸らしたり、正気なのかと笑ったりする。
 性科学という学問に出会った当初は私もそうだった。下ネタで話すような内容だし、大真面目に考えるようなものだとは思ってもなかったから。ただ、今はもう性科学を専門としていることが誇らしい。この段階まで至った経緯をこれからのビジョンを明確にするためにも、つらつらと書いてみようと思う。(レポート書く時が100%だとしたら、10%位でゆるーく書いてるのでご了承を)

 そもそも、最初はジェンダーやセクシュアリティについて研究したいから今の大学を志望した。特にジェンダーバイアスや性差別に関心があったのだ。自分がやりたいことはそれだとずっと思っていた。
 しかし、授業や読書で学びを深めていてもどこか刺激が足りない。ジェンダー研究などはその特性上、はっきり言うと堅苦しいように思える。政治学や歴史学、福祉や倫理など考慮しなければならないものは多岐にわたる。それはどの学問でもそうだが、個人的に権利の歴史や福祉、政治のことについて考えるのは苦手だった。自由度が低いというかなんというか。学問は原則自由だが、これらのものは明確な不正解のような、目に見えない逸れてはいけない道のようなものがあるように思える。
 そこで出会ったのが、「性科学」であった。もちろん、性科学はジェンダーやセクシュアリティ研究を含んではいるが、身の回りの性に関すること全般を研究する学問である。それに自由度が高いと思う。

 自分自身のことを振り返ってみれば、下ネタやエロい話が大好きで、性的好奇心は旺盛な方だったと思う(今もそうだが)。性に目覚めたのは小5かな。比較的早かったと思う。だから性に合っていたのだろう。だって、AVの話やオナニーの話、セックスの話、包茎の話などについてずっと考えていられるから。ましてや、高校の頃はそんなに友達もいなかったし、そういう会話も全然してなかったからその鬱憤が爆発したのかもしれない。とにかく、「俺のやりたいことはこれだ!」と運命のようなものを感じた。

 性科学を専門にしようと決めてから様々な文献を読んだが、その中でも1番興味深かったのは「包茎」だった。包茎に関する知識は、「包茎は、真性包茎・仮性包茎・嵌頓包茎と3種類ある」ということくらいだった。恐らくこれくらいは知ってる人が多いと思うし、これが正しいと思っている人が大半だと思う。しかし、それは違うのである。

 まずは嵌頓包茎について。
 嵌頓包茎は、真性包茎や仮性包茎の人の、露出した亀頭が狭い包皮輪に絞扼されて包皮が戻らなくなった「状態(症状)」のことをいうのであって、包茎の種類にカテゴライズするのは間違いなのだ。

 次に仮性包茎について。
 そもそも、「仮性包茎」という言葉自体、日本特有のものである。海外では包茎は"phimosis"という単語であり、これは真性包茎のみを表す。日本でいう仮性包茎は海外では、"natural penis"であるのだ。何の問題もないのに、日本では病的な名前がつけられて、包茎は恥ずべきものとなっている。実際に小貫(2019)の調査では、日本人の7割が包茎であるが、7割が露茎(皮が被ってないペニス)を理想のペニスと答えている。包茎がマジョリティなのにみんなそれを恥じているのが現状。「見栄剥き」が存在するのはこの理由。
 この他、包茎について語ると歴史や包茎手術など話が尽きず、長くなるため割愛する。

 次に「童貞」の話をする。
 これについても、包茎と同様、「なぜ童貞が恥となるのか」というところに関心があった。男性ジェンダーの人たちは経験があると思うが、男性ジェンダー間のコミュニティではここらへんの話は生々しい。馬鹿にしたり馬鹿にされたり。
 これも割愛するが、童貞に対しても思うことはたくさんある。

 ぱっと考えてみて思ったのが、「男性は自分たちで自分たちの首を絞めているのが現状ではないのか」と。「恥は無知から生まれているのではないのか」と。日本で性の話はタブー視されるから、性的なことについては、何百年も前の根も葉もない言説が今日まで根付いてしまっていることが多い。それを覆すのが性教育だと思うが、そもそも日本は性教育後進国であるから十分に性の知識を教えられない。 
 包茎や童貞といった男性のことに焦点を当てているのは、「男性の方が性教育の機会が少ないから」である。これはよく言われることだが、女性には月経教育など性教育の機会が多いのにも関わらず、男性は少ない。包茎のこと童貞に関すること、オナニーのことなどは教えるべきだと思う。

 「包茎や童貞が研究対象な訳」というタイトルにしてみたが、その答えとしては、「1番興味がそそられて、学んでいくうちにそれらに対する正しい見解を普及させねばという使命感を抱いたから」という風になるのかな。最終的なゴールとしては、「全ての人の性の健康のため/セクシュアルプレジャーを十分享受してもらって、性の観点からのウェルビーイングの実現のため」というところ。それに男性側からアプローチしていくって感じ。だからこそ、性科学とりわけ、包茎や童貞を専門的に研究しているのが今は誇らしい。
 大成したら、性の喜びを享受できる人が増えるかなって。性の悩みって重いじゃないですか。だからそれを抱えてほしくない。それに、セックスしたいとかオナニーが好きとかも素敵なことじゃないですか。本当に「性」って人間について回る。だからこそ、それらに寄与したい、でも1番は性的なことが大好きだから、性科学を専門にしてます。

 その他にも、オナニーのこと性教育のことにも関心がある。これからは、もっともっと学びを深めて、持ち前のバイタリティを活かして活動していきたい。性科学に出会い、それをずっと考えている今が本当に楽しい。

 ここまで拙い文章をご清覧いただき、ありがとうございました。皆さんが、性科学という学問に興味を持っていただけたら嬉しい限りです。

<参考文献>
小貫大輔(2019)『「仮性包茎なんて言葉はやめてしまえ」プロジェクト 身体の自律と保全に関する国際比較研究』「現代性教育研究ジャーナル No.103」p.4  日本性教育協会

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