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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第5話 幸せで楽しい日々

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


11.春香 2023年4月28日

昼休みは退屈だった。
読んでいた小説を読み終えたからだ。
暇なので、愛美ちゃんに話しかけようとしていた。
愛美ちゃんは絵を描いていた。
どうやら、女の子の絵を描いているみたい。
愛美ちゃんはいつも可愛い女の子の絵を描いている。
「かわいい絵だね。」
私は愛美ちゃんに声を掛けた。
愛美ちゃんは恥ずかしそうに笑顔で「ありがとう。」と返していた。

「佐々木さん、今回の絵も素敵ね。」
美術部の原田流花さんが愛美ちゃんに話しかけてきた。
「やっぱり佐々木さん、美術部に入らない?一緒に絵を描こうよ!」
愛美ちゃんは絵が上手くて、いつも原田さんからスカウトがよく来る。
原田さんは愛美ちゃんとは中学部の頃から一緒で仲も良い。
私にも原田さんは仲良くしてくれる。
「やめておくよ。」
愛美ちゃんは断った。
原田さんは愛美ちゃんの絵を見て、何度もスカウトしているが「多くの人に自分の絵を見られるのが恥ずかしい」という理由で愛美ちゃんに毎度断られている。
「佐々木さん、可愛い絵が描けるんだから美術部で活躍できるのにー」
原田さんは悔しそうに言っていた。
「愛美ちゃんは渡さないよ!だって、写真の才能があるんだもん。」
私は冗談を言ってみた。
「うふふ。」
愛美ちゃんはにっこり笑っていた。
愛美ちゃんは整った顔をしていて、いつもクールな表情をしている。
でも、にっこり笑った時が一番可愛い。
美少女な上に、家はすごいお金持ちで勉強ができて、写真と絵の才能に恵まれている。
羨ましいと思えるくらい愛美ちゃんは完璧な美少女だった。

12.春香 2023年5月11日

昨日は写真部があったけど、愛美ちゃんは用事で帰っていた。
最近、愛美ちゃんは放課後、急いで帰っているように見える。
何かあったか気になった。
「愛美ちゃん、最近急いで帰っているみたいだけど、何かあったの?」
昼休みの時間に愛美ちゃんに聞いてみた。
「病院に入院しているおばあちゃんのお見舞いに行ってるの。」
愛美ちゃんはこう返した。
おばあちゃんを大切にしていて、愛美ちゃんの良い人柄が知れる。

愛美ちゃんは今日も絵を描いていた。
茶髪のショートヘアの可愛い女の子を描いている。
「ねぇ、この子なんという名前なの?」
私は気になって、聞いてみた。
「この子はマリーと言うの。」
愛美は答えた。
愛美ちゃんの絵は絵本みたいな可愛らしい世界観で、見ていて楽しかった。

放課後、終礼が終わったら愛美ちゃんは急ぎ足で帰っていった。
私はゆっくり帰った。
スマホで音楽を聴きながら、帰路についた。

なんだか、今日は眠かった。
ぼんやりしながら、歩いていた。
家に帰ったら、ぬいぐるみに抱きついてゆっくり休もう。

13.愛美 2023年5月11日

また、春香さんに絵を見られた。
正直恥ずかしかった。
一年生の時に最初、見られた時は子供っぽいとか言われないか心配だったけど、春香さんは目を輝かせながらわたしの絵を見ていた。
それが嬉しかった。
春香さんはわたしのことを「写真と絵の才能があって、その上勉強もできて美人で憧れる。」と言っていた。
本当にそう思っているのか分からない。
でも、わたしは優しい春香さんのことを信頼している。

原田さんはいつも決まったように、わたしの絵を褒めて美術部に勧誘してくる。
最初はしつこかったが、褒められると嬉しかった。

春香さんと原田さんのおかげで、学校が楽しい。

今日も学校帰りにマリーに似た人を追っていた。
彼女に付いていくと、電気屋さんに入っていった。
彼女はそこでピンク色のイヤホンを買った。
わたしも彼女に似合うと思った。
彼女を見ていると人形のマリーを重ねてしまう。
人形のマリーがイヤホンで音楽を聴いていると思うと、なんか新鮮だった。

彼女の後を追って、アパートまで見届けた。
今日も可愛かったな。

家に帰って、カメラのSDカードに入っている写真を印刷しようとした。
しかし、シアンのインクが切れて印刷ができなかった。
インクを買いたいが、もう遅いので明日買いに行くことにした。

わたしは額縁に入れたマリーに似た彼女の写真に話しかけた。
「ねぇ、マリー。見て、絵を描いたの。」
写真の彼女に絵を見せた。
「愛美ちゃん、可愛い絵だね。ありがとう。」
マリーは笑顔で絵を見てくれている。
わたしは額縁のマリーとベッドで横になった。
小さい頃、夜寝るときにマリーを抱っこして寝ていたのが懐かしい。

今日の夜は写真と一緒に寝ることにした。
あの頃のように。
写真のマリーは幸せそうな顔をしている。
わたしも幸せだよ。

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