オムライスと創作料理#03「『世界デザイン史』じゃなかった…」
執筆中、ずっと書名を勘違いしていた。
『世界デザイン史』のつもりで書いていたのだが、Amazonにページができた時に書名が違うことに気が付いた。あれ?『デザインの歴史』に名前変わった?
そう思って最初に頂いたメールを見返してみると、書名は『デザインの歴史』で企画書が書かれていた…!?
どうして間違ったんだろう…。
『世界デザイン史』に挑む
理由は簡単だ。美術出版社の『世界デザイン史』の上位互換となることを目標とした本を書いていたからだ。
デザイン史の教科書は美術出版社『世界デザイン史』一強なのだ。
机の上にこの本を置いて常に目に入れていたので『世界デザイン史』が頭に刷り込まれていたのである。そりゃあ間違えるというものだ。
『世界デザイン史』は1995年に初版が出たロングセラー本である。2012年に増補新装版となった際に附章が加わったものの、基本的には四半世紀以上も前に出版された本が君臨し続けているのだからすごいことだ。
とはいえ流石にちょっともう古いのではないか、というのが今回の企画の発端である。多分。
2012年に足された附章にもインターネットのイの字すらない。PCはDTPについて多少触れられている程度である。
歴史的な評価が定まっていない、直近の製品を取り上げるのが躊躇われるのはわかるが、スティーブ・ジョブズ没後の2012年に新たに載せたのが1984年のマッキントッシュ、というのは流石に古過ぎるのではないだろうか。iPhoneは4Sになっていて、もうほぼ完成形になっていたと言える時代だ。
スティーブ・ジョブズが亡くなってもう11年も経つ。もし来年の大学一年生にデザイン史の授業をするとしたら、その子たちの大半はジョブズが亡くなった時小学校1年生の筈だ。スティーブ・ジョブズと言われてももうリアルタイムで体験した情報ではないのではないか。
ということで、『世界デザイン史』に挑んで勝つには、ポストモダン以降を拡充させるのが良かろう、というのが導き出された正攻法だ。
ちなみに美術出版社からは『日本デザイン史』も出ているが、『日本美術史』ならともかく、『日本デザイン史』という授業はあまり存在していないのではないかと思うので、教科書としての存在感は低い。私もこの本は執筆途中で一応ポチって積ん読してはいたが、届いた時にパラパラとめくっただけでほぼ目を通していない。この本についてはいずれまた触れる。
「デザイン史」と「デザインの歴史」は違う
細かいことを言うと、「デザイン史(design history)」と「デザインの歴史(history of design)」は違うのだ、とジョン・ウォーカーは『デザイン史とは何か』の中で述べている。そういえば昔この本読んだのだが、すっかり失念していた(@tokyopasserbyさんありがとうございます)。
実際に生み出されたデザインについて扱うのは「デザインの歴史」で、「デザイン史」はもうちょっと社会学的な観点を持つものだ、と言われると、なるほどそう違うか、という気はする。だとすると私が書いていたのは基本的には「デザインの歴史」であり、結果オーライだ。しかし、私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、建築史や美術史ではそういうことはあまり議論されていないのでは、という気がする。
もうちょっと卑近な例で言うと、検索のしやすさは『世界デザイン史』に軍配が上がる。『デザインの歴史』は「の」が入ってしまうので、例えばTwitterでサーチかけると「デザイン」と「〇〇の歴史」みたいなヒットの仕方もしてしまう。エゴサの場合は""で括れば良いのだけれど、普通の人が検索する時はそんなことしないだろうから。
これから本を出そうとする場合はそういったことも考えてタイトルを付けた方が良いかもしれない。