くせがなく豊かな味わい
スタバの本日のコーヒーを
スタバのパートナーはCODと呼ぶ。
Coffee Of the Dayだ。
レジ前にマグネットで貼っているが、
昔はチョークで毎日書いていた。
まだハウスブレンドが
家形の五角形で黄色のシールだった。
HOUSE BREND
くせがなく豊かな味わい
Guatemara Antigua
上品な酸味と複雑ながらも洗練された風味
あっさりしたマニュアル通りの文言を
何百回も何千回も書いたのが懐かしい。
CODと仕込み用のICODを連発して落とすから
あれだけのコーヒーの香りが店内に宿るのだ。
慣れるまではあの香りが私の全身を緊張させた。
スターバックスで働いたのは20年以上前で
私は22歳から30歳まで働いた。
グリーンエプロンブックが燃えそうなくらい
一生分の情熱があふれてくる年月を過ごした。
スタバがまだサザビーの時代で、
赤字にも転落した厳しい時代で、
ペイストリーもコーヒーも
今より格段に美味しかった時代だった。
文字通り私たちは輝いていた。
失敗ばかりで恥もかいた。
悔しさや情けなさばかりだった割には
当時を思い返すと毎日に意味があり、
ジブリ作品のようにまったく色褪せない。
強烈なキャラがエグいくらい出てくるから
くせがなく豊かな味わい、どころか、
かなり離れたところに自意識があった。
尖ってなんぼ、他人と違ってなんぼの中で、
きっちり適者生存の法則は発動され、
輝きの半端ないバリスタから順に落ちこぼれた。
成長できるというワードは、
利用できるやつという意味でもあり、
そういう小さな段差を自意識過剰な私は、
Rumbaのように丁寧に避けて通った。
露骨なパワハラで淘汰されても仕方ない。
私は何度も「何で辞めてくんないの?」と
冷たく突き放してくれた当時のマネージャーの
優しさが、今頃になって理解できる。
クセが強い!
そんなワードもないくらい、
世の中全員まだまだギラギラしていた。
当時の戦友は1人残らずスタバを辞めたが、
高校球児みたいな未練はそれぞれある。
心の豊かなひとは他人の長所が見える
ハウスブレンドはそんな味わいだ。