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生成AIを知財業務に活用するヒントになりそうな書籍・機関誌
生成AIを知財業務に活用するというテーマの書籍はまだ確認できませんが、知財業務を含む業務全般に活用するヒントは得られそうな書籍は出揃ってきたので、下記にまとめたいと思います。また機関誌では有識者による上記テーマについて具体的な活用が述べられた論説が見られるため、こちらもまとめてみます。
(2024/12/01:機関誌2件(研究開発リーダー・Japio YEAR BOOK)を追加しました。)
会社で使えるChatGPT
本書は、ChatGPTの基本的な使い方から、業務改善や組織への導入事例までを網羅的に解説しています。特にHow to的な内容だけに終始せず、ChatGPTでできることが体系的にまとめられているので、知財業務におけるどのプロセスに生成AIを活用すれば良いか参考になります。また企業で導入するコツについても触れられており、部署内で生成AIを広めるためのヒントも得られると思います。
生成AI時代の「超」仕事術大全
生成AIの最新動向や活用方法を解説した一冊で、AI技術の進化がもたらす変革とその利用方法に焦点を当てています。直接知財業務に関する記載はありませんが、様々な業種や職種に対して生成AIが及ぼすインパクトが述べられており、生成AIが仕事に及ぼす全般的な影響を俯瞰して理解したい方におすすめです。
生成AIで世界はこう変わる
AI研究で有名な東大松尾研に所属する今井氏が、生成AIによる世界の変革を予測しています。AIの研究者による著書であるため、生成AI技術がうまく噛み砕かれて説明されており、なぜ生成AIがそれまでのAIとは大きく異なる出力が可能になったのか初学者でも分かりやすい内容です。各種案文の確認や発明資料の作成、特許調査など言語的タスクの多い知財業務に対する生成AIの適用可能性を感じることができました。
ふわっとしたアイデアからはじめる新規事業を成功させる知財活用法
新規事業のアイデアを具体化し、知的財産を活用して事業を成功させる方法がテーマの書籍ですが、サマリアやプライベート特許検索等の知財業務に特化した生成AIツールにも触れられています。上述のように、生成AIを知財業務に活用するテーマの書籍はまだ確認できないので、関連のある具体的な記載があると言う意味でレアな書籍だと思います。
機関誌
日本知的財産協会(JIPA)や日本弁理士会の機関誌には、有識者による生成AIの知財業務活用に関する具体例を含む論説が多々確認できるため、手っ取り早く知りたい方は上記書籍よりも機関誌の論説を読むことがおすすめです。
知財管理
生成AIの知財業務での活用(萬 秀憲)
https://yorozuipsc.com/uploads/1/3/2/5/132566344/202407828.pdf
月刊パテント
生成AIを活用した特許データの処理、視覚化、分析、及び、解釈について(川上 成年)
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4453
生成AIを利活用したサービスに関する発明の発掘および権利化についての考察(加島 広基)
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4322
大規模言語モデルの特許実務における利活用(大瀬 佳之)
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4323
月刊 研究開発リーダー
2024年11月号 <特集2> 『AI,生成AI 思考で切り拓く研究開発の最前線 ~生成AI・人工知能による特許データ分析,明細書作成~』
https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine/R_2024_11.htm
Japio YEAR BOOK
2024 特集「知財情報×生成AI」
生成AIの権利取得実務への適用可能性
─特許明細書、翻訳、OA 対応の品質と効率向上に向けた生成AI の活用─
https://japio.or.jp/00yearbook/files/2024book/24_a_04.pdf
2024 寄稿集(2024年度版)
AIを用いた効率的な特許調査方法
─生成系AI を活用した特許情報活用の新パラダイム─
https://japio.or.jp/00yearbook/files/2024book/24_4_04.pdf
まとめ
上述のように、まだ書籍レベルでは知財業務に対する生成AIの利活用に関する情報はわずかであるため、まとまった情報を得るには機関誌の論説を中心に確認する他ない状況です。ただ、生成AIの技術進歩は異常に早いため、機関誌の論説であっても掲載される頃には情報が古くなってしまう点を川上先生もご自身のnoteで言及されているというのが現状です。
情報の鮮度という点ではSNSが最も高いものの、信頼性や網羅性という観点では機関誌や書籍が優れており、状況に応じて使い分けることが重要です。最新情報のキャッチアップにはSNSを追うしかありませんが、知財業務への活用を中心に考える場合は、生成AIを利用する際の原則や知財業務自体等への理解を深めたり、知財業務におけるどのプロセスに適用できるか見極めたりすることが大切だと思います。
個人的にも知財業務への生成AI活用は手探り状態で、有識者の方々が発信する情報を基にどうすれば部署として業務効率を上げられるか試行錯誤する日々ですが、本記事が一助になれば幸いです。