台湾の中年女性の中医学的虚性体質・血瘀体質とその関連要因

はじめに
体質（constitution）の識別は1970年代に中国で発達した概念であり、中医学の診断・治療システムにおいて基本的な指針となるものです。体質とは、ある病気にはかかりやすく、他の病気にはかかりにくいという個人の体の状態を指します。文献によると、体質が異なれば治療法も異なることが示されています[1-3]。中医学における陰陽理論の基本は、陰と陽は自然界のあらゆる物質に見られます、相反し、相補的で、相互に関連し合う2つの宇宙的な力であるというものです。人体を含め、この世で観察されるすべての変化は、陰陽両者の絶え間ない運動から生じています。

陰陽のバランスがずれたり崩れたりすると、虚性や血瘀といった精神・生理学的な症状やパターンが現れます。体質における虚性には、陽虚と陰虚があります。前者は、身体の生理学的機能におけるエネルギー（気）のレベルの低さが特徴です。後者は、陰液が不足していることを意味します[4-6]。血瘀は、動的な陰陽の相互作用が鈍化または低下していることを示します。これは通常、病変部位によって気血が阻害されているために疾患患者に起こるもので、閉経後の女性に多くみられます [4-7]。患者は同時に異なる体質を経験する可能性があります。体質は病理学的、生理学的、心理学的状態によってダイナミックに変化すると考えられています[8, 9]。

2015年、世界保健機関（WHO）は健康的な加齢に関する初の世界報告書を発表しました[10]。高齢者におけるリスク行動のクラスタリングに対する関心が高まっています。しかし、中年層における無病状態の主要な予測因子を特定することは、高齢者ケアにおける行動の優先順位の根拠となる可能性があります。[11, 12]. 中年女性は多くの身体的・精神的変化を経験します。これまでの研究では、社会経済的地位やライフスタイル、行動的、心理的、生物学的因子が健康的な加齢に関連しています [13-15] 。BMIと食事行動は、無病の状態を促進するための重要な因子です [11,12,14] 。

更年期症状とともに生きる女性は、身体的・心理的に否定的な結果を経験し、それが生活、特に人間関係の変化につながりました [16] 。システマティック・レビューによると、更年期は様々な形で経験される人生のステージであり、個人的な課題や、家族や社会における個人的な役割の変化を特徴とすします。多くの女性が、更年期にはほてりや寝汗が最も強い症状であると報告しています [17] 。骨粗鬆症は、閉経後の女性の3人に1人が罹患する可能性があります。骨粗鬆症や脆弱性骨折のリスクは、健康的な生活習慣の改善によって減らすことができます [18, 19]。慢性閉塞性肺疾患と気道閉塞も閉経後女性の骨密度と関連していました [20] 。それらの症状は、虚性や血瘀の体質のパフォーマンスと一致していました [7, 21]。健康指標と体質との関係を調べた研究はありません。

台湾では、現代医学と中医学の費用は、国民健康保険によって並行してカバーされています。台湾では国民の4分の1以上が中医学を利用したことがあり、特に女性が多く、今後もこの傾向は続くと予想されています[22-24]。中医学は、更年期症状の緩和や骨粗鬆症性骨折の予防に良い影響を与えるかもしれません[25, 26]。中医師は、定期的な治療を体質の鑑別に基づく個別治療のプロセスの重要な一部として評価しています[27, 28]。台湾では、中年女性の体質を測定した主要な研究はありません。そのため、虚性（陰・陽）と血瘀の体質の違いに関する知識はほとんどありません。また、体質の健康決定因子を調べた研究もありません。そこで、本研究の目的は、中年女性の陽虚、陰虚、瘀血の体質のあり方を明らかにすることです。さらに、陽虚、陰虚、瘀血に関連する人口統計学的因子と健康因子についても検討しました。この結果は、中医師が中高年女性のフォローアップをするにあたって、中医学の要求と個人のニーズに合った健康増進プログラムを計画することを可能にするものです。

エビデンス
【背景】
中医学は、中年女性における一般的な治療法である。体質は中医学的治療の指針となる。しかし、中年女性の体質とその関連因子についてはほとんど知られていない。本研究の目的は、中年女性の陽虚、陰虚、血瘀の体質の割合を明らかにすることである。また、陽虚、陰虚、血瘀に関連する人口統計学的因子と健康因子についても検討した。

【方法】
2009年から2018年にかけて、台湾のTaiwan Biobank Research Databaseからランダムサンプリングを用いて40～65歳の女性1,000人を抽出した。陽虚、陰虚、血瘀は体質質問票を用いて評価した。多重ロジスティック回帰分析を用いて、虚性または血瘀の体質と関連する因子を特定した。