【イベントレポート】企業フェーズごとの事例で学ぶ技術広報
こんにちは、広報の上島です。
PharmaXでは、2023年1月より月1ペースでテックイベントを開催しています。
3月は「エンジニア視点だからこそできる社会に役立つプロダクト開発」というテーマでディスカッションしました。
(前回のイベントレポートもよろしければご覧ください)
4月のテーマは「企業フェーズごとの事例で学ぶ技術広報」
最近、エンジニアの採用がますます困難になってきており、多くの企業が技術広報に力を入れています。しかし、日々の業務に追われて技術広報が後回しになり、文化として定着しない企業も少なくありません。
そこで、日本経済新聞社、グロービス社、PharmaXの3社で、技術広報の狙いや戦略について実例を交えたディスカッションを行いました。
今回は、ディスカッションの中でどのような議論が交わされたのかをお伝えします!
(お時間がある方はアーカイブとあわせてご覧ください)
今回の登壇者とLT紹介
では今回の登壇者・モデレーターのご紹介と各企業のLT資料をご紹介します。
日本経済新聞社 エンジニア採用担当 西馬一郎さん
LTタイトル:
日本経済新聞社のエンジニア採用における認知拡大の取り組み
株式会社グロービス VP of Engineering 末永昌也さん
LTタイトル:
現場からスタートして組織活動に拡大する技術広報の変遷
PharmaX株式会社 取締役・エンジニアリング責任者 上野彰大さん
LTタイトル:
10名に満たないチームから始めるスタートアップ技術広報
PharmaX株式会社 エンジニア 尾崎 皓一さん(モデレーター)
どのように技術広報・発信文化を醸成しているか
今回のパネルディスカッションは、「どのように技術広報・発信文化を醸成しているか」というテーマで行いました。
その中でも「目標管理」や「文化醸成のために大切にしていること」に焦点をあててディスカッションしています。
30分にわたる議論の中で、フェーズや組織体制が異なるからこその違いや、3社の共通点などが見えてきました。
ここでは、今回のディスカッションであがった3社の声をまとめています。
テーマ①技術広報関連の目標管理をどのようにしているか
まずは「技術広報関連の目標管理」について、今回のディスカッションであがった各社の回答をまとめました。
日経西馬さん:
技術広報関連の明確な目標や評価の紐づけは行われていませんが、毎年12月のアドベントカレンダーへの参加は共通認識となっています。
日経の場合は、広報チームが独立しておらず、エンジニア採用チームが広報活動にも力を入れています。例えば、執筆合宿を開催しシェアオフィスなど普段と異なる場所でネタ会議や執筆に集中することで、効果的な広報活動が行われています。エンジニアが忙しいことを考慮し、採用チームがネタのストックを行うことは有益だと思っています。
グロービス末永さん:
技術広報関連の目標は設定していませんが、振り返りとして活用しています。例えばどんなことが流行りやすいか、結果へつながりやすいかなどを学んでいます。
記事数やイベント数などの「量的指標」、いいね数などの「質的指標」、フォロワーなどの「累積的指標」、応募数などの「結果的指標」が大事だと思っており、アクションが適切か振り返っています。
結果目標に力を入れることで、目に見える成果が出ていると感じています。
また、採用候補者にどの経由で応募したかをヒアリングし、採用決定につながったかデータの取得も行っています。これにより、年単位での変化が見え、広報活動の意義が可視化できるようになりました。
PharmaX上野さん:
技術広報関連の目標管理について、行動目標を4半期ごとに設定し、週1回朝会で進捗管理をしています。個人が自分の目標を宣言し、進捗の振り返りや反省ポイントと今週やることを宣言するようにしています。
またチームとしては、1年後の目標数値を置いて目線を合わせています。
チームの成果目標は設定していません。
事業とのバランスに関しては、技術広報をスクラム工数に乗せることは行っていませんが、メンバーはスクラム内でも技術広報関連の予定を宣言するようにしています。また、10%ルールを適用し、開発に割ける時間をプランニング時に考慮する取り組みをしているメンバーもおり、チームとしても取り入れていきたいと考えています。
テーマ②技術広報の文化醸成のために重要なこととは
次に、どのような技術広報の文化があり、文化醸成のためにどのようなことを重要と考えているかについて、今回のディスカッションであがった3社それぞれの意見をまとめてみました。
日経西馬さん:
行動することが重要であり、それ自体が文化の一部だと考えています。
例えば、社内でも異なるチームやプロダクトの内容について知らないこともあると思います。そのようなとき、ブログやイベントでの発信を通じて社内の情報を共有することができるし、そこから自社エンジニア内でのコラボレーションが生まれることもあります。
また、社内で盛り上げることも大切であり、文化づくりの根本的な部分かなと思っています。発信があれば「ナイスアウトプット」などと絵文字で反応したり、ツイートして紹介したりとほめ合うことも大切です。
また外部からのフィードバックを共有し、ボトムアップで広がる文化を大事にしています。
自分たちの課題からの学びを発信することで誰かの学びになっていること、認知拡大につながっていることを共有することは大事だと思っています。
ただ評価制度に関しては、いろんなタイプのエンジニア(登壇が得意な方、執筆が得意な方、コーディングが得意な方など)を称賛できることが重要であるとメンバー同士でも議論しています。
グロービス末永さん:
グロービスでは、評価制度の中に一定タイトル以上の方が自社ブランディングを強化することを求めています。対外的にも認知され、コラボレーションを作っていける人材がこれから求められるといった背景から取り入れられています。ただ、メンバーやリーダー、マネージャーレベルにはそこまで求めていません。
記事発信では、Howから始めることが多く、アイデア立案の際にはペルソナに立ち返るようにしています。
自分たちはユーザー向けのプロダクトを作っているため、こんな人だったら相性がいいためこの方向で広報をしていこうとなるケースが多いです。
またアドベントカレンダーは毎年必ず書いています。
誰かが背中を見せるというよりは、チアアップすることに力を入れています。隔週で社内の良い動きをピックアップし、ブログ記事にして全体でシェアして盛り上げるといったアプローチをしていますが、記事数は多くないものの、発信ができており候補者からの興味も集めています。
PharmaX上野さん:
文化を形成する上で、一番大事にしていることはバリューと行動目標を結びつけることです。特に成果が目に見えにくい広報などの分野では、なぜその活動が必要なのかを説明するのは難しいものですが、バリューと結びつければ行動しやすくなります。
私たちのチームでは、昨年の夏頃からイベント登壇がブームになり、チーム全体でイベントに注力したことがあります。どのようにムーブメントを生み出せるかに集中することで空気感が生まれました。
さまざまなメンバーが登壇することで、それぞれのアイデンティティが明確になり、お互いの情報も共有できるようになりました。
最近では、私自身がエンジニアリング責任者として記事を発信することに率先して取り組んでいます。私自身が火種となり、次に続くフォロワーが出てくることを期待しています。
技術広報は、情報を発信することが目的ではなく文化を強化するための手段であると考えています。社外に出ることは良い影響をもたらすと考えており、将来的には評価制度にも取り入れたいとの意見もあがっています。
まとめ
各社ともに、自分たちの学びを社外へ発信することで、誰かの学びとなり認知拡大にもつながっていることを理解しているからこそ、技術広報文化が根付いていることが伝わるディスカッションでした。
その中で、共通点としては下記が挙げられます。
明確な目標設定はしていない
中には、結果として目標指標を活用したり、目線感を合わせるために目標数値を置いたりすることで、広報活動の意義につなげている
社内から称賛して盛り上げることで、技術広報の文化を築くことができている
技術広報は、発信することが目的ではなく文化を強化するための手段と考えている
今回ご登壇いただいた日経西馬さん、グロービス末永さん、各社関係者のみなさん、ありがとうございました。
お知らせ
4月は、「LLM PoC LT会~PharmaXでの取り組み外部紹介~」というテーマでウェビナーを開催します。
PharmaXでは、生成AI/LLMの専任チームを立ち上げてLLMのPoCを行っております。 また、社内ではアイディアソンや勉強会なども活発に行われており、社内に知見がかなり集まってきました。
そこで今回は、各エンジニアメンバーが直近取り組んだことをLT形式で発表します。
医療への直接的な応用だけでなく、エンジニアチームとしての開発への活用事例などもシェアできればと思っております。
ぜひご参加お待ちしております!
私たちとともにオンラインを中心とした新しい医療体験を一緒に作ってみたいと思った方、もっとPharmaXについて知りたいと思った方はこちらを覗いてみてください。
まずは気軽にお話しましょう!