【論文0007】高齢者の多剤併用では出血は短期間のうちに起こりやすいですか?
Polypharmacy is associated with an increased risk of bleeding in elderly patients with venous thromboembolism.
Leiss W, Méan M, Limacher A, Righini M, Jaeger K, Beer HJ, Osterwalder J, Frauchiger B, Matter CM, Kucher N, Angelillo-Scherrer A, Cornuz J, Banyai M, Lämmle B, Husmann M, Egloff M, Aschwanden M, Rodondi N, Aujesky D
J Gen Intern Med. 2015 Jan;30(1):17-24
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25143224
PMID: 25143224
背景:
ポリファーマシー(多剤併用)とは、薬剤を複数同時に服用している状態と定義されており, 高齢者では非常にコモンな問題である. 薬物同士の相互作用を誘発し、ビタミンK拮抗薬を受けている患者における転倒のリスクを増加させる.
目的:
多剤併用が急性静脈血栓塞栓症(VTE)治療でビタミンK拮抗薬を服用している高齢者の出血のリスクを増加させるかどうかを検討.
研究デザイン:
前向きコホート研究(スイスの多施設のコホート)
65歳以上でVTEと診断された830人の患者が対象.
手法:
4剤以上の異なる薬剤が処方されている状態を多剤併用と定義.
多剤併用と出血(初発の大出血, 並びに臨床的に関連する非大出血)までの時間との関連を評価.
調整因子(時間変動性共変量); 出血の危険因子(年齢、性別、肺塞栓症、活動性がん、動脈性高血圧、心疾患、脳血管疾患、慢性肝および腎疾患、糖尿病、重大な出血の既往、最近の手術、貧血、血小板減少症)およびビタミンKアンタゴニストによる治療期間.
結果:
コホート全体のうち413名(49.8%)の患者が多剤併用であった. 平均追跡期間は17.8カ月. 多剤併用の患者ではそうでない患者と比較して有意に高い発生率で出血があった.
大出血;
100人年あたり9.0対4.1のイベント発生
発生率比[IRR] 2.18、95%信頼区間[CI] 1.32〜3.68
非大出血;
100人年あたり14.8対8.0のイベント発生
IRR 1.85、95%CI 1.27〜2.71
共変数の調整をしても, ポリファーマシーが出血のリスク増となることがわかった.
大出血;
サブハザード比[SHR] 1.83、95%CI 1.03〜3.25
非大出血
SHR 1.60、95%CI 1.06〜2.42
結論:
VTE治療でビタミンK拮抗薬を内服している高齢患者では, 多剤併用が大出血・非大出血の両リスクの増加と関連.
【感想】
予想できるような結果ですが, どれくらいの期間でどの程度出血リスクが増大するのか, 具体的な情報が得られたのは重要であると愚考しています(本文Fig 1).
患者コホートの他の使用薬についての情報も加味して, 外的妥当性を考慮したいですね(本文Table 1. )
注:
当記事の内容に関しては最低限の質を担保するよう最大限の努力をしているものの, 内容に誤りなどがございましたら, twitterアカウント@pharmasahiroまでご連絡ください.
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