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新・平沢進は無害か
本稿の文字数は3.9万字を超えています。時間に余裕がない方は気になる箇所だけ読むことを推奨します。
まえがき 平沢進有害無害論争
2024年4月、とあるインフルエンサーのポスト[1]を契機に、X上の馬骨(平沢進のファンの名称)界隈で平沢進有害無害論争が起きた。ファンの間では、平沢進[2]が生み出す独自の音楽センスに中毒性がありネタ的に有害であると発言した者もいたが、一部の者は「平沢進は陰謀論者(conspiracy theorist)である。」から有害であると主張した者もいた。
「平沢進は陰謀論者である。」という言説はここ数年でずいぶん浸透したと思われる。平沢氏の過去の発言には、反ワクチン、Qアノン、9.11陰謀説など、一般に「陰謀論(conspiracy)」とされる言説を含むものが多い。陰謀論は公衆衛生を害する恐れ、排外主義の蔓延や民主主義への懐疑といった悪い方向にミスリーディングする点で有害なものとされる[3]。
ここで、平沢氏は音楽表現のツールとして陰謀論を用いているだけにすぎないという意見があるかもしれない。だが、平沢氏の音楽には、(後述するように)氏の、その当時の思想が色濃く表れている場合が多い。芸術分野においては、「作品と作者はわけるべきである」とする考え方の支持も強いが、平沢氏の場合、作品と作者がある種の共犯関係に陥っており、当てはまらないのである。
無論、平沢氏が何を信じ思うか、何を発言するかは自由である。日本国憲法は19条において思想・良心の自由を保障しているし、21条では表現の自由を保障している。だが、私たちは平沢氏から提供される陰謀論に疑問を持ち、もし平沢氏が間違ったことを言った時には「待った」と入れることも必要である。
また、「平沢進は陰謀論者である。」というのはあくまで疑惑にとどまっている。氏は直接的に陰謀論を提示したわけではなく、それとなく示しているだけにすぎない。
憶測だけで「平沢進は陰謀論者である。」と決めつけることは、健全な議論を奪う危険な行為である。そこで私たちは、「平沢進は陰謀論者である。」というためには、平沢氏の発言が陰謀論に該当するかを、氏の発言から丁寧に解釈し、それが陰謀論であるという根拠を与えることが必要となる。
追記:2025-02-03 古いご贔屓衆に向けて
かねてより平沢が陰謀的信念を持っていたことは「古いご贔屓衆」からしたら周知のことであるため、「何をいまさら」と思われるかもしれない。そのような方からすると、本稿は平沢氏を陰謀論という一点のみに着目して議論する短絡的なものであり、かつ無価値な議論に見えるであろう(実際に本稿に対してこのような趣旨の批判が送られてきた)。しかしながら、氏の思想はここ数年で目まぐるしく変化している。かつて「誰一人落とすな」と謳った平沢はとうにおらず、遅れをとった者は「置き去るだけ」である。現在の平沢は、過去に氏が提示し続けてきた陰謀論的価値観を手放し、新たにQアノン的な価値観に移行しつつある。そして、それは時として暴力を肯定するような言説であることを我々は留意しなければいけない。
また、馬骨界隈というのは氏のステルスメジャーという性質から閉鎖的であり、宗教的でもある。つまり、かつての私がそうであったように、平沢進の音楽は万民に受けいれられるわけではなく、刺さる人にしか刺さらないため、そこに残った人は平沢に対してひどく熱狂的になる。特にこの現象はアーティストの推し化(絶対化)が進む現代において尚更であろう。さらに、これは、ここ3年程、否定的な意見を送った者に対して行われた平沢によるブロック祭りによって助長された。馬骨は当然として氏に反対できるはずもない。そのような独特なコミュニティーに所属し続けると、エコーチェンバーにより当然に意見は偏り、平沢を絶対視する雰囲気とあいまって氏に従属的になる。特に、最近のリプ欄の状況はひどい。何を言っても平沢が肯定されるような状況にある。中には氏の発信した言葉の内容を理解することもなく、条件反射的に賛同している人もいるかもしれない。
私には、平沢に「あなたの言説は科学的に間違っていて~」などど説教まがいのことを言い、彼を更生させてやろうという気持ちは毛頭ない(なお、この表現はジョークではない)。本稿の対象者は平沢氏本人ではなく、馬骨である。そして本稿は平沢進を陰謀論という側面から見ることによって、馬骨が平沢との適切な距離を測れるようにすることを目的とするものである。もちろん、みなが平沢進から距離をとる必要などない。陰謀論を含めて平沢進を信じることはなにも悪いことではないし、負い目など感じなくてもよい。幸い、陰謀論は不倫や違法薬物は異なり、不法行為に該当しない限り何ら違法なものではないのである。ただ私は、古いご贔屓衆の皆さんが「平沢進と陰謀論」という決して無視できない問題を、「くだらない」と一蹴するわけではなく、しっかりと見据える段階に進むことを望むだけである。
いまだ私も平沢との距離感をうまくつかめずにいる。平沢進に「さよなら」と告げても、再び平沢に回帰してしまう。彼の生み出すサウンドは唯一無二であり、他のどのアーティストによっても代理されることはない。皮肉にも、私は本日《One Pattern》と《Karkador》(どちらもまりん氏によるリマスター版)の再販を聞きつけ、すぐさま予約したばかりである。客観的にみれば、私も一人の「馬骨」として映るだろう(もちろん否定したいが)。そんな一介の馬骨の稚拙な主張を古いご贔屓衆の皆さんにはどうか心暖かく見守っていただきたい。
第1章 陰謀論とは
*拙著「平沢進は陰謀論者か」において当該箇所を大幅に改定した。ぜひこちらを参考にしてほしい。
そもそも、陰謀論とは何か。辻は、「ある事実はその裏に隠された真実を覆い隠すための虚構であり、私たちはその何者かに騙され、操られている」[4]と主張されることを特徴とし、「①ある事象についての一般的に受け入れられた説明を拒絶し、②その事象の要因や結果を陰謀という説明に一元的に還元する、③真面目に検討するに値しない奇妙で不合理な主張と見なされる諸原理」(辻 2012)[5]であるとする。本稿においてもこれを陰謀論の定義とする。(下記の追記を参照)
追記:2024-12-08
陰謀論の定義については論者により様々であり、公的機関等による画一的な定義もなされていない。例えば、科学哲学者のカール・ライムント・ポパー(Sir Karl Raimund Popper)は1945年に刊行した『開かれた社会とその敵』において、陰謀論を「この論の主張するところによれば、社会現象の説明は、個人や集団がその出来事の発生に関心をもち、それを出現させるための陰謀をめぐらしたという事実を発見することにある。(かれらの関心はしばしば隠されているから、最初にそれが暴露されなければならないというわけである。」(Popper 1945=2023)[1]と定義づけた上で、陰謀論は社会理論として破綻しており、例外なく悪いものであるとした(後にポパーの理論はチャールズ・ピグデンによって批判されることとなる)。ポパーのみならず、一般に陰謀論は「ありえないもの」、「悪いもの」といった意味が含有された上で、定義がなされている。
しかしながら、陰謀論は例外なく悪いものであるとはいいがたい。ナイラ証言のように、過去には陰謀論として扱われた言説が実際に暴かれた例は枚挙がない。また、アメリカ同時多発テロでは陰謀論者たちが公式見解に疑問を呈したことで、事件に対して詳しい証明がなされた[2]。このように、陰謀論が公益に資する場合があることは明白であり、陰謀論が健全な懐疑として働いたり、情報の透明性を高める方向に働いたりすることもある。
本稿においては、陰謀論の定義につき辻の定義を借用したが、辻の陰謀論に対する「真面目に検討するに値しない」という態度にはいささか疑念が生じるため、本稿では陰謀論を「重要な出来事の原因・結果には陰謀(複数人による秘密の企み)が張り巡らされていると考える諸原理」と定義づける。
なお、陰謀論はしばしば偽情報とともに拡散される。陰謀論は偽・誤情報と異なり、その情報が事実かどうかを検証することが早期に解明することが難しい点で区別される[3]。偽情報は、かつて「フェイクニュース」という語で呼ばれることが一般的であったが、「フェイクニュース」という語は定義が曖昧であり[4]、自身に対立する意見を「フェイクニュース」と呼ぶようなフェイクニュースという語を濫用するケース[5]も出てきたため現在は用いられることは少ない。そこで、政策文書上はフェイクニュースを「偽情報」「誤情報」と新たに定義して検討の対象としている。「偽情報」は害を与える目的をもった発信者が意図的に事実でない事項を事実であると受け手に誤認・誤解させるように発信した情報、「誤情報」はのような害を与えることを意図していない誤った情報と定義される(偽・誤情報に加え「悪情報」を新たに定義する試みもある)[6]。
[1]カール・ポパー(小河原誠訳)『開かれた社会とその敵 第2巻 にせ予言者(上)』岩波文庫, 1945=2023, pp.208.
[2]ジョゼフ・E・ユージンスキ(北村京子訳)『陰謀論入門 誰がなぜ信じるのか』作品社, 2022, pp.24.
[3]秦正樹『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』中公新書, 2022, pp.7.
[4]神足祐太郎「「フェイクニュース」/偽情報問題の現状と対策」国立国会図書館調査及び立法考査局編『ソーシャルメディアの動向と課題:科学技術に関する調査プロジェクト報告書』国立国会図書館, 2020-03, pp.90-91. <https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11472873_po_20190508.pdf?contentNo=1>
[5]トランプ(Donald John Trump)前大統領は、政権に批判的な報道を頻繁にフェイクニュースであると批判した。産経新聞「メディアをフェイクニュースと批判「君は好意的な記者か?」」2017-02-17. <https://www.sankei.com/article/20170217-ISQQMZ2GOFPOFIGXH7IRMKQF5U/>
[6]例えば、United Kingdom House of Commons Digital, Culture, Media and Sport Committee, Disinformation and ‘fake news’: Final Report Eighth Report of Session 2017–19, HC 1791, 2019-02-14, pp.10. <https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmcumeds/1791/1791.pdf>; UN. Secretary-General, Countering disinformation for the promotion and protection of human rights and fundamental freedoms : report of the Secretary-General, UN Doc. A/77/287, 2020-08-12, pp.2-12. <https://documents.un.org/doc/undoc/gen/n22/459/24/pdf/n2245924.pdf?OpenElement>を参照。なお、欧州委員会は偽情報を「経済的利益を得るために、または意図的に公衆を欺くために作成、提示、配布され、公衆に危害を及ぼす可能性のある、検証可能な虚偽または誤解を招く情報」と定義した上で、偽情報に誤報や風刺は含まないとしている(European Commission, Tackling online disinformation: a European Approach, COM(2018)236, 2018-04-26, pp.3-4. <https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52018DC0236>)。
平沢進の陰謀論
平沢氏が展開する陰謀論的言説もこれに該当する。例えば氏は以下のように主張する。
“ハイテクを駆使した虚構の悪キャラ映像。ハリウッドのショックを現実の建造物を使って上演し、惑星を支配する少数のエリート。細部は常にグロテスクなほど雑で、あちこちから舞台裏が見えていている。しかし、全ての家庭に装備された兵器=TVへの信仰が人々の目を塞いでくれる。”
(平沢 2007-09-10 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/showtime/(参照:2024-06-23)
この発言では、物事は「上演」された「虚構」であり、私たちは「少数のエリート」に「惑星を支配されている」という陰謀論的価値観が主張されている。
“私は20年前に、巨大であからさまな悪意の存在を知りまして、それ以来、勉強を続けて来ました。……多数の人は、世界は悪意が教える通りの姿をしており、安定的にあなたを保護しながら進行していると信じており、故に、人々の信念を揺るがす不整合を発見した者は攻撃され、揶揄され、抹殺されるという世界が連綿と続いて来ました。” (平沢 2021-06-20 太字引用者)
YouTube,https://www.youtube.com/watch?v=XqOiMQU_VWg(参照:2024-06-23)
ここでは、「人々の信念を揺るがす不整合」隠すために、「巨大であからさまな悪意」が「多数の人」に世界の姿を教育し、信じ込ませていると主張されている。さらに、この発言の「不整合を発見した者は攻撃され、揶揄され、抹殺される」という箇所にも注目してみよう。これは、「否定されるということは、それが隠された真実であることの証明である」とする陰謀論の特徴的な論理である[6]。
陰謀論の特徴
また、多くの陰謀論は既存の枠組み・制度への懐疑から始まる。平沢氏のスタイルも常識や当たり前(例えば、資本主義や西欧中心主義、JASRACなど)への疑問・反発をその起源とする。アルバム『白虎野』(2006)に収録されている《パレード》[7]などは資本主義への批判が読み取れる。 確かに、一般の常識が常に正しいわけではないし、マスメディアの情報も鵜呑みにすべきではないため、「疑う」という姿勢は大切である。だが、健全な疑いは自らの論理の正当性も疑い、その根拠を明確化する。一方、陰謀論は、健全な疑いとは異なり、自らに対する疑いがないことを特徴とする[8]。
平沢氏の主張の多くは「オマエタチは騙されている。何故かは自分で考えろ」、または「オマエタチは騙されている。信じるか信じないかはあなた次第」と平沢氏の枠組みが正しいことを前提に、根拠を提示されることはない。だから平沢氏の言う通り、一から考えなければいけない。
"少しは自分で考えろボケ。"
https://x.com/hirasawa/status/1718247491823669632?s=46(参照:2024-06-23)
つまり、陰謀論を批判する私たちは、陰謀論に籠絡されることがないよう、自らを疑うことが必要となる。単に自分の気に食わない意見を「それは陰謀論である」と決めつけて、論破してしまうことは許されない。私たちは、自分の批判が、正当な批判かどうかを吟味し、それに対して適切な根拠づけを行わなければならないのだ。
第2章 平沢進と陰謀論・総論
平沢氏の思想は9.11を契機に大きく変わるため、その前後を別でみていく必要がある。ここでは9.11以前の平沢氏の思想についてみていく。
9.11以前の平沢進
平沢氏は80年代~90年代に、ユング趣味に傾倒している[9]。この時期の歌詞には「眠り」や「夢」といったキーワードも多く[10]、歌詞内容も集合的無意識を思わせるものもある[11]。この90年代は、初頭にバブルが崩壊したことで、自己や他者の内面的なものが主流文化になり、心理主義が蔓延した時代であった。また、90年代はオカルトブーム・スピリチュアルブームが沸き起こった時代でもある。平沢氏の同時期の歌詞には神話的・仏教的用語が用いられており[12]、平沢氏はこの時代にスピリチュアルと多少は接触しているであろう。しかし、この時点では平沢はまだスピリチュアルに留まるのみであって、陰謀論には傾いていない。平沢自身もスピリチュアル的なものに対し「これは音楽のプロセスの為ですから、私の立場を既存的なカテゴリーや集団主義的な話と一緒にしないでください」と発言している[13]。
9.11以後の平沢進
9.11(アメリカ同時多発テロ)を契機に、平沢は「殺戮への抗議配信」[14]を発表し、歌詞に明確性のある政治的抗議を盛り込み始める[15]。平沢は「殺戮への抗議配信」で以下のように語る。
“9・11以降の世界は正気を失いました。確証が無いままに手際よく憎悪を向ける相手を提示され、正気を失わせる恐怖と憎悪は多くの人々を殺戮に同意させてしまいました。そして今、人々が正気を取り戻し始め、平和的手段による問題解決を望む中、アメリカは国際法秩序を無きものとする殺戮を開始しました“(平沢 2003-01-18)
https://susumuhirasawa.com/archives/special-contents/event/nowar/nowar.html
(参照:2024-06-23)
“遥か遠方で繰り広げられる惨劇と、その真意や背景が伝えられていない” (平沢 2003-01-18)
https://susumuhirasawa.com/archives/special-contents/event/nowar/nowar.html
(参照:2024-06-23)
平沢氏の言うとおり、たしかに9.11以降のアメリカの動きは未だ議論が絶えないものであるし、国際法上の違反があったとする指摘も少なくない。このような動きに対しては反戦・反対の意思表明をすることは非常に重要であろう。だが、ここで語られているのは普通の反戦表明ではない。
この反戦表明には、「真意や背景が伝えられていない」という語がつけられている。また同年に発表されたアルバム『BLUE LIMBO』(2003)に収録されている《狙撃手》[16]という曲の歌詞には「DDT」というキーワードが出てくる。これは、「Decoy Distract and Trash(真実を隠蔽する為の囮作戦)」の略であることが同アルバムの歌詞カードからわかる[17]。何者かによって「真意や背景」は隠され、人々の正気を失わせたと平沢氏は主張する。ここに、平沢氏の陰謀論(特にマスメディア陰謀論、9.11陰謀論)への傾倒の始まりが表れているのではないだろうか。
”何万人もの人々を自殺に追いやり、より深い暗黒をこの国に広めた売国奴どもと、それに従うマスメディアは必ず報いを受けなければならない。我々はそれら鬼畜どもと、その背後に鎮座するビッグブラザーの末路を必ず目撃しなければならない。暗黒の底から、名指しで真実を語り続ける勇敢な植草氏の姿と、鬼畜どもの終焉を我々は真実の歴史として記録しなければならない。”(平沢 2009-08-06 太字引用者)
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/75(参照:2024-08-27)
おそらく、平沢氏の中では9.11以前から世界の枠組みに対する漠然とした疑問があったのだろう。それが、9.11という大きな事件をきっかけに漠然とした疑問が具体的な出来事へと変わり、世界は本来こうあるべきという価値観と社会の現状との乖離の背景には、悪意のある巨大な組織が存在するはずという思想に変化したのだと思われる。
陰謀論の成長
その後の平沢氏は、核P-MODELの最初のアルバム、『ビストロン』(2004)[18]において、世界の実像を映し出す「ビストロン」とマスメディアを通じて人為的に放出され誤った世界像を見せる「アンチ・ビストロン」という世界観を構築する。このアルバムの中には《Big Brother》[19]や《崇めよ我はTVなり》[20]といった特徴的なタイトルの曲も多い。このアルバムはジョージ・オーウェル『1984』に描かれているディストピアを題材とする。このようなディストピアに対して、陰謀論者は新世界秩序という少数のエリートによる全人類の管理・奴隷化という共通認識を持つ[21]。
さらに、このアルバムのジャケットタイトルは豊国文字で書かれている。豊国文字は漢字が日本に伝わる前に存在した日本固有の文字とされる神代文字の一種であるが、神代文字自体は江戸時代に創作された偽書であるとされ、陰謀論とされている[22]。平沢がたんにデザインのために豊国文字を用いた可能性もあるが、陰謀論に接触していることは自明であろう。
その後、平沢氏は『点呼する惑星』(2009)[23]、『гипноза (Gipnoza)』(2013)[24]において、より陰謀論を確固たるものとし、具体的な陰謀論を展開していく。
第3章 平沢進と陰謀論・各論~思想編~
本章では、平沢氏の具体的な陰謀論(特に思想に係る部分)を見ていく。
9.11陰謀説
平沢氏は、Hirasawa三行logにおいて9.11のことを明確に「ショー」、すなわち演技であったと明言している。
”911は粗雑な手品ショーだった。おかげで人々は利口になった。もうマスメディアは世論操作に使えない。そんな2010年の1984年2月12日。入浴中に読む本として入手したのは「インフルエンザをばら撒く人々」である。”(平沢 2010-02-12 太字引用者)
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/32(参照:2024-08-27)
また、平沢氏はPhantom Notesにて、9.11陰謀説を思わせる発言を繰り返している。
“世界爆発ショーのホスト役を努めるあの男。”(平沢 2004-09-16 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/03/(参照:2024-06-23)
“一人の悪キャラの指示によって数千人の無実の人が死んだという物語などではない。少数のエリートが惑星を恐怖によって手玉に取り、人々の思考を停止させたことから始まる物語だ。”
(平沢 2007-09-10 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/showtime/(参照:2024-06-23)
“ハイテクを駆使した虚構の悪キャラ映像。ハリウッドのショックを現実の建造物を使って上演し、惑星を支配する少数のエリート。細部は常にグロテスクなほど雑で、あちこちから舞台裏が見えていている。真実を語る者は嘲笑され、時には消される。偽の歴史が配給され、記録される。大小さまざまな催し物は遥か昔から上演されてきた。そろそろ気付いてもいいはずだ、と思うのは甘い。TV、新聞、権威、恐怖、不安、常識が常に人々の脳を食い荒らしている。……さあ、今年も9月11日がやってきた。ショーはまだ続いている。” (平沢 2007-09-10 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/showtime/(参照:2024-06-23)
"記念日がやって来た。あの巨大な演出が成功したかに見えたのは束の間だった。人々が益々バカになる一方で、あの粗雑な工作はより多くの人達が「その事」を知ってしまうきっかけとなった。戦争の本当の動機や詐欺的な貨幣による支配の手品にいたるまで、マトリックスは裸にされつつある。
記念日には「知っているぞ」という静かな主張を込めてTVを切り、不気味な視聴率の真空を作り出すのも愉快だ。もっとも、有意な視聴率の計測など出来ているのかどうかも疑問だがね。"(平沢 2008-09-11 太字引用者)
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/230(参照:2024-08-07)
ここで平沢氏は、アメリカ同時多発テロは「少数のエリート」によって意図的に引き起こされた「ショー(虚構)」であって、TV、新聞は真実を隠し、人々を洗脳していると主張していることが分かる。また、「世界爆発ショーのホスト役を務めるあの男」は、《崇めよ我はTVなり》という曲の解説文中に登場する。同曲のイントロ部分では、ジョージ・W. ブッシュ(George Walker Bush)大統領の2002年1月29日教書演説[25]で使われた「mass destruction(大量破壊)」という単語が差し込まれている。よって、「世界爆発ショーのホスト役を務めるあの男」はジョージ・W. ブッシュ大統領を指していることが推測される。
つまり平沢氏は、「アメリカ同時多発テロは自作自演であり、ブッシュ政権を含む少数のエリート[26]が、テロとの戦争または連邦政府の権限を強化するためWTCビルを自爆した/させ、マスコミは従来のテロ事件であるかのように報道した。」という、9.11陰謀説の中でも自作自演説というかなり主流の陰謀説[27]に立っているのである。
確かに平沢氏の主張にも首肯しうる箇所がある。ブッシュ政権自らが、イラクが大量破壊兵器を保持していて9.11に関与したという陰謀説を広めたという事実はある[28]。このような事実を前にして、9.11に関する米国の公式発表をすべて信じろというのは無理からぬことだ。
だが、実際の映像からも飛行機がWTCビルに衝突していることも判明しているし、飛行機の残骸も発見されている。ブッシュ政権が「少数のエリート」であるかは不明だが、少なくとも「WTCビルを自爆した」という箇所は陰謀論であろう[29]。
3.11人工地震説
”3.11巨大津波事件の日、太陽系亞種音の培養炉の一部が地震によって破壊されました。”(平沢 2013-07-13 太字引用者)
http://noroom.susumuhirasawa.com/uploads/fckeditor/Media/hirasawa-syochumimai.mp3
(現在閲覧不可)
ここで平沢氏は「3.11」、東日本大震災のことを「事件」と表現している。事件というものは、何者かのアクションによって出来事が引き起こされる。つまり、この事件という表現には、何者かの作為的行為によって地震・津波が引き起こされたという意味を含有していると考えられる。
陰謀論者の中では、東日本大震災は地震波形が通常の自然地震と異なり、それは掘削船ちきゅうがプレート地点に核兵器を設置し地震を発生させたまたは、アメリカが核兵器を設置し地震を発生させた人工地震であると主張されている。
だが、東日本大震災は多くの前震と余震を伴っており、これらはプレート境界での蓄積された応力が解放される際の典型的な自然現象である。東日本大震災で観測された地震波形は、典型的な自然地震のP波、S波、表面波の特徴を示している。また、掘削船ちきゅうは地震発生時刻にプレート付近を航行していないし[30]、そもそも巨大な爆発物を海底深くに設置し、精密に爆発させるは現代の技術は極めて困難である[31]。
さらに平沢氏はイルミナティカードゲームと震災を結びつけるような発言も行う。
”ごきげんよう。 テーブルの下からそっと311と書かれたカードを渡す日です。 来年はテーブルの上にドンとたたきつけることができるだろうか。”(平沢 2018-03-11 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/972804395506196480(参照:2024-06-23)
”本日も311と書かれたカードを、そっと机の下から貴方に渡します。”
(平沢 2022-03-11 太字引用者)
イルミナティカードは、1982年にスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社から発売されたカードゲームで、その中には様々な出来事を予言するかのように解釈できるカードが含まれている、と陰謀論者のなかでいわれている[32]。
陰謀論者は、イルミナティカードの中に「Tidal Wave(津波)」と「Nuclear Accident(原子力発電所の事故)」の2枚のカードがあり、これらは東日本大震災を予言していたと言う[33]。この2枚のカードを逆にすると「311」の数字が浮かび上がるらしい[34]。平沢の言う「311と書かれたカード」がこれであろう[35]。
![](https://assets.st-note.com/img/1718807442882-fdN44Fx5Jm.jpg)
青い線が「311」を表している(らしい)
このようなあからさまなデマに引っかかる平沢氏など見たくもないのだが、これが現実である。
平沢氏の特徴は、何か大きな事件があれば、それについての陰謀論的主張がすぐさま登場し、このような陰謀論は、少数のエリート(ユダヤやフリーメイソン)が世界を操っているという既存の陰謀論を補強する一エピソードとして、容易に回収されていく。
余談ではあるが、東日本大震災後にリリースされたアルバム、『гипноза (Gipnoza)』(2013)[36]では、「カタストロフィー(catastrophe)」[37]、「瞬間のCrash」[38]、「天変地異」[39]、「逃げ惑う人」[40]、「救命ショー」[41]、「瓦礫」[42]、「臨界値」[43]など震災を思わせる単語が頻繁に登場する。
多くの方が亡くなった震災をダシに陰謀論と結びつけ、ネタとして消費するという行動を平沢氏自身はどう解釈するのだろうか。
ユダヤ陰謀論
ユダヤ陰謀論は陰謀論の中でもメジャーである。私たちの中の「ユダヤ人」のイメージも、ユダヤ人陰謀論の基盤となっている[44]。
“人類を奴隷と主人に分類する有毒なシオは減るべきというより、消えるべきと知るべき。”(平沢 2014-05-10 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/465106902389506048(参照:2024-06-23)
ユダヤ陰謀論は以下のようなものである。ユダヤ人は世界の政治経済を支配し、情報を自分たちに都合のいいように操作する力を持っている。ユダヤ教は、ユダヤ人だけが人間で異教徒は家畜である、と説いている。ユダヤ人は、自分たちにとって都合の良い世界をつくるために、あらゆる陰謀を巡らせている。これがユダヤ陰謀論のおおまかな内容である[45]。
平沢氏の言う「シオ」とは、おそらく「シオニスト(ユダヤ民族主義者)」か「シオン」を示唆したものと考えられる。一般的なユダヤ陰謀論の土台にあるのは『シオンの議定書(プロトコル)』と呼ばれるものである。『シオンの議定書』は、ユダヤ地下政府の会議で語られた世界支配計画が流出したもの、とされている。その内容は、「大衆は生まれながらにして無知無能であり、自己統治能力はない。ユダヤ人はマスメディアを支配し、大衆を思うままに操ることができる。ユダヤ人による特権階級による絶対的な専制政治のみが、愚かな大衆を導き、大衆は服従することになるだろう。」というものである。
平沢氏の「人類を奴隷と主人に分類するシオ(ユダヤ人・シオニスト)」という発言は、『シオンの議定書』においてユダヤ人が計画したとされる内容に類似している。
しかし、『シオンの議定書』は、ロシア秘密警察[46]が、19世紀のパリで作成した偽書であることが判明している。また、その内容も、モーリス・ジョリ著『マキャヴェリとモンテスキューの地獄での対話』から盗用し、捏造したものである[47]。『シオンの議定書』は単なる社会変化であり、それらの変化を陰謀とし描写しているにすぎないのである[48]。
また、ユダヤ陰謀論者は自身を反ユダヤ主義者ではないと主張する際に、以下のようなアシュケナジー・ユダヤ=ハザール人説を持ち出す。離散ユダヤ人は、歴史的にキリスト教圏のドイツ系ユダヤ人であるアシュケナジーとイスラム教圏のスペイン系ユダヤ人であるスファラディーに分けられる[49]。この分類は事実であるが、ハザール人説は、アシュケナジーは世界征服を企む偽物のユダヤ人であり、真のユダヤ人であるスファラディーは彼らに虐げられ、利用されていると説く[50]。以下の平沢氏の発言には、ハザール説の影響がみられる。なお、この発言は後述する「ネオナチ」発言の後にされたものである。
“知ってる人には基本中の基本です。貴方の正義感と同情心を揺さぶる悲劇の民には二種類いることを知っていましたか?知らなければどっかで学んでください”(平沢 2022-03-08 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/1501079883119661058(参照:2024-06-23)
”実際に一方(本物)は虐げられた歴史を持っていますね。では虐げたのは誰ですか?あなたはこれを受け入れないかもしれない。でも、それはもう一方の流れをくむ人々です”(平沢 2022-03-08 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/1501082246236626946(参照:2024-06-23)
「悲劇の民」とは、ユダヤ人の迫害の歴史を暗喩したものであろう。平沢氏は、ユダヤ人は2種類存在し、一方は虐げられた本物のユダヤ人、他方は虐げたユダヤ人である、と主張する。ハザール説では、真のユダヤ人を虐げた偽物のユダヤ人がいるとされているが、平沢氏の主張はまさにハザール説通りではないだろうか。
なお、この考え方は、直近で開催されたインタラクティブ・ライブ[51]、INTERACTIVE LIVE SHOW 2022 「ZCON」にも反映されている。
“歴史上の何処かで人類にはアヨカヨとアンバニと呼ばれる二つの種類があるという考えが生まれました。アヨカヨとは優れた人間という意味であり、アンバニとは劣った人間という意味です。これは単に考えであって事実ではありません。優れた人間を自称するアヨカヨの発明です。……アヨカヨたちにとってアンバニたちは永久に劣っている必要がありました。立場が入れ替わる恐れがあるからです。アンバニたちは完全に制御され、その一生を自覚なくアヨカヨに仕え、ボロボロになって人生を終える時にさえ、それが道理であると考えるよう教育されてきました。……このようにしてアヨカヨは長い間、搾取と抑圧で栄華を極めました。“(平沢 2021-11-24)
確かに、ロスチャイルド家、オッペンハイマー財閥やなど巨大な経済力を持つユダヤ人がいるのは事実であるし、ユダヤ人にはGoogle創業者ラリー・ペイジやスターバックス元会長ハワード・シュルツなどの成功者も多い。アメリカ三大テレビネットワーク、ワーナーブラザーズなどメディアもユダヤ人の影響が大きい。彼らは、例えばバルフォア宣言などの政治などにも影響力を持つこともある。一見彼らが世界を支配していると疑えるほどユダヤ人の影響は大きい。
だが、ユダヤ人の歴史・成功は、平沢氏の言うような、真のユダヤ人/偽のユダヤ人といった単純な二元論では片づけられないほど複雑である。
Qアノン信者説
平沢氏は2016年11月9日、以下のようなツイートを相次いで投稿した。
“戦争がどうやって作られてきたかをちゃんと知っている人たちは、とりあえず喜んでいるだろうね。私も喜んでいるよ。”(平沢2016-11-09)
https://x.com/hirasawa/status/796324787580612608(参照:2024-06-23)
“マスメディアのいう事を未だに信じている人は混乱してるだろうね。仕方ない人たちだね。「何いってんだヒラサワ?」と思うだろうね。” (平沢2016-11-09)
https://x.com/hirasawa/status/796326028519952384(参照:2024-06-23)
“情報戦士たちのTLが滝のように、文字通り滝のように流れていたよ。あんなの初めて見た。” (平沢2016-11-09)
https://x.com/hirasawa/status/796328018742390784(参照:2024-06-23)
“この戦いは、このイベントのためにはじめられたわけじゃなく、何年も、いや何十年、信じられないだろうけど、もっともっと前から戦われていたんだよ。これは1国の事件じゃなく、地球の事件なんだよ。信じなくていい。今に分かる。” (平沢2016-11-09 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/796329228836839425(参照:2024-06-23)
“この後の大量逮捕に期待するよ。 勿論日本でもね。 「何言ってんだヒラサワ?」でもいい。 私は本気で期待してる。” (平沢2016-11-09 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/796331243394564096(参照:2024-06-23)
“さあ、そろそろ鍼に行くよ。要約しておこうか?:”バカが仕上げに失敗したよ”“(平沢2016-11-09 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/796333228449636353(参照:2024-06-23)
2016年11月9日は、トランプ(Donald John Trump)前米国大統領の当選確実が明らかになった日である[52]。Qアノン信者は、トランプ氏を熱狂的に支持している[53]。信者の間では、トランプ氏は世界規模で児童買春を行っている秘密結社を暴露してくれる、と信じられているのだ。2021年1月6日に発生した米国連邦議事堂襲撃事件において、トランプに導かれ議事堂を襲撃した群衆の中心的存在も、Qアノンと呼ばれるカルト的陰謀論を信じる人々であった。
平沢氏の発言の「大量逮捕」とは、トランプ氏が秘密結社の児童買春を暴露すること[54]で、それに関与した人々が逮捕されるということを指すであろう。また、「情報戦士」はおそらくQアノンのキャッチフレーズである「デジタル兵士」の言い換えである。デジタル兵士とは、2016年の米国大統領選のすぐ後にマイケル・フリン(Michael Thomas Flynn)氏がトランプ支持者を褒め称えた演説から採用されたフレーズである[55]。
しかし、Qアノンの誕生は2017年なので、この時点ではまだ、平沢氏はトランプ支持者である。
追記:2025-02-03
2025年1月20日に再びトランプ氏が米国大統領に就任した。当日、平沢氏は「とっくに知っていた人々は祝杯を挙げるでしょう 私は炭酸水で」というポストを行った他、2025年1月の月締メ・フォルマント[1]においても、トランプ氏の当選に軽く触れつつ(ただし、動画内においてトランプ氏の当選に「とどまらず」という注意が加えられている)これまで本稿で見てきたような彼の価値観が提示されている。
[1]有料会員サイト内での発言であるため、ここでの具体的言及は省略する。
そもそもQアノンとは、英語圏の匿名掲示板である4chan[56]に現れた「Q」と呼ばれる人物の投稿をもとに2017年にアメリカで生まれた、「ディープステートと呼ばれる巨大権力組織が、悪魔の儀式として性的虐待や人食い、児童売買に手を染めており、ドナルド・トランプはこれと闘っている」とするカルト宗教に近い陰謀論[57]である。
Qアノン信者達はその過激な活動・発言[58]から、2020年夏以降、主要なソーシャルメディアからアカウント停止措置が取られおり、活動の拠点をギャブ(Gab)やパーラー(Parler)のような米国保守系ソーシャルメディアに移していた[59]。平沢氏もパーラー(Parler)にアカウントを開設し、以下のように発言している[60]。
“ついに子供でもわかるような嘘をつき始めた。情報源がそれしか無ければ世界はその通りにしか見えない。血相変えてパーラーは人種差別者の集まりの場所だからやめてー!とか言う。”(平沢 2020-11-26 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/1331935795519754240(参照:2024-06-23)
“問題はパーラーに行く私じゃなくて検閲するTw。”(平沢 2020-11-26)
https://x.com/hirasawa/status/1331943178186891270(参照:2024-06-23)
“さて、件の場所は人種差別者とTransphobia(トランスジェンダー嫌悪)のたまり場だとして心配している人がいる。さて?私がTransphobiaに見えるか?人種差別者に見えるか?そしてパーラーに来たら私以外の記事も見ろと強要しているか?判断はおまかせ。” (平沢 2020-11-26)
https://x.com/hirasawa/status/1331945808107773953(参照:2024-06-23)
ここで、平沢氏に「パーラーは人種差別者の集まりの場所だからやめて」と懇願したのは、一部の海外ファン、特にトランスジェンダー当事者である[61]。平沢氏はかねてより「SP-2」と呼ばれるトランス女性をLIVEに出演させたり、彼らの写真集を出版したりとトランスジェンダーへの理解が深いかのように見えた。平沢氏のこのような行動に感銘を受け、平沢のファンになったトランスジェンダー当事者も少なからずいたと思われる。パーラーではトランスフォビア(トランス差別)が蔓延しており[62]、トランスジェンダー当事者は、平沢氏がパーラーにアカウントを設置することに懸念を抱き、パーラーへのアカウント設置を再考するよう平沢氏にリプライを送られた。そのようなリプライを受けての平沢の反応がこれである。
また、平沢氏がQアノン信者と疑われはじめた2021年1月10日の6日前、2021年1月4日に以下のようにツイートしている。
”私はテスラコイルを操作中にこのビジョンを見た。 私はその人物?ブルーピルを飲ませ、決して現実を見ないよう仕向ける。 私が断られることは有り得ない。 これよりその人物?を偵察に行く。 またこんど!!”(平沢 2021-01-04)
https://x.com/hirasawa/status/1346079487671238662(参照:2024-09-11)
レッドピル・ブルーピルはQアノン信者の中で頻繁に使われる単語である[62‐1]。これらの単語は、映画『マトリックス』に由来しており、レッドピルは主流の言説に疑いを向け、独立した思考を持つようになることを、ブルーピルは、世界の真実を知ることなく、自分が信じたいことだけを信じることができることを象徴する。そしてこの投稿がされた2日後の2021年1月6日に米国連邦議事堂襲撃事件が起きた。
ただのトランプ支持者であった平沢氏が正式にQアノン信者と疑われはじめたのは、2021年1月10日のツイートからである。この日、平沢氏は自身のXアカウントのアイコンをヴィンセント・フスカと思われる人物に一時的に変更した。
![](https://assets.st-note.com/img/1719029012631-qTIoJ46DIY.png?width=1200)
ヴィンセント・フスカは故人ジョン・F・ケネディ・ジュニア(John Fitzgerald Kennedy, Jr.)であり[63]、彼が「Q」の正体 であるとQアノン信者の中では信じられている[64]。
さらに、平沢氏は同年6月に、「俳優ジム・カヴィーゼル、アドレナクロムについて語る」という動画のリンク[65]が貼られた以下のようなポストを行った。
“この動画へのリンクを載せた投稿は青の鳥社に削除されるだろうか。 悪夢の人類史に終止符が打たれる時、それはここから紐解かれるのかも知れない。私もそれが効果的だと思う。 公開されることを強く祈る。 (動画は是非最後まで見ていただきたい)”(平沢 2021-06-04)
アドレナクロム(Adrenochrome)とは、アドレナリンが酸化した化学物質であり、実際に血液の凝固を助けるために利用されている。だが、Qアノン信者の間では、アドレナクロムは拷問された子供の脳の下垂体から抽出され、ユダヤ人の血の儀式やエリートたちの若返りの薬の原料に使われている、と主張される[66]。
平沢氏がこのような「トンデモ陰謀論」を唱えるQアノンに傾倒した理由として、マイクの「権威に疑問を抱き、メディアに不信感を抱き、自らをリサーチしようとする人々をQアノンは幅広く歓迎するのである。」[67](マイク 2024)という指摘が当てはまるであろう。Qアノン信者は「答え」を求め、真実が隠されていると信じ、専門家やメディアのいうことは信用せず、隠された真実こそが恐怖の支配を終わらせると信じていることを特徴とする[68]。このようなQアノンの思考基盤と、平沢氏の前より抱いていた思想の相性の良さがQアノン傾倒の一つの理由かもしれない。
「ネオナチ」発言
平沢氏の「ネオナチ」発言が微炎上したことは記憶に新しい。
”人の善意を前提とするものの全てが適切だとは限らないという視点は時に人と自分を守る。それが本当に必要なものなのか自分で調べてみるがいい。貴方がずっと信じて来た年月と同じ年月をかけて調べろとは言わない。もっと短くてよい。一方ネオナチにせっせと募金するグロテスクな善意たち。”(平沢 2022-03-07 太字引用者)
”知らなかったでは済まない惑星規模の共犯。さあ、真意に迫るものに憎悪を向けよ。”(平沢 2022-03-07)
https://x.com/hirasawa/status/1500818044389449732(参照:2024-06-23)
このポストがされた2022年には、同年2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が開始された[69]。プーチン氏はウクライナ侵攻を正当化する際、「ウクライナの非ナチ化」を掲げている[70]。プーチン氏はゼレンスキー大統領を「ナチス」や「ネオナチ」と呼んでいる[71]。
ここで平沢氏はウクライナのことを直接には「ネオナチ」と呼んでいないためその点には留意が必要であるが、プーチン大統領がウクライナを「ネオナチ」と呼んだ経緯も踏まえると平沢氏の発言には批難の余地がある。
また、平沢氏は「ネオナチ」発言の前にもウクライナ侵攻に関すると思われるポストをしている。
“件のカフェは私の知る限り最も広く、体育館のようである。店内カメラが有れば一目瞭然だ。さあ、使いまわし、捏造映像や、悲劇のクライシスアクターなどに目もくれず、定点Webカメラを見よう!”(平沢 2022-03-01 太字引用者)
ロシアによるウクライナ侵攻の開始後、ウクライナの戦争はでっちあげで、民間人の犠牲者は実はクライシス・アクター(非常時演出のため雇われた人)であるとのデマが拡散した。無論、様々なファクトチェックからこのデマは嘘であることが判明している[72]。
東日本大震災然り、薄弱な根拠をもって、多くの人が犠牲になった出来事(少なくともこれは事実である)を自身の展開する陰謀論の正当化のために使うことは到底許されるものではないと私は思う。
医療陰謀論
”外道の医者は足りすぎだ 足りる命をツメやがる 病気の種を蒔きやがる”
https://susumuhirasawa.com/%E2%98%85%E6%96%B0%E8%AD%9C%E3%83%BB%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E9%85%8D%E4%BF%A1%E7%AD%89/39/
(参照:2024-06-23)
”「戦争は平和である」「健康は病である」「新型インフルエンザにかかっている事に気がつかない人が多い」とマスメディアや医師が喧伝する。既に実現されたオーウェル的(1984的)この世界では、自分が「新型インフルエンザ」にかかって「いない」事に気づかない人が居る。街中で見られるマスクをした人々、レストランなどに置かれた消毒液。これらは、あなたの心に巣食う病の深度を深めるために働く。”(平沢 2009-11-27)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/eiui/(参照:2024-6-23)
このような「医者が病気を生み出し、医者は本来助けられる命を無駄に奪っている」という陰謀論は、コロナ禍において「ワクチンにはマイクロチップが入っており、それに医者が加担している」と主張する人々の間にもみられたものである。確かに医療関係者の中には悪徳なものもいるだろう。しかし、ほとんどの医療従事者は、倫理と科学に基づいて(ヒポクラテスの誓いなど)患者の健康と安全を守るために日々努力している。
また、医療機関は大抵の場合、データの透明性を確保するために報告のプロセスを設けている。例えば、日本では臨床試験の透明性を確保するために、倫理審査委員会(IRB)の審査や臨床試験登録(jRCT)といった制度が設けられている。また、感染症報告システムや定点観測システムを通じて、感染症の発生状況が迅速かつ正確に報告されている。さらに、医療事故報告制度や副作用報告制度によって、医療事故や薬剤の副作用に関する情報も適切に収集・公開されている。
平沢氏が医療従事者に対する非常に偏った陰謀論的な見方をするのであれば、平沢氏にもそれ相応のエビデンスの説明が求められる。具体的な事例や証拠を示さずに医療従事者全体を非難することは、社会全体の不安を煽り、公衆衛生に悪影響を与える可能性があることを平沢氏自身も認識すべきである。
気象兵器陰謀論
この節は、私自身平沢氏が気象兵器陰謀論を唱えていると確信が持てなかったため読み飛ばしていただいて構わない。
”1977年に国連で採択された気象兵器禁止条約は接続院で密かに破られた
正当防衛である。”(平沢 2016-05-12 太字引用者)
https://x.com/hirasawa/status/730739523009699842(参照:2024-06-23)
このポスト2016年5月12日に投稿され、同年4月14日・16日には熊本地震が発生している。熊本地震では「HAARP」という米国の「高周波活性オーロラ調査プログラム」が地震を引き起こしたというデマが広がった。
この陰謀論を信じる人たちはHAARPは強力な高周波エネルギーを放出できる気象兵器であり、世界中のどこでもピンポイントで照射し、地震を引き起こすことができるとする。無論、この説は、高周波エネルギーは人間がコントロールできるようなエネルギー量ではないので、科学的に否定されている。平沢の言う「気象兵器禁止条約」は環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約のことを指していると考えられるが、この条約では人工的に地震を発生させ、軍事的に利用することを禁止している。
平沢氏の、条約は「破られた」という表現は、何かしらの災害が人工的に引き起こされたということにつながる。このポストが本当に熊本地震を揶揄しているのかは不明であるが、考察の余地もあるだろう。
小括①
平沢氏の陰謀論は、何か大きな出来事が起きると、平沢氏が「世界は少数のエリートに支配されている」なるストーリーを前提として個々の事実(9.11のブッシュ政権、ユダヤ人、イルミナティ)をそのストーリーにはめ込んでいるだけである。
第4章 平沢進と陰謀論・各論~科学編~
第3章では平沢氏の陰謀論、特に思想に係る部分について見てきた。本章では、平沢氏がハマった・唱えた似非科学の陰謀論について見ていく。
物質X
”これから書くことは人々にとって有益である。幸福の実現においてその基礎となる身体の健康維持や回復に寄与するものであり、それゆえ特定グループの巨大な利益構造を根底から破壊することになる。そのこと自体が人々の長期的な幸福につながるものとはいえ、彼らがそれを許すわけがない。それゆえ、今日まで人の健康について「真実」に接近した勇気ある人々は妨害され、資格を剥奪され、信用を落とされ、投獄され、殺害されてきた。これから話題にする「物質X」の隠された機能を発見した人物も同様、身の安全のために自国に留まることができず、世界中を転々としている。
彼は「物質X」によって一儲けし、有名になりたかったのだろうか?それは違う。製品化されたそれは驚くほど低価格だし、その売り上げの一部は貧しい国の人々に無料で「物質X」を配布するために使われている。彼はまた「物質X」の作り方も公開している。それは容易に手に入る材料を使って台所で作ることができるのだ。それは人々の生活の中で昔から使われてきたものなのである。
「物質X」は難病を含むあらゆる病気を短期間で完治させるという驚くべき機能を持っている。しかしそれは本当に驚くべきことなのだろうか。「物質X」が何万人もの人々の難病を次々と治してゆくという現実を前にして、驚くべきはむしろ「健康の回復には長期間が必要であり、かつ専門的で困難である」という固定観念のほうである。我々は創作された現実に住んでいる。”(平沢 2009-11-27 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/2009/11/27/128(現在閲覧不可)
"「物質X」の使用については書籍の後半、あるいはネット上の使用説明をよく読むように。個人差はあるが急に多くを摂取すると激しい嘔吐や激しい下痢に見舞われることがあるが、これは超特急の解毒作用なので心配ない。身体はダメージを受けていない。体中毒だらけの人は少量でも特急解毒がありえる。少量より段階的に増やすこと。"(平沢 2010-07-05 太字引用者)
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/12(参照:2024-08-27)
"私は今、12時間の間、体内でゆっくりと少量の二酸化塩素を生成しつづける液体を1日2回飲んでいる。100年近くも隠されてきた真実を友人たちに証明するためだ。"(平沢 2009-11-27 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/eiui/(参照:2024-6-23)
ここで平沢氏が言う「物質X」とは「ミラクルミネラルソリューション(MMS)」と呼ばれるものである。MMSは亜塩素酸ナトリウムを含んだ水溶液とクエン酸を混ぜると、工業用漂白剤の主成分でもある二酸化塩素に変化する「ミネラル溶液」である[73]。MMSは、陰謀論者や代替療法愛好家の間で、アルツハイマー病・自閉症・HIVなどの治療・予防に人気があった。平沢氏も、MMSによってニキビや口内炎、潰瘍性大腸炎が治ったと語っている[74]。MMSは、あまりに安価でFDA(米国食品医薬品局)や医薬品業者が製造する医薬品が売れなくなってしまうため、既得権益を守る集団から抑えつけられているという話で人気であった[75]。
だが、MMSを飲むことは工業用漂白剤を直接飲むことに等しいため、微量であっても健康被害が出ることは免れない。実際に嘔吐、下痢、脱水などの症状を起こすことが報告されており、最悪の場合、急性肝不全の症状が出るケースも報告されている。米食品医薬品局(FDA)[76]や厚生労働省も承認[77]された医薬品ではないと注意を促している。
この物質を平沢氏のみが摂取するにとどまるのなら、もし健康被害が発生しても平沢氏自身にしか影響せず問題もなかろう。しかし、あろうことか平沢氏のこの発言を受けて実際に摂取してしまった人がいるようだ[78]。平沢氏は自身の影響力を踏まえた上で、MMSの効果を吟味してから進めるべきであったが、平沢氏はMMSの安全上の問題を権力の問題へと飛躍させてしまっている。
平沢は上記の発言に対する批判を受け、以下の理由で「Jateひれ伏す」を非公開にした。
”私は「物質X」を題材にしてひとつの世界観を示そうと試みているに過ぎません。しかしもう一度言う。私はこのシリーズを通して一つの世界観を示そうと試みているだけだ。ゆえに、あなたは私の立場を拒否することができる。あなたは自身の幸福の追求において、あなたが信頼のおける、現時点で最良と思われる他の世界観を採用することができる。”(平沢 2011-02-01 太字引用者)
この点に関して、名取氏の 「選択の自由を保障することは、誤った情報を流布することの免罪符にはなりません。誤った情報を公開すれば、批判や反論を受ける。当たり前のことです。」[79]という指摘がもっともであろう。
なお、MMSに関して、平沢サイドからこのような注意書きは添えられている。
“注意:これはミュージシャン平沢進が、自身の姿勢を若干の詩的ニュアンスを込めて書いた表現であり、二酸化塩素の摂取を勧めるものではありません。またその効果を宣伝するものではありません。二酸化塩素とその摂取方法について充分に理解された方が自己責任で行う以外、絶対にマネしないでください。”(平沢 2009-11-27)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/eiui/(参照:2024-6-23)
EM菌
EM(Effective Microorganisms)菌とは、「有用微生物群」の通称であり、主に土壌改良や堆肥化、廃水処理などに使用され、土壌の健康を改善し、植物の成長を促進する効果がある、とされている[80]。このEM菌は、世界救世教開祖の岡田茂吉が提唱した「救世自然農法」にも使用され、同教団を後ろ盾に、日本だけでなく、タイをはじめとする海外にも紹介された[81]。
平沢氏も以下のツイートでEM菌を紹介している。
“タイ現地からの情報:水の浄化にEMが大活躍中とのこと。日本のメディアで「特殊な菌」と表現されているのはEMのことだそうです。なぜか固有名詞出したくないようで…。日本発なのに…。ま、相変わらずということで”(平沢 2011-10-13 太字引用者)
“タイ現地情報。洪水による汚水浄化のため「EM BALL」と呼ばれるEMを練りこんだボールや原液を水に投入しているそうだ。TVのニュース番組でも作り方など説明。舟やヘリコプターからも大量に投入されはじめたとのこと。「EM BALL」はタイ政府が推奨。” (平沢 2011-11-07 太字引用者)
“EMは日本の一部ではトンデモ扱いされておりますが、どうぞお構いなく。私は昔から恩恵にあずかっておりますので放っておいてください。タイでは国王推奨の農法として一般的に成果を上げていると現地人に聞いた。洪水の際の汚水浄化にも使われている。袋は何度でも洗って使える。” (平沢 2019-01-20 太字引用者)
”本日よりスタートHIRASAWA三行log。そういうわけで今後は名乗らなくても書くのはヒラサワ自身ということである。そんな日の私の朝食メニューは、微生物農法による無農薬玄米一善、とうふステーキ+みそごまソース、漬け物数種類、黒豆、野菜だらけのみそ汁。モンドセレクション金賞の”こいまろ茶”。以上、名付けて「バイオスフィア内の格調高き僧院食」。 あ、三行超えてる…。”(平沢 2008-04-23 太字引用者)
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/326(参照:2024-08-27)
ここで平沢氏は、「日本で生まれたEM菌はタイでも使われており、私自身も使っているのに日本のメディアはそれをそのまま伝えない」と主張する。さらに平沢氏は日本の「一部では」トンデモ扱いされていると語る。
しかし、EM菌のほとんどは科学的根拠が乏しく、その効果は最大でも他の農業用微生物資材と同程度という結果となっているため、「一部」ではなく、多くの科学者から似非科学とされている[82]。例えば、平沢氏の主張するEM菌が水質改善に役立つとの主張にも、ほとんど効果がないとされている。河川には既存生物が存在し、多種な生物が拮抗している状態であり、この中に外来のEM菌を入れても、よほどその環境下で増殖能力が他を凌駕しない限り、EM菌が優先種になることはない[83]。
ケムトレイル陰謀論
"タイでケムトレイルを見たのは初めてだった。というより、タイで昼間の空を見上げる機会が圧倒的に少なかっただけかも知れない。"(平沢 2007-07-08 太字引用者)
https://susumuhirasawa.com/phantom-notes/post-74/(参照:2024-6-23)
ケムトレイルとは、コントレイル(contrail=飛行機雲)にケミカル(chemical=化学物質)というという言葉をかけ合わせた造語で、長時間残留する飛行機雲は、人口削減のために散布された有害物質であるとする陰謀論である[84]。だが、この陰謀論は世界中の科学者から否定されている。米国当局のファクトシートによれば、航空機の排気ガスは、湿度が高くなると消えずに残り、上空の広い範囲に目に見える水蒸気の軌跡(飛行機雲)を作るとされている[85]。検証するまでもなく、陰謀論であろう。
小括②
平沢氏が唱える似非科学の根幹にも、真実を隠ぺいする巨大権益とそれを隠すメディアという構造が存在している。
終章 リスナーとして
本稿ではまず平沢氏の陰謀論を抽象化し、それから具体的な陰謀論を検証してきた。「平沢進は陰謀論者である。」と言っても差し支えないだろう。平沢氏は種々の陰謀論を唱えているが、平沢氏の結論は同じものにたどり着く。
結局、平沢氏の主張は、「世界は騙す/騙される側の二者から構築される」または「世界に虚構を造る闇側とその闇を暴く光側」という二元論に回収されてしまうのである。特に最近の平沢氏の思想は、Qアノンの「善と悪との戦争」という考え方に強く影響されている。こと最新アルバム『BEACON』では、正しく人を導く「BEACON」と人を誤った方向へと導き、隷属させる「Zcon」という二項対立的概念が用いられている。
近年の平沢氏の傾向として、楽曲に陰謀論をそっくりそのまま反映させる点にある。2004年発売の『ビストロン』では、陰謀論を部分的に用いながらもなんとか平沢氏自身の世界観に落とし込んでいたが、『点呼する惑星』以降のアルバム(特に『BEACON』)には陰謀論をそのまま垂れ流しているものも少なくない。さらに『BEACON』では命令形の動詞が増えたことも大きな特徴である(「見よ」や「聴け」、「立て」など)。もともと平沢氏は「私はこのように考えた。オマエタチは好きにしろ」と言ったスタンスをとっていたが、そのスタンスは「私はこのように考えた。オマエタチも同じように考えろ」というスタンスに変わったのだろうか。
では、なぜ平沢氏の陰謀論はここまで助長されたのか。その原因は大きく3つあると考えられる。
第一に、政治への関心であろう。平沢氏の陰謀論は政治性をこめた歌詞を作り始めたことに端を発する。「正しい知識」を知ろうとして陰謀論にのめりこんだというのはあまりにも皮肉であるが、秦は、政治への関心・知識は、ある種の好奇心を生み出し、それが陰謀論と接触する確率を高めるとのデーターを発表している[86]。
第二に、マスメディアから離れたことだろう。平沢氏は9.11後にテレビはすべて捨てたと発言している。私たちに届く政治や社会の情報は、その多くは新聞やテレビなどの大手マスメディアから提供された情報であるインターネット上のニュースサイトの情報も、結局は大手マスメディアのものである。しかし、平沢氏はテレビを持っていないため[87]、テレビからは情報を得ることはできない。となれば、インターネットから情報にアクセスするしかないが、平沢氏は伝統的なマスメディアを利用しないだろう。しかし、インターネット上の意見にはよくわからない一般人の意見や素人の意見と専門家の意見が玉石混交に並んでいる。たしかに、マスメディアの情報を鵜呑みにしないことは大切だし、既存メディアの在り方には大きな問題もある。しかし、マスメディアの情報にはBPO(放送倫理・番組向上機構)などの第三者機関調査制度も整備されているし、少なくとも私たちが得ることができる情報の中ではある程度の正確性が担保されている。マスメディアは「真実を一切伝えていない」と断定して完全に遮断し、自分の望む意見をインターネット上で探す行為はエコーチェンバー現象引き起こしたりと危険である。
最後に、これは私の完全な私見であるが、馬骨界隈という独特なコミュニティーと平沢氏の姿勢が相互に影響しあい、悪循環を引き起こしたことが原因だと考えられる。
平沢進はインターネット上において、その対象が音楽性にせよスタイルにせよ意味不明さにせよ、基本的に称賛の対象となる。(試しにX上で「平沢進」と検索してみてほしい。否定的な人はいてもほんの僅かであろう。)一般的なリスナーでさえそうであるなら、当然平沢進のファン(馬骨)は平沢進は絶賛する。フジロックに平沢氏が出演した際、平沢氏を知らない人から「23世紀の宗教の教祖みたいな人」と呼ばれていたが、馬骨界隈はある種宗教的と言っても過言ではない。
そんな平沢進を崇める馬骨たちは、平沢氏が問題発言を行っても、それに賛同するか、「元からそういう人だから」と片づけてしまっていた。例えば件の「ネオナチ」発言で平沢氏に直接的にリプライをした観測可能であったアカウントの内、平沢氏に賛同したアカウントは36個、平沢氏を否定したアカウントも36個、中立的な立場を示したアカウントは16個であった。恐らく他のアーティストがこの発言を行えば、圧倒的に否定的な意見が多くなるであろう。
また、平沢氏は自身に否定的な意見を送ったアカウントをブロックしている。無論、ブロックするかしないかは平沢氏の勝手なので、そこを非難するつもりはない。だが、平沢氏に否定的な意見を送るとブロックされてしまうため、当然に馬骨たちは平沢氏を否定することができなくなる。大抵の人は好きなアーティストからブロックされることは、少なくとも喜ばしいことではないだろう。
つまり、平沢氏に否定的な意見を送るとブロックされてしまいかねないため、馬骨たちは平沢氏を賛美するしかなく、そこに独特なコミュニティーが形成されていき、確証バイアスのようなものを生んだ、というわけである。
私は平沢氏の音楽性は好きだし、今年開催されたHYBRID PHONON 2566追加公演にも参加した。今後出されるギター・アルバムももちろん購入する予定であるし、これからも「平沢道」を歩み続けるだろう。
しかし、平沢進の陰謀論もその歩みを止めることはない。今後、平沢進が許容できない陰謀論を唱え始めたら、私はそれ相応の根拠をもって反対するつもりである。それでも平沢氏が意見を拒絶した時、私は「馬骨」という名を降り、平沢進という存在から静かに去るしかないのだろうか。
【註】
*本稿におけるインターネット情報の最終アクセス日は2024年6月23日である。
[1] ベテランち(@veteranchi). X, 2021-05-04 17:05:26, https://x.com/veteranchi/status/1389491345786474510(参照:2024-06-23)
[2] 日本の作曲家・音楽家(1954~)。1970年代半ばからプログレッシヴ・ハードロックバンドのマンドレイクで活動し、1979年にP-MODELのヴォーカル・ギターとしてメジャーデビュー。1989年以降はソロ活動も行っている。代表曲に「白虎野の娘」など。
[3] 秦正樹『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』pp.226(2022, 中公新書)
[4] 辻隆太朗『世界の陰謀論を読み解く』pp.4(2012, 講談社現代新書)
[5] 辻・前掲註(4)pp.5。陰謀論には種々の定義が存在する。例えば、1945年刊行のカール・ライムント・ポパー『開かれた社会とその敵』によれば、陰謀論は「この論の主張するところによれば、社会現象の説明は、個人や集団がその出来事に関心をもち、それを出現させるための陰謀をめぐらしたという事実を発見することにある。(かれらの関心はしばしば隠されているから、最初にそれが暴露されなければならないというわけである。)」(Popper 1945=2023)と説明される。カール・ポパー(小河原誠訳)『開かれた社会とその敵 第二巻 にせ予言者(上)』pp.208(1945=2023, 岩波文庫)。さらに、ポパーは陰謀論は社会理論として破綻しており、例外なく悪いものであるとする。しかしながら、陰謀論が現実において暴かれたものも少なくなく、陰謀論が完全に悪いものであるかは疑問が残る。このような事情を踏まえると、陰謀論の定義は秦の「重要な出来事の裏では、一般人には見えない力がうごめいていると考える思考様式」(秦 2022)であるというのが適切であるかもしれない。秦・前掲註(3)pp.6。なお、平沢氏自身は「陰謀論」を、“「陰謀論」というのはご推察の通り、ケネディー暗殺以降、真実を追求する人々の評判を落とすために作られた民衆操作用語です。模範奴隷が率先して使ってくれるので便利です。”としている。Susumu Hirasawa(@hirasawa). X, 2021-10-15 22:04, https://x.com/hirasawa/status/1448998181837029383(参照:2024-08-20)。
[6] 秦・前掲註(3)pp.226を参照。
[7] 平沢進, 2006, パレード[Song],『白虎野』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[8] 辻・前掲註(4)pp.286を参照。
[9] Kagalin, 2021-11-28,「平沢進とユング心理学」, https://note.com/kagalin/n/n354bc5b60dda
(参照:2024-06-23)
[10] P-MODEL, 1985,『KARKADOR』, アルファレコードなど。
[11] 航路通, 2017-04-27,「大津波では救いがたい」, https://searoute.hatenablog.com/entry/2017/04/27/011425(参照:2024-06-23)
[12] 平沢進, 1995,『Sim City』,
ポリドールや平沢進, 1996,『SIREN』, 日本コロムビアなど。
[13] ゲンロンカフェ, 2019-02-13,「平沢進・徹底解剖!」,
https://genron-cafe.jp/event/20190213/(参照:2024-06-23)
[14] 平沢進, 2003-01-18,「殺戮への抗議配信」,
https://susumuhirasawa.com/archives/special-contents/event/nowar/nowar.html(参照:2024-06-23)
[15] 平沢・前掲註(14)「今まで私は人道的な抗議行動や、政治性を帯びた行動には距離を置いてきました」。なお、9.11以前の《UNDOをどうぞ》(1991)においても反戦の意思は表明されていたが、それは9.11以後に行われた反戦表明とは異なるものである。
[16] 平沢進, 2003, 狙撃手[Song],『BLUE LIMBO』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[17] なお、同曲には「真実の墓地」といったキーワードも出てくる。
[18]核P-MODEL, 2004, 『ビストロン』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[19]核P-MODEL, 2004, Big Brother[Song],『ビストロン』, ケイオスユニオン/TESLAKITE。この曲はジョージ・オーウェル『1984』の「ビッグ・ブラザー」から着想を得ていると考えられる。
[20]核P-MODEL, 2004, 崇めよ我はTVなり[Song],『ビストロン』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[21]辻・前掲註(4)pp.116
[22]沖森卓也『はじめて読む日本語の歴史』(2010, ベレ出版)
[23]平沢進, 2009,『点呼する惑星』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[24]核P-MODEL, 2013, 『гипноза (Gipnoza)』, ケイオスユニオン/TESLAKITE
[25]2002年1月29日教書演説全文は,
https://www.americanrhetoric.com/speeches/stateoftheunion2002.htmを参照。
[26]なお、平沢氏が「2002年の「Green Page」(公式サイト内に設けられていたBBS)閉鎖に先立つ騒動の中で、平沢が9・11のテロはフリーメイソンによる陰謀であると述べ、根拠は何かと問われて、陰謀論やオカルト関連の話題が多いことで知られる阿修羅掲示板のURLを貼った」との情報もある。
青海符, 2022-03-21, 「検証:平沢進と陰謀論」, https://note.com/seigaifu/n/n7b9aa2b436b9#yEjmf(参照:2024-06-23)
[27]デヴィッド・レイ・グリフィン『9・11事件は謀略か:「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権』(2007, 緑風出版)
[28]2004年10月6日アメリカ合衆国政府調査団の最終報告にて、イラクに大量破壊兵器はなかったと明確に否定された。
[29]奥菜秀次『陰謀論の罠 : 「9.11テロ自作自演」説はこうして捏造された』(2007, 光文社)
[30]辻・前掲註(4) pp.33-36
[31]荻上チキ『検証 : 東日本大震災の流言・デマ』(2011, 光文社新書)
[32]辻・前掲註(4)pp.156
[33]「何か大きな事件があれば、それについての陰謀論的主張がすぐさま登場し、一気に拡散する。このような陰謀論は、ユダヤやフリーメイソンなどについての既存の陰謀論を補強する一エピソードとして、容易に回収されていく。」辻・前掲註(4)pp.9
[34]スカパー公式, 2023-04-30. YouTube,『23年5月にメガネの要人が狙われる?米国に対峙する意外な国が!未来を予言するカードに新説発見<独特な視点の客が集まるBAR#9>』, (10:08), https://www.youtube.com/watch?v=Hf_IK9wsmYg(参照:2024-06-23)
[35]なお、平沢は9.11に関しても「だから「怖い」と言ったでしょ。さてと、本年も911と書かれたカードをこっそりとテーブルの下から差し出し、去る。911はまだ終わっていない。またこんど!!」と発言している。Susumu Hirasawa(@hirasawa). X, 2020-09-11 21:00, https://x.com/hirasawa/status/1436665829400088576(参照:2024-06-16)陰謀論者の間では、二つの高層ビルが爆破されている図柄を指して、「アメリカ同時多発テロはイルミナティによって事前計画されていた。」と主張される。辻・前掲註(4)pp.157-158
[36]「гипноза」はロシア語で「催眠」である。
[37]核P-MODEL, 2013, гипноза (Gipnoza)[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[38]核P-MODEL, 2013, гипноза (Gipnoza)[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[39]核P-MODEL, 2013, それ行け!Halycon[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[40]核P-MODEL, 2013, 109号区の氾濫[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[41]核P-MODEL, 2013, それ行け!Halycon[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[42]核P-MODEL, 2013, Dμ34=不死[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[43]核P-MODEL, 2013, 109号区の氾濫[Song],『гипноза (Gipnoza)』
[44]辻・前掲註(4)pp.55
[45]この点、松浦寛『ユダヤ陰謀説の正体』(1999, ちくま新書) に詳しい。
[46]ロシア秘密警察の目的は、「帝政ロシアの存立を脅かす自由主義的・近代主義的潮流の責をユダヤ人に帰し、ユダヤ人迫害を煽り、既存秩序の正当化と延命を図ることだった。」辻・前掲註(4)pp.63
[47]辻・前掲註(4)pp.63
[48]辻・前掲註(4)pp.65
[49]黒川知文『ユダヤ人の歴史と思想』(2018, ヨベル)
[50]辻・前掲註(4)pp.74-76
[51]平沢進が開催するストーリ仕立ての観客参加型マルチメディア・コンサート。https://susumuhirasawa.com/archives/interactive-live/2013_nomonos/about-IL.html
[52]BBC, 2016-11-09, “US election 2016 result: Trump beats Clinton to take White House”, https://www.bbc.com/news/election-us-2016-37920175(参照:2024-06-23)
[53]マイク・ロスチャイルド(烏谷昌幸=昇亜美子共訳)『陰謀論はなぜ生まれるのか:Qアノンとソーシャルメディア』(2024, 慶応義塾大学出版会)
[54]マイク・前掲註(53)pp.6、24-25、65、159
[55]マイク・前掲註(53)pp.21
[56]4chan はQアノンが出現する前から極右やトランプ崇拝者が跋扈していた。マイク・前掲註(53)pp.33
[57]マイク・前掲註(53)pp.33-53
[58]マイク・前掲註(53)pp.150-171
[59]マイク・前掲註(53)pp.218-220、Reuters, 2021-01-12,「 ツイッター、「Qアノン」喧伝のアカウント7万件超を停止」,
https://jp.reuters.com/article/usa-election-twitter-qanon-idJPKBN29H0EJ/(参照:2024-06-23)
[60]Susumu Hirasawa(@hirasawa). X, 2020-11-19 21:48, https://x.com/hirasawa/status/1329406245615194112(参照:2024-06-23)
[61]grjti, 2022-03-17,「地獄に落ちろ平沢進」, https://grjti.hatenablog.com/entry/2022/03/17/001005#f-fa4982e9(参照:2024-06-23)
[62]パーラーは「暴力の扇動」が問題視されアプリストアから規制措置が取られている。Reuters, 2021-01-11,「 アップルとアマゾン、右派の集まるSNS「パーラー」を削除」, https://jp.reuters.com/article/apple-parler-idJPKBN29G009/(参照:2024-06-23)
[62‐1]藤原学思『Qを追う 陰謀論集団の正体』pp.102(2022, 朝日新聞出版)
[63]副島隆彦「裏切られたトランプ革命 新アメリカ共和国へ」pp.75(2021, 秀和システム)
[64]Vallejo, Justin; Thomas, Phil , 2022-1-18, “Why some QAnon believers think JFK Jr is still alive – and about to be vice president”,https://www.independent.co.uk/news/world/americas/us-politics/qanon-jfk-jr-alive-trump-b1995594.html ,The Independent(参照:2024-06-23)
[65]リーハイバレー・ジャパニーズ・ミニストリーズ, 2021,「子どもの人身売買、映画『自由の音』についてジム・カヴィーゼル語るJim Caviezel」, https://rumble.com/vfvr2r-jim-caviezel.html(参照:2024-06-23)
[66]マイク・前掲註(53)pp.81-85
[67]マイク・前掲註(53)pp.7
[68]マイク・前掲註(53)pp.ⅴ
[69]Reuters, 2022-02-24,「ロシアが全面侵攻開始、ウクライナは自国を防衛=クレバ外相」, https://jp.reuters.com/article/ukraine-russia-invasion-kuleba-idJPKBN2KT0DR/(参照:2024-06-23)
[70]リアリティーチェック・チーム, 2023-02-22,「【検証】 プーチン氏の年次演説、中身は正しいのか ファクトチェック」. BBCニュース, https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64727808(参照:2024-06-23)
[71]本部広報課, 2022-03-30,「ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く」. 東京大学, https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00153.html(参照:2024-06-23)
[72]シャヤン・サルダリザデフ, 2022-03-08,「【解説】 ウクライナ侵攻は「でっちあげ」というネットの偽情報」. BBC NEWS JAPAN, https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60657780、TBS NEWS DIG Powered by JNN, 2022-08-14,「嘘の被害を演じる"クライシスアクター"なのか?マリウポリの爆撃現場に佇む謎の妊婦を独占取材」. YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=6pBG8bQqnHA(参照:2024-06-23)
[73]StefanSirucek , 2015-3-12, “The Parents Who Give Their Children Bleach Enemas to 'Cure' Them of Autism”. VICE, https://www.vice.com/en/article/kwxq3w/parents-are-giving-their-children-bleach-enemas-to-cure-them-of-autism-311(参照:2024-6-23)
[74]平沢進・公式サイト(@Hirasawa₋Info). X, 2010-06-23 10:55, https://x.com/Hirasawa_Info/status/16815483900、平沢進, 2010-06-23, HIRASAWA三行log「美顔プロトコル」, http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/16(参照:2024-06-23)
[75]マイク・前掲註(53)pp.177
[76]Jeremy Kahn, 2019-8-12),“FDA warns consumers about the dangerous and potentially life threading side effects of Miracle Mineral Solution”. fda.gov , https://web.archive.org/web/20190814102219/https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-warns-consumers-about-dangerous-and-potentially-life-threating-side-effects-miracle-mineral(参照:2024-6-23)
[77]厚生労働省,「個人輸入において注意すべき医薬品等について」. www.mhlw.go.jp, https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html(参照:2024-6-23)
[78]名取宏, 2011-01-31, 「平沢進と物質X(ミラクルミネラルソリューション)」, https://natrom.hatenablog.com/entry/20110131/p1#f-33c7e1d8(参照:2024-6-23)
[79]名取・前掲註(78)
[80]左巻健男『ニセ科学を見抜くセンス』pp.13-55(2015, 新日本出版社)
[81]左巻・前掲註(80)pp.13
[82]左巻・前掲註(80)pp.13-55、Gijika.com, 2019-12-10,「EM菌」. Gijika.com, https://gijika.com/rate/le_effective_microorganisms.html、片瀬久美子, 2020-02-24,「EM菌の正体(構成微生物を調べました)」, https://note.com/katasekumiko/n/nd2eb3d7da6f8、菊池誠, 2012,「ニセ科学と科学者の社会への関わり方」,『應用物理』, 第81巻10号, pp.844(参照:2024-6-23)
[83]赤石維衆, 2014,「EM 菌は河川等の水質汚染の低減に効果がありますか。」,『WaQuAC-Net 会報20号』,pp.11, https://www.waquac.net/pdf/newsletter201401.pdf(参照:2024-6-23)
[84]左巻・前掲註(80)pp.165
[85]United States Environmental Protection Agency, 2000-9, “Aircraft Contrails Factsheet”. faa.gov, https://www.faa.gov/regulations_policies/policy_guidance/envir_policy/media/contrails.pdf 、野上英文, 2022-09-28,「ケムトレイル:政府が飛行機雲で有害物質を空から散布している?【ファクトチェック】」. 日本ファクトチェックセンター, https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/environment/chemtrail-government-airborne-dispersion-harmful-substances-false/(参照:2024-06-23)
[86]秦・前掲註(3)pp.166-208
[87]平沢進, 2008-05-19, Hirasawa三行log「捨てた」,
http://3gyo-log.susumuhirasawa.com/page/303(参照:2024-08-07)
*本稿に対してご意見・訂正がございましたら、どうぞコメントでお知らせください。確認次第、随時訂正させていただきます。