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特に都市部では薬局の店舗は賃貸物件であることが多いと思います。
賃貸物件の内装工事費用は所有物件とは処理が異なり資産計上や減価償却に関わる重要なポイントが多くあります。
今回は賃貸物件の場合の薬局の内装の処理に絞って解説します。



調剤薬局様の税務のご相談については、下記リンク先をご確認ください。
まずはお気軽に一度ご相談ください。

新橋税理士法人 薬局様用専用サイト

内装工事費の資産計上

賃貸物件の場合には内装工事にかかった費用は「資産」として計上し、減価償却の対象となります。
まずは工事業者から出される見積書や契約書等から各内装工事の項目を分類しましょう。

  • 建物付属設備:空調設備や電気設備、給排水工事など、建物に取り付ける設備が対象です。これらは「建物付属設備」として資産計上します。

  • 構築物:外構工事や駐車場の舗装など、建物以外の施設にかかる費用は「構築物」として資産計上します。

  • 器具備品:店舗什器、カウンター、照明、パーティションなど、取り外し可能な設備や備品は「器具備品」として資産計上します。

参考)資産計上と仕訳例


減価償却の対象と耐用年数

内装工事費用を資産計上すると減価償却の対象となります。耐用年数は、壁や床、天井の工事は「建物付属設備」として15年の耐用年数が一般的ですが、内装の「構造」や「材質」造作の全てを一つの資産として合理的に見積もった耐用年数により償却します。
見積もり方法は具体的には規定されていませんので、合理性のある方法で見積もられていれば問題ありません。10年~15年が一般的となります。
ただし、賃貸物件の内装工事における耐用年数の設定は、税務調査においても重要視されるため、税理士と相談しながら進めるのがベストです。

国税庁:主な減価償却資産の耐用年数表

No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数

内装工事で計上された資産は償却資産税の対象

償却資産税は、事業用の償却資産に対して課される地方税です。賃貸物件における内装工事で計上される資産も対象となり得ます。具体的には、賃貸物件の内装費用として計上される設備や造作物が、事業のために利用される場合、償却資産税の課税対象です。

  • 対象資産:建物付属設備や構築物、家具や什器などの内装のための設備が含まれます。

  • 申告方法:毎年1月31日までに、市町村への申告が必要です。申告しない場合、ペナルティや過去の未申告分の課税が発生する可能性もあります。


少額資産特例や一括償却資産の税制優遇の利用も考えてみよう

少額資産の特例や一括償却資産は、中小企業や個人事業主が利用できる減価償却に関する税制優遇措置です。それぞれの違いと特徴を紹介します。

【一括償却資産】

一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の資産に対して、3年間で均等に償却(費用化)できる制度です。通常の減価償却資産と異なり、耐用年数にかかわらず一括して3年間で経費化します。

  • 対象となる資産:10万円以上20万円未満の償却資産

  • 償却方法:3年間で均等に償却(3分の1ずつを各年度で経費に計上)

  • 主なメリット:資産の費用配分が安定し、計上が簡便

  • 適用条件:青色申告である必要はなく、誰でも利用可能


【少額償却資産】

少額償却資産とは、取得価額が30万円未満の資産に対して、取得年度に全額を一度に経費計上できる制度です。この制度を活用すると、少額の資産を購入した年度に即時費用化が可能であり、減価償却を行わなくて済みます。

  • 対象となる資産:30万円未満の償却資産

  • 償却方法:取得年度に全額を一括で償却

  • 主なメリット:取得年度に即時費用化でき、税負担の軽減に繋がる

  • 適用条件:中小企業者等の青色申告が必要で、年間300万円までが上限


参考)一括償却資産と少額償却資産の違い

【対象資産の金額の考え方】

一括償却資産や少額償却資産の対象資産の金額は、資産の「取得価額」で判断され、購入価格に付随する費用(運送料や設置費用等)も含まれます。
また複数の部品やセットで構成される資産の場合は、一体として使用されるものか別々に使用できるものかどうかが重要です。

  • 一体として使用されるもの:セット全体の金額で判断します(例:パソコンとディスプレイなど)

  • 別々に使用できるもの:個々の取得価額で判断します(例:デスクとチェアを個別購入した場合)

また、内装工事費用には、工事の内容に直接関係しない間接的な経費(例:管理費や交通費)や共通経費(例:デザイン)含まれていることがあります。
これらの費用については合理的な按分方法で計算して複数の勘定科目に計上します。よって取得原価はこれらも含めた金額となります。

注意すべき点

少額資産の特例を利用した資産は、減価償却を一度に行いますが、償却資産税の課税対象からは外れるわけではありません。したがって、30万円未満で経費として計上した少額資産も、事業用資産として償却資産税の申告対象となる点に注意が必要です。


内装工事の税務処理は複雑ですので、正確な処理を行うためには専門家と相談しながら進めると安心です。




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