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奇跡の中心極限定理:数学の魔法が明かす現実の不思議
「偶然の積み重ねが、なぜか予測可能なパターンに収束する。」
こんな現象が世の中にはたくさんあります。
例えば、宝くじの当選者の出身地は、日本全国にまんべんなく分布している。
あるいは、大勢の人がダーツを投げ続けると、どんなにバラバラに見えても、最終的にはある規則的な分布に落ち着く。
この不思議な現象を説明するのが「中心極限定理」という数学の法則です。
ここで、また数学の話をされると身構えてしまう人もいるかもしれません。
なので、ここでは難しい数式は抜きで、この「奇跡の法則」がどのように私たちの身の回りで働いているのかを紹介していきましょう。
たくさんのバラつきが、なぜかまとまる不思議
まず、身近な例として「カフェの待ち時間」を考えてみましょう。
スターバックスのレジに並ぶ時間は、日によってバラバラです。
すぐに注文できる日もあれば、やたらと混んでいる日もあります。
でも、たくさんの店舗でデータを集めると、不思議なことが起こります。
ランダムに見える待ち時間のデータを平均すると、なぜか「ある特定の時間」に落ち着いてくるのです。
極端に長い待ち時間や短い待ち時間は減っていき、多くの人の経験が平均に収束する。
この現象こそが、中心極限定理の力なのです。
世論調査が意外と当たる理由
「世論調査なんて信用できない」と思う人もいるかもしれません。
実際に、1000人程度のアンケートで「国民全体の意見を反映できる」と言われても、ピンとこないでしょう。
しかし、ここでも中心極限定理が働いています。
世の中の人の意見はバラバラですが、ある程度の人数を無作為に選んで調べると、全体の傾向が不思議と安定してくるのです。
1000人というのは少なく見えますが、世論調査の結果が大きくブレることは意外とありません。
これをうまく利用しているのがマーケティング会社です。
小規模な調査で商品やサービスの人気を測り、それを全国レベルの消費動向に結びつけています。
株価の動きにも影響する?
株価も、日々のニュースや経済状況でバラバラに動いているように見えます。
でも、長期的にデータを取ると、ランダムな動きがある規則性に収束していくことがわかります。
これを利用しているのが「投資リスクの管理」です。
例えば、ある投資家が「この会社の株価は今後も安定した動きとなる」と判断するときは、この会社のデータだけを見るのではなく、多くの企業の過去の動きを分析して判断します。
そして、バラバラな値動きの平均がどのように落ち着くかを予測して、戦略を立てるのです。
これは、ファンドマネージャーがポートフォリオを組む際にも役立ちます。
この場合も、特定の企業の株価だけを見るのではなく、さまざまな企業のデータを組み合わせることで、全体として安定したリターンを得ようとするのです。
医療にも使われる「奇跡の法則」
意外なことに、医療の分野でも中心極限定理が活躍しています。
例えば、新薬の治験。
新しい薬が本当に効果があるかどうかを知るために、たくさんの人に試してもらいます。
当然、一人ひとりの反応はバラバラですが、大勢のデータを集めることで「薬の効果はどのくらいなのか?」「副作用はあるのか」などを正確に測ることができます。
この仕組みがなければ、医療は今よりもずっと不確実なものになっていたでしょう。
個々の症例を見ても結論は出せませんが、数千人、数万人のデータを見れば、明確なパターンが見えてくるのです。
世界は意外と予測可能
バラバラに見える出来事も、たくさん集めると意外なほど規則的になる。
中心極限定理のすごいところは、どんなデータであっても「数が増えれば安定する」という点にあります。
ランダムに見えても、一定の法則が隠れている。だからこそ、経済や医療、マーケティングなどの分野で幅広く活用されているのです。
もしあなたが「世の中は予測できない」と思っているなら、それは半分正解。
でも、もう半分は「意外と規則的で予測可能」なのかもしれません。
日常の中にも、この数学の魔法が潜んでいるのです。