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6. アジャイルでのスプリント計画
スプリントは、アジャイルの肝となる仕組みです。これによって、チーム全員が同じ目標に向かって短期間で成果を出すことができるようになります。
ここでは、スプリント計画と実行の基本を解説し、そのうえで具体的な方法や実例を交えてその効果的な活用法を紹介します。
スプリント計画の基本
スプリント計画は、短い期間(通常1〜4週間)で達成可能な作業の範囲を明確にするプロセスです。
ここでの目的は、「何をするか」と「どうやるか」をチームで共有することにあります。
1. スプリントゴールの設定
スプリントゴールとは?
スプリントの最終的な成果物を表す目標です。
例: 「ユーザーが簡単に商品を購入できるカート機能の実装を完了する」ポイント: ゴールは明確で具体的であることが重要です。あいまいな目標は、チームの方向性をぼやけさせ、進捗を阻害します。
2. バックログから作業を選定
プロダクトバックログ(やるべき仕事のリスト)から、スプリントで取り組むアイテムを選びます。
例: 「カートに商品を追加する」「商品を削除する」「合計金額を表示する」プランニングポーカーを用いたポイント付けを行い、各タスクの複雑さを評価します。
ポイントの合計がチームのスプリントキャパシティを超えないように調整しましょう。プランニングポーカーについてはこの章の最後に説明します。
3. タスク分解
各バックログアイテムをより小さなタスクに分解し、作業を細分化します。
例: 「UIデザイン作成」「データベース連携」「動作確認テスト」タスクが小さいほど、進捗の把握が容易になります。
スプリントの実行
計画が整ったら、いよいよ実行です。アジャイルの実行フェーズでは、チームが一体となって進行状況を追跡し、課題を解決していきます。
1. デイリースクラム(スタンドアップミーティング)
毎朝、10〜15分程度の短い会議を行います。
各メンバーが以下を共有します:
昨日何を達成したか
今日何をする予定か
進行中の課題やブロッカー
目的: チーム全体の状況を見える化し、迅速に障害を取り除く。
2. タスクの「見える化」
ツールの活用:
カンバンボードやデジタルツール(例: Microsoft PlannerやTrello)を用いて、タスクの進捗状況を視覚化します。進行ステータスの更新:
タスクを「To Do」「In Progress」「Done」に分類し、チーム全員が現在の状況を一目で把握できるようにします。
3. 障害の解消
チームの力を借りる:
ブロッカーが発生した場合は、即座に他のメンバーやスクラムマスターに助けを求めます。課題解決の優先順位:
スプリントゴールに直接影響を与える問題を優先することで、リスクを最小限に抑えます。
実例:スプリント計画と実行の流れ
ここでは、地域で開催される「秋のフードフェスティバル」を題材にして、スプリント計画と実行のプロセスを具体的に見てみましょう。
このフェスティバルでは、来場者に楽しんでもらえるよう、専用のウェブページを短期間で構築する必要があります。
計画フェーズ
フェスティバルに向けて、まず以下のスプリントゴールを設定しました。
スプリントゴール: 「フェスティバル情報が分かりやすく、スマートフォンでも見やすい専用ウェブページを完成させる」
プロダクトバックログには、次のようなタスクが含まれています:
メインビジュアルを作成する(4ポイント)
フェスティバルの雰囲気を伝える写真とキャッチコピーを用意。
出店情報を掲載するページを作成する(5ポイント)
各店舗の名前、メニュー、価格、場所を一覧で表示。
来場者向けアクセス情報ページを作成する(3ポイント)
電車や車でのアクセス方法や、駐車場の位置情報を掲載。
モバイル対応デザインを整える(3ポイント)
スマートフォンで見やすいレスポンシブデザインを採用。
動作確認テストを行う(2ポイント)
主要なブラウザとスマートフォンでの表示をチェック。
これらのタスクをさらに小さなステップに分解し、それぞれを「To Do(これからやる)」「In Progress(進行中)」「Done(完了)」に分類するカンバンボードを準備しました。
実行フェーズ
日次ミーティング: 毎朝10時にデイリースクラムを開催。
チーム全員が「昨日何をしたか」「今日何をするか」「何がブロックされているか」を短時間で共有。例: デザイナーが「メインビジュアルが完成したのでアップロードします」と報告。
エンジニアが「店舗情報ページの入力フォームに問題があり、フィードバックが必要」と課題を提示。
進行状況の「見える化」:
カンバンボードをオンラインツール(例: Microsoft Planner)で管理し、進行状況をリアルタイムで更新。
例: 「モバイル対応デザイン」が「In Progress」から「Done」に移動したことで、タスク完了の達成感を全員で共有。障害の解消:
フォーム入力時にスマートフォンで表示が崩れる問題が発生。デザイナーとエンジニアが協力して迅速に修正。解決後、すぐにボードを更新して全員が状況を把握。
完了
スプリント終了時に、完成したウェブページをクライアントに確認してもらいました。
フィードバックをもとに次のスプリントで取り組むべき改善点を洗い出します。
クライアントのコメント: 「来場者からの問い合わせページが欲しいです。」
→ 来場者からの問い合わせページを追加することが次のスプリントでの課題として設定されました。
成功するためのヒント
リアルタイムの調整:
計画が進行中に変更されることを恐れないでください。スプリントの柔軟性はアジャイルの強みです。短いサイクルで改善:
スプリントを短期間で繰り返すことで、プロセス全体を常に改善していけます。チーム全体での合意形成:
ゴールやタスクの優先順位について全員が納得していることが、スムーズな進行の鍵です。
次の章では、スプリント終了後に行う「レビューと振り返り」について詳しく解説します。成果を最大化するための振り返りの方法や、次回のスプリントにどう活かすかを学んでいきましょう。
コラム:プランニングポーカーとは?
プランニングポーカー(Planning Poker)は、タスクの見積もりを行うための手法です。この方法は、チームメンバー全員が意見を出し合い、迅速かつ効果的にタスクの複雑さや所要時間を評価するために使用されます。
プランニングポーカーの概要
プランニングポーカーは、各メンバーがカードを使って見積もりを提示することで、タスクの見積もりのバイアスや影響を避けることを目的としています。具体的には、以下のような手順で行われます:
タスクの説明:
プロダクトオーナーや担当者が、見積もり対象のタスクについて説明します。タスクの目標や必要な成果物、制約条件などが共有されます。
個別見積もり:
各メンバーは、タスクの複雑さや工数を独立して評価し、自分のカード(通常は数値が書かれている)を選びます。この時点では、他のメンバーの意見や見積もりなどに影響を受けないようにします。
同時提示:
全員が同時にカードをオープンして、自分の見積もりを提示します。この方法により、一人の意見が全体に影響を与えることを防ぎます。
議論:
提示された見積もりに大きな差異がある場合、その理由を各メンバーが説明します。特に高い見積もりと低い見積もりの理由が重要です。
再見積もり:
議論の後、メンバーは再度見積もりを行い、再度カードを提示します。これを何度か繰り返し、合意に達するまで行います。
メリット
公平な見積もり: 全員が独立して見積もりを行うため、特定のメンバーの影響を受けにくい。
迅速な合意形成: 見積もりプロセスが迅速に進行し、チーム全体がタスクの理解を深めることができる。
チームの一体感: メンバー全員が積極的に参加することで、チームの一体感が強化される。
プランニングポーカーは、アジャイルチームがタスクの見積もりを効率的かつ正確に行うための強力なツールです。これを活用することで、プロジェクトの計画やスケジューリングがより現実的かつ効果的になります。
このように、プランニングポーカーは民主的な見積もり方法であるため、チーム間の合意形成に有効です。