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第2章:誤解と心理的バイアスのエラー

人間は互いの行動を「解釈」する能力に長けていますが、時にその解釈が誤りや偏見に基づくこともあります。特に、相手の意図を悪意があると見なし、それを防ぐために先手を打とうとする過剰反応が戦争につながることもあります。この章では、誤解や認知バイアスによって引き起こされた戦争の事例を取り上げます。

1. 誤解による対立:日清戦争

日清戦争は、日本と中国の間で起きた戦争ですが、その背景には双方の誤解がありました。日本は、欧米列強の侵略から自国を守るために軍事力を強化していました。しかし、中国側から見ると、日本が軍備を増強している様子は「アジアにおける覇権を目指している」と映りました。このような相手の意図を過大に評価する姿勢が双方に見られ、最終的に戦争という形で対立が表面化したのです。

当時、日本は朝鮮を中国から切り離し、独立させることで東アジアの平和を図ろうとしましたが、これは中国にとって、自国の影響力の縮小を意味しました。結果として、双方が誤解したまま戦争が勃発し、予期せぬ多くの犠牲を生むことになりました。

2. 認知バイアスによる誤解:真珠湾攻撃

真珠湾攻撃は、お互いの誤解が積み重なった結果でもありました。当時、日本はアジア諸国での影響力を高めることに注力しており、アメリカはこれを欧米の利権や影響力への脅威と見なしていました。

アメリカは、日本の動きを抑えるため、石油などの重要資源を日本に供給しないという経済制裁行いました。日本側はこれを「自国を窮地に追い込む意図的な行為」として受け止めました。日本は、「経済封鎖が続けば、自国の安全が脅かされる」と認識し、先制攻撃としての真珠湾攻撃を決断しました。

一方、アメリカは、日本がここまで強硬な行動に出るとは予測していなかったため、真珠湾攻撃という奇襲攻撃を受けることとなりました。結果として、この誤解と予測の失敗が、太平洋戦争を引き起こすきっかけとなったのです。

3. 心理的な「敵対視」:インドとパキスタンの対立

インドとパキスタンの関係は、誤解と心理的な「敵対視」によって悪化してきたといえます。1947年の分離独立以降、カシミール地域をめぐる対立など、お互いが相手を「攻撃してくる存在」として警戒するようになり、ちょっとしたきっかけが戦争の火種となるリスクをはらんでいました。

それぞれが軍事力を強化していくことが、お互いに脅威として映り、それが「相手が攻撃してくる前に自国を守らなければならない」という心理を生みます。この「恐怖」と「自己防衛」の心理が重なり、外交による解決が難しい状況が続いているのです。

まとめ

誤解や認知バイアスは、小さな火種を大きな戦争へと変える力を持っています。相手の意図を過大評価したり、自己の正当性を過信することが、対話や外交の可能性を失わせ、戦争への道を広げてしまうことがあるのです。

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