第2章:進化する好奇心 – 変革の国で育つ
1960年代、アメリカ・カリフォルニア
時は1960年代初頭、アメリカは変化と成長の真っ只中にあった。アメリカでは科学技術の革新が進み、戦後の好景気で人々の生活も豊かさを増していった。
ベトナム戦争や公民権運動といった問題も社会を揺さぶる中、カリフォルニアの街には新たな価値観や夢が満ちていた。
そんな時代の空気を吸いながら、スティーブ・ジョブズはさらに成長していった。学校帰りに彼はよくパウロと一緒に、街を歩きながら、次々と変わる街の風景を見つめていた。
カリフォルニアの街角にて
「スティーブ、見てごらん。この辺りもどんどん新しい建物が建っているだろう?」
とパウロは街の新しいショッピングモールやビルを指さした。
「アメリカはすごい勢いで発展している。お前も、この国と共に成長していくんだ。」
スティーブはその言葉をじっと聞きながら、目を輝かせてビルを見上げた。
「お父さん、僕もいつか、こんな大きなものを作れるようになりたいな。」
「そうか、スティーブ。」
パウロは微笑みながら頷いた。
「それならまずは、どんなものが必要かを学ぶことだな。何でも一つ一つ分解して、仕組みを知るんだ。」
帰宅後、スティーブは父が大事にしていた工具箱を見つめていた。
「お父さん、これはどうやって使うの?」
スティーブが小さなドライバーを手に取りながら聞くと、パウロは優しく教えてくれた。
「これは小さなネジを回すためのものだよ。部品同士を固定するときに使うんだ。試してみるか?」
スティーブはうなずき、慎重にドライバーをネジに当てがって回し始めた。ドライバーの感触、そして小さな部品がしっかりとはまっていくのを感じるたびに、彼の好奇心はさらに膨らんでいった。
スクールでの出会い
学校ではスティーブはよく機械やガジェットについて話していたが、同級生たちの興味はそれほど高くはなかった。
彼が夢中になっていたのは、普通の少年には少し難しい話だったのかもしれない。しかしある日、彼の話に耳を傾ける同級生が現れた。
「ねえ、スティーブ、それ何の話をしてるんだ?」
と、ある日クラスメートのジョンが興味を示してきた。
スティーブは少し驚いたが、嬉しそうに説明を始めた。
「父さんがね、ラジオの仕組みを教えてくれたんだ。それで僕も色々分解してみて、どうやって動いているか知りたくなったんだ。」
「すごいな、それって難しくないの?」
ジョンは目を丸くして聞いた。
スティーブは肩をすくめながら答えた。
「確かに難しいところもあるけど、楽しいよ。何かを理解するために、分解して見るっていうのはワクワクするんだ。」
二人の会話はやがて、他のクラスメートも巻き込み、簡単な電子工作に挑戦するようになった。彼の好奇心が少しずつ仲間にも広がっていった。
最近のニュースは、宇宙開発の話題で溢れていた。このころアメリカとソ連は競い合いながら、宇宙進出を本格化させていた。スティーブはその光景を食い入るように見つめていた。そして彼の胸の奥には新たな夢が広がっていった。
「お母さん、いつか僕も、こういうすごいことをする人になりたいな。」
スティーブが目を輝かせながら言った。
クララはそっと彼の肩に手を置き、優しく微笑んだ。
「スティーブ、あなたならきっと何でもできるわ。私たちはあなたの夢をずっと応援しているからね。」
スティーブは母の言葉を励みに、新しい技術や発見への興味を深めていった。そして、彼の心には「自分も世の中に変化を起こす存在になりたい」という強い決意が芽生え始めていた。
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