![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/7471899/rectangle_large_type_2_3fa92b295ff51b2ce56cdd1526e415c6.jpg?width=1200)
PPIは食事の影響を受ける
いずれのPPIも添付文書上の用法は「1日1回」のみで、食前か食後かの明確な記載はないが、IFによると次の通り。
ランソプラゾールはCmaxが食前は1,038だが食後では679にまで低下する(AUCは不変)。
ラベプラゾールとオメプラゾールは食後では食前に比してTmaxが2hrほど延長する。
エソメプラゾールは数値は不明だが食後投与でCmaxとAUCが低下すると記載がある(胃内pHは不変)。
ボノプラザンはTmaxが食前は1.5hrだが、食後では3hrに延長する。
総じてPPIは食前服用の方が、作用が早く or 強くなる傾向がある。
でもこれは、よくよく考えたらごく自然なこと。たいていの薬は、空腹で服用すれば小腸への移行速度が速い(胃内滞留時間が短い)ので、効果発現が早まる(Tmaxが短縮)し、小腸内の薬物濃度が一気に上がるから、Cmaxも上昇しやすい。
浜松医科大学臨床研究管理センターの古田隆久准教授も、日本医事新報社の記事でPPIの服用タイミングについて言及されているが、薬物動態学的数値と効果をイコール視してしまうと判断を見誤る。
必ずしも「Cmaxが高いから効果がいい・副作用が出やすい」という訳ではない。
なぜなら、このPPIの効果には「薬力学的」要素を考慮しなければならないから。
これには薬理学的作用機序が関与する。
PPIはプロトンポンプを不可逆的に不活性化する(要は完全破壊だな)ことで胃酸分泌を抑制するという結果を出す。このプロトンポンプは再生するのに約24hrを要するから、その間は胃酸分泌を抑制できるという訳だ。
つまり、PPIが作用するのはプロトンポンプを破壊するところまでで、その後はプロトンポンプが体内にあろうがなかろうが、胃酸分泌は抑制され続けるのだ。
上に示した4種のPPIで考えると、例えばランソプラゾールは食前でCmaxは確かに上昇する。しかし、食後のCmaxで十分な数のプロトンポンプを不活化できていれば、「食前の方が効果がいい」とは言い切れなくなる。実際、胃壁に存在するプロトンポンプの何パーセントが阻害されているのかが分からないから何ともいえないが、Cmax上昇=効果上昇 という安易な考えは危険であることは認識しておきたい。
【2018/02/25記載】
いいなと思ったら応援しよう!
![薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/7338761/profile_978334c862c6f866c1b881a7cd9da5ad.jpg?width=600&crop=1:1,smart)