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スタチンによる横紋筋融解症(Rhabdomyolysis:RM)の発症機序を考えてみる

 小林らはいずれのスタチンも濃度依存的にRD細胞の生存率が低下する事を確認した。RDとはrhabdomyosarcomaの事で、和訳すると「横紋筋肉腫」。ここではRD細胞≒骨格筋細胞と考えることとする。
 その細胞障害性の強さは、セリバ>シンバ>フルバ>アトルバ>ロバ>ピタバ≫プラバ、ロスバの順だった。
 ※セリバスタチンは日本では未承認。
 また、下のTable1, Fig2ように脂溶性(Po/w)が高いスタチンほど細胞障害性(IC50)が強いことも分かった。なので、プラバとロスバは圧倒的にRMを起こしにくいと推測される。

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 さて、RMの発症機序だが、直接的にはアポトーシスが原因である事は既知の事実。小林らは、スタチンが何故アポトーシスを引き起こすのかについてセリバスタチンを用いた研究結果を発表している。

 その結果と考察によると、RMの発症機序は次の通り。
 スタチンがMCT4(monocarboxylate transporter-4)(乳酸を細胞外へ排出する輸送担体)を阻害し、細胞内のpHが下がる
   ↓
 ミトコンドリアからシトクロムCの放出が促進され、カスパーゼ-9が活性化する
   ↓
 カスパーゼ-3/7が活性化されてDNAの断片化が起こり、アポトーシスへ繋がる
・・・というもの。

 ここで、ミトコンドリアを介したアポトーシス経路を誘導する一因に細胞内酸性化が関与してる事や、アポトーシスにはカスパーゼ9や3/7の活性化が伴う事などは過去の研究報告で上がってた事なので、今回はそれらを関連付けたと言う事になる。
 さらに、水酸化ナトリウムやクエン酸塩を同時投与して細胞のpH低下を抑制すれば細胞障害性が抑えられたとする結果まで出している。
 つまり、脂溶性が高くMCT4を阻害する薬剤はスタチン以外のものでもRMを発症しうると考えるべきかも(MCT4阻害作用を調べる術がないが・・・)。
 またRMを起こしやすい薬剤でもメイロン®︎やウラリット®︎の併用でRM発現が抑えられるかもしれない。ただ、本MCT4阻害作用は通常用量よりもかなり多い投与量で検証されているので、その点では信憑性に不安は残る。

 ちなみに、コレステロール低下作用の強さは
「ピタバ≒アトルバ≧ロスバ≒プラバ≧フルバ≧ロバ(≧セリバ)≧シンバ」
だと小林らは述べており、そうすると、シンバスタチンは効果が低い上にRMを起こしやすいという印象の悪い薬剤という結果になっている。 

【情報元】
小林正紀, 北海道大学臨床薬剤学研究室, スタチン系薬物由来横紋筋融解症の発症機序ならびに発症リスク軽減に関する研究(学位論文)より

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。