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エスワン製剤、「Ccr<30症例では投与しない」という認識だと思うが、添付文書にはそのような記載はない。それどころか、Ccr<30症例への投与結果が記載されている。投与していいの?ダメなの?どっち?

 適正使用ガイド等では、「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤」はクレアチニンクリアランス(Ccr)30mL/min以下の症例では「投与不可」となっている(以下の図参照)。

ティーエスワン®適正使用ガイドより

 ただ、添付文書上、禁忌とはなってない。
 禁忌項目には「重篤な腎障害」という文言はあるが、Ccr<30=重篤な腎障害という意味ではないので、これをもって「Ccr<30には投与不可」とするのは無理がある。
 またCcrに関する記載は、50未満の記載までで、添付文書上30未満には触れられていない。
 これはつまり、Ccr<30の症例に投与しても、保険請求上は問題ないという事になる。

ティーエスワン®添付文書より

 さらに添付文書の「17.2.1 腎障害時の副作用」の項目には、Ccr<30の症例に投与した場合の副作用発現率データが記載されている。
 ・・・え?Ccr<30に使ってるってことやん! 適正使用ガイドで使用不可としてるのは何を根拠に言うてんの?

ティーエスワン®添付文書より

 この表、Ccr<30症例では、「基準量投与開始症例」で20例、「減量投与開始症例」で17例に投与したという意味。
 でもよく見れば、基準量投与開始症例ではもちろん、減量投与開始症例でも他のCcrレベルの症例に比べて副作用の発現率が上がっているのが分かる。
 特に、高度(Grade3)以上の副作用発現率が急激に上がっているのが分かる。 ※「減量投与」とは、主に1段階減量のこと。
 大鵬薬品工業㈱のDI室情報によると、実はこのCcr<30症例データは、1,999~2,000年に行われた使用成績調査の結果(3,808例)であり、これを元に、「Grade3以上の副作用が急激に増えたのでCcr<30の症例には投与しないようにしよう」という判断の元になったんだとのこと。

よって、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤は、倫理上はCcr<30症例には投与しないことが原則となる。

 ただし、現状の添付文書内容では保険請求上は問題ないことになるので、実臨床ではCcr<30以下症例への投与もありうるだろう。
 その場合は、投与量を十分に下げる必要がある(少なくとも40mg/回以下が望ましい?)が、そこには十分なエビデンスが不足しているので、調剤後の患者フォローなどによるこまめな体調チェックが必要になってくるだろう。
 ※添付文書上、Ccr<50症例に対する具体的な投与量設計がないため、上記同様の解釈でCcrが40台の投与症例でも同じことが言える。


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薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志
仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。