見出し画像

ニコチンの悪影響を生理学的にまとめる~ニコチンはなぜ体に悪い?なぜ依存性がある?~

 ニコチンの主な毒性は、「神経毒性」による「依存性」。
 高濃度では神経遮断作用(鎮静作用)を有するが、低用量では逆に神経興奮作用となる。後者の作用を利用したのが、喫煙による多幸感である。

 ニコチンの化学構造は以下の通り。

 logP(o/w)は1.2であり、脂溶性が適度にある。
 また、血漿タンパクとの結合率が低いこともあり、喫煙による摂取では肺胞から急速に血中に移行する。
 さらに、(脂溶性が高いため)BBBも容易に通過し、摂取からわずか5~7秒で脳に達すると考えられている。

 脳に達したニコチンがニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に結合すると、イオンチャネルが開き、神経終末からドパミンが放出される。
 しかし、放出は一時的であり、ニコチンも急速に代謝される(尿中に排泄される)ため、喫煙者は「瞬間的な多幸感」を感じることになる。
 この「瞬間的な多幸感」が依存性につながってしまう。

 また、ニコチンそのものに発がん性は認められていないが、代謝されるとニトロソアミンになる。
 ニトロソアミンは、アミン誘導体(R1-N-R2)の窒素にニトロソ基(-N=O)が結合した化合物の総称で、その中に「N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)」などの発がん性物質がある。

【参考】
 クレデンシャル 2020/No.140内の記事より

いいなと思ったら応援しよう!

薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志
仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。