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「人間は完璧でなくてもいい、それが人間らしさだから」

アラン・ドロンが88歳でこの世を去ったというニュースを耳にしたとき、ふと、昔のことを思い出しました。

私がパリに住んでいた頃、友人が絵画のオークション会場でアラン・ドロンを見かけたと言っていたのです。友人は、「彼はまるでマフィアのボスみたいな雰囲気を漂わせていた」と私に話してくれ、その印象が妙に私の心に残りました。そのせいで私は、彼のことを顔が良いだけの俳優だとずっと思い込んでいたのです。

その為、彼の映画にはあまり興味を持てず、ほとんど見ることがなかったのですが、最近になってその印象がガラリと変わりました。

きっかけは、YouTubeで見つけた古い映像でした。アラン・ドロンが40年ほど前に日本を訪れた際のインタビューで、民放のアナウンサーが彼に尋ねたのです。「あなたは美貌で知られていますが、年を取ることに不安はありませんか?」と。

アラン・ドロンはこう答えました。「人は外見の美しさではなく、内面の美しさが大事だ。だから、老いることは問題ではない」と。さらに、彼はこう続けました。「人生において一番大事なのは、自分自身に忠実であることだ。若い頃から成長し続けなければ、人生に意味はない。人は成長するために生きているのだから。」

この言葉は、私が今まで持っていた彼のイメ-ジを変えたのです。彼の言葉には、深い知性と洞察がにじみ出ているように感じました。

アラン・ドロンが言う「内面の美しさ」とは、彼特有の感覚もあり、彼自身が生きてきた中で培ってきたもので、そして彼は、自分を取り巻く経験をすべて前向きに受け止め、泣いたことも笑ったことも隠さず、力強く生きてきたのでしょう。

彼は、『人間は完璧でなくてもいい、それが人間らしさだから』と話していました。この言葉を聞いた時に、なんとなく自分の身体が楽になり、呼吸が深くなったのを感じました。

アランドロンは、「目はその人の魂を語る」というフランスのことわざを引用し、年を重ねることに対する喜びを語っていました。彼は、ただの美男ではなく、人生の深みを持った人物だったのです。

アラン・ドロンの魅力は、端正な顔立ちだけではなく、その内面の美しさ、そして知性にあったのだと、今になってようやく気付きました。彼が演じた役柄の中には、彼自身の持つ洞察力と深い知恵が反映され、だからこそ、彼は一時代を築き、多くの人々に愛され続けたのだと感じました。

アラン・ドロンのご冥福を心よりお祈りいたします。






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