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Netflixオリジナルドラマ『アッシャー家の崩壊』ep5小ネタ解説

 以下、ドラマ、本編のネタバレを含みます。


 この文章を書いているのはケビン・ベーコン出演のドラマ『The Following』を見てポーの小説を読みあさったただのオタクですのでお手柔らかに。
 

 『アッシャー家の崩壊』ep5: 告げ口心臓、見ました。というかもう最後まで見ました。文章を書くのをサボっていた。取り敢えずep5の感想: なるほどね。そして今回こそそんなに書くことないな。
 まず、『告げ口心臓』(The Tell-Tale Heart)のあらすじを説明すると、特に恨みもない老人の眼が恐ろしすぎて気が狂いそうなので殺して床下に埋めたけどその老人の心臓の音が聞こえてきて気が狂いそうになる話です。はい。
 ドラマではきちんと、"殺した相手の心臓の音が聞こえてきて気が狂いそうになる"を再現していて良かったし、まさかの自分が殺していたことを忘れていたという点において原作の語り手より狂っていてとても良かった。もちろん原作でも老人が生きている間から心臓の音が聞こえていて、それがどんどんと大きくなるように聞こえていたから彼も"狂っている"(ただし本人は否定)のだが。原作では動いていないはずの心臓の音が聞こえ、ドラマでは動かない心臓を動かしている音が聞こえる...どちらもホラーとして良い。

…例の音はやはり立ちのぼり、延々と膨れあがった。うるさく、うるさく、やかましい!…こいつらに聞こえないだなんてありうるか?神よ、断じてありえない!聞こえていたんだ!…

エドガー・アラン・ポー、鴻巣友季子・桜庭一樹編、2016年『ポケットマスターピース09 E・A・ポー』集英社文章ヘリテージシリーズ、430頁


 また、原作では心臓の音は自分にしか聞こえておらず、部屋に入ってきて寛いでいる警官も聞こえているはず!と焦りに焦るが、ドラマでは幻聴→実際に鳴っている音になるのが良かった。原作を知ってる人からしたら、全部幻聴なんだよな〜とか思ってる(油断)してるところにロデリックが確かに聞こえるなとか言い出すから何事?!となるわけだ。もしかしたらヴェルナによる幻聴がロデリックにも?!と思ったりもしたが残念ながら現実だった。上手い。

良い表情してますね

 ということで、原作では『黒猫』同様に語り手は死なないし、むしろ殺す方なのでどうやって『告げ口心臓』をドラマに落とし込むのかと思いながら見たので、なるほど死人の心臓をガチで動かしてきたか。いいね。

なるほど人工心臓ね

 さて、ep5に出てきたポー要素の話。あまりないです。
 まずこのエピで死んだヴィクトリーヌ・ラフールカードは『早まった埋葬』で"早まった埋葬"をされた人物である。ep4の『黒猫』同様に『告げ口心臓』の語り手にも名前はないので他の作品から取ってきたのだろう、但し原作のヴィクトリーヌは生き延び、恋人と仲良くハッピーエンドを迎える。皮肉かな。
 "まず"とか言ったけどもう特にない。前々のエピからエジプトについて言及されているのは『ミイラとの論争』からインスパイアされなものかな?あとはバーで鴉の話が出てきたり、葬式で道化師の姿を見たり、もはや壁の向こうの人物と会話したりと、『大鴉』『アモンティリヤードの酒樽』が出てきたぐらい。以前にも何回か出てきてるのでそう新しくはない要素ではあるが。『アモンティリヤードの酒樽』、早くやってほしい。
 そういえばレオが撮ったヴェルナの写真が写りましたが、抱いているのは黒猫ではなくネズミだし、場所も完全に施設ではないので、もうこれは完全にパートナーが死んだ挙句、猫ちゃんどっか行ったジュリアス可哀相。

廃墟で黒猫ではなくネズミを抱いてるヴェルナとガラスに写り混むレオ

 ということで殆ど書くことなかったので画像で誤魔化しました。書くことはなかったが、ep5、好きだよ。心臓の音がどんどんと大きくなっていく肝心の表現はあまりなかったように感じたが、落とし込み方が良かった。

 さてep6は人が死なない『黄金虫』です。もう見たけど、楽しみですね〜

 『告げ口心臓』、読んでね。

The Tell-Tale Heart (原文)↑

 クリストファー・リーによる音読がオススメです。→ https://youtu.be/Z_utA6j3Oc8?si=R35Y2wHPAgCaWGK1

ではでは。

参考
エドガー・アラン・ポー、鴻巣友季子・桜庭一樹編、2016年『ポケットマスターピース09 E・A・ポー』集英社文章ヘリテージシリーズ

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