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09/06:カプセルトイの速度

駅の構内や大規模小売店舗でカプセルトイが存在感を示す光景は今更特筆することでもないかもしれないが、なんとなく関心を持ったので、目につくことが多くなった。

関心を持ったのはきっかけは、昨年「岩谷堂箪笥ミニチュアフィギュア」の紹介が流れてきて、ふと心惹かれたからだ。

結局この惹起された欲求は忘れられて、思い出したころには什器を見ても商品はなく……と手に入れることはなかったのだけれど。

この桐箪笥もそうだけれど、ラインナップを見ているととにかくニッチな商品が目に付くことが多い。もちろん、特異なものはたくさんシェアされるし、印象に残りやすいことはある。が、店頭で目視した上でもなお、ネタに振った商品の隆盛はすごいな……と量に驚いてしまう(もちろん、いいとか悪いとかいった話ではない)。

蓋し、コンテンツ消費速度の上昇と相性がいいんだろう。ネタに振った商品はすなわちおおよそ瞬間火力へのステ振りと同じ向きだと思っていて、高速で推移するトレンドの中で重要になる「見られること」の点で重宝する。
この特性は自分の満足度を外部の視線に託す割合が大きくなればなるほど強くなり、「この期間の満足を獲得するアイテム」としてイケてるもの認定がなされるわけだ。とても合理的だと思う。

自分はトレンドの要素に「コミュニティに持ち帰ると自分のヒエラルキーが上がるもの」という項目を定義していて、上記のような商品はおそらくこれに該当してくれる(バンドワゴン効果の観点から言えば循環論法かもしれないが)。「大人になってもカプセルトイを自分の世界の範囲内におさめている」人たちのコミュニティなら、たぶん「こんな面白いネタアイテムを知っている自分はこの集団において強いと言えるだろう」という無意識の心理は成立するはずだ。要はサブカルクラスタ。自分も含まれるのでよくわかる。
桐箪笥のカプセルトイだって、自分の心に深く残る作品――例えば『凪のあすから』のようにずっと愛でていられる類のものではないし。

そういったことを思いながら、高速化するトレンドとじっくり系ゲームが好きな自分の間でどう折り合いをつけるか……ということを考えているわけだけれども、それを叶える方法はまだ見つかっていない。本腰入れて探していないからのような気はする。ネタに振ったら打点も打率も上がるかもしれない。それはそう。けれども、それをずっと愛でることは難しい。人生にのしかかる『ディメンション・ゼロ』が重すぎるともいえる。でも好きなものは好きなので……。


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