「バーチャル接客業従事者のキャリア」を創る 〜稼働2周年を迎えたバーチャル接客店舗の所信表明〜

概要

2022年7月29日を持ちまして、(株)ファントムコミュニケーションズが開発・運営するVR風俗店X-Oasisが開業二周年を迎えました。
この度、国内に数社しかないバーチャル接客業サービスのシステム開発元・運営法人として、『バーチャルワークの多様性を推進する各種NPO法人』(NPO法人バーチャルライツ等)への加盟を積極的に行っていきます。
目的として、バーチャル接客業従事者の権利、キャリア形成や、現行法対応・将来的な展望の双方を目した契約のあり方などについて議論を深め、最前線の現場での事例をフィードバックすることを目標としております。
バーチャル接客サービスが持続可能な働き方になる未来のため、積極的に発言の場を増やして参ります。

なお、本note上において、「バーチャル接客業従事者」を、「接客サービスを、主にアバターを介して遂行する内容の仕事に従事する者」と定義します。

現段階からフィードバックするべきと考える内容について

起業段階から携わる社長の私自身、いち活動者として自身のアバターを用いた経済活動を行っており、現在ではバーチャル風俗嬢として実際にお客様とやり取りを交わしています。

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バーチャル接客業の提供者・自身の活動者としての両側面の経験から、下記の2点について議論を深め、バーチャル接客業従事者に起こりうる就業上の課題と向き合い、ノウハウの共有を含めた就業形態の整備を実現する流れを作るため、活動するべきと考えています。

  • 自分自身とアバターをブランド化・IP化する働き方について

  • プラットフォームに依存しないアバターでの従業形式について

自分自身とアバターをブランド化・IP化する働き方について

リアルの本名・キャリアと結び付かない形で自分自身を演出し、仕事を行うことは、これまで芸能界等の特殊な世界でのみ行われてきました。
しかし、インターネット・SNSの普及をはじめとする時代の変化により、徐々に私達の生活の中でも、スキルを活かしてリアルとは違う名前・ブランドを演出しての仕事を行うことが現実的になりつつあります。ペンネーム・アイコンを使った文筆業など、キャラクター性と成果物を組み合わせて自分自身をブランド化していく働き方は、決して極端に新しいものではありません。その流れの中で、私たちは名前やアイコンだけではなく、自分自身が3DアバターをVR空間の中で身に纏い、その所作を共有することが可能な時代を生きています。今日には「リアルとは違う自分による接客」を軸にした、バーチャル接客業が生まれることになりました。

バーチャル接客業の一つの強みは、現実にはありえないシチュエーション・アバターでの接客が、リアルな3D空間の中で実現されることです。
その強みを活かすため、バーチャル接客業の従事者は、特性上リアルとは違った自分自身をキャラクター化・アバター化して働く場合が多くあります。
こういった働き方は、単なる表現行為にとどまらず、本人のリアルな接客技能を活かしながら就労のアクセシビリティや地方格差に対する一つの解答として機能し、大きな可能性を秘めていると考えます。

一方で、現実的な仕事として、安心して長くキャリアを積み上げるためには、いくつかの課題が残っています。

  • 契約終了に伴い、企業が自分自身の演じていたキャラクターのIPを保持する結果、自分自身の仕事と結び付いた名義・容姿を失うリスクがある

  • キャラクター性維持のため、契約形態により、自身の活動実績等をキャリアとして公表することが難しくなる場合がある

  • 契約先プラットフォームがキャラメイクサービスなどを利用している場合、外見等に対するデータ・著作権の存在が自分自身だけでなく、契約先企業にもコントロールが不可能になる

これらの課題は、自分自身の接客業提供者としてのキャリアが契約先企業に対して完全に依存し、容易に一蓮托生となってしまうリスクと隣合わせであることを示します。
類似の業種の中でも、VTuber等1対多で短期間に多額の分配を受けることのできるビジネスモデルであればこれらの契約は課題を抱えつつも、双方にとってリスク・リターンが現実的な内容として成立する可能性はあります。
しかし、1対1の接客業であり、物理的な接客時間に対する時給的概念で業務を行うバーチャル接客業従事者にとって、こうした契約形態は長期的な契約に対するマイナス要因となることが考えられます。
そのため、VR風俗店X-Oasisではバーチャル接客業従事者自身がIP・アバターを所持するという仕組みを採用しています。
こういったビジネスモデルの浸透・議論の起こりうる環境を整備していくことで、将来的にバーチャル接客業を支える従業員の人口を支えたいと考えています。

プラットフォームに依存しないアバター・IPの取り扱いについて


前項で懸念を示したアバター・IPの問題を解決するためには、バーチャル接客業従事者・プラットフォーム提供者の双方がサービス設計段階から、汎用性のあるアバター・IPの取り扱いを意識する必要があります。

3Dアバターを個人が所有できるようになり、VRSNSやVTuber活動を通じて個人がVTuber等の活動を行うことがそもそも増えている時代背景の中ではありますが、業務的に3Dアバターを活用し、長期的にユーザーを飽きさせない価値を提供し続けるためには一定の規格化が必要と考えます。

まだまだ3Dアバターに対する編集コスト・運用コストは高いのが現状です。
そのため、バーチャル接客業従事者のアバターは「最初から衣装などを含め特定の用途にフォーカスしたアバター」となることが多く、自分自身でキャラクターのIPを持っていたとしても、前項と同じように自身のアバターには特定の活動にフォーカスした機能・衣服のみしか実装されていないため、実質的に再利用性がなくなってしまうといった事態が起こることが考えられます。

そのため、X-Oasisで採用している「VRoid Studioを用いてカスタマイズ性を担保したVRMアバター」等、業界内で価値を生み出し続けるために必要なカスタマイズ性を確保しつつ、現実的な形でバーチャル接客業従事者自身がIP・アバターを所持しながら長期的にメンテナンスを行うことのできる規格であることが議論され、アバターを利用した接客業のデファクトスタンダードが策定されていくことの推進力となりたいと考えています。

提言・推進理由のまとめ

上記2点を踏まえ、バーチャル接客業の長所を活かし、長期的かつ具体的なキャリアとして、アバターを使った働き方を提言できるよう、バーチャル接客業従事者が自身のキャラクター・アバターIPを保持できる働き方について実績の積み上げを行っていくと共に、ノウハウの発信や、デファクトスタンダード策定等に関わっていきたいと考えております。

このような手段と目的を持って、情報発信を行い、バーチャルな働き方を推進する各種NPO法人等への加盟等を通じて、社会的貢献を行い、社会的承認を積極的に頂く方針で前進していくことと致しました。
また、現在弊社が提供しているサービスがR-18サービスであることから、表現の自由・表現規制に関する問題についても、唯一の最前線の当事者として、加盟先法人とやり取りを続けていく所存です。

更新の頻度は多くないと思いますが、またステージが変わったり、当記事の目的に対して進展がありましたら、Note記事にてご報告させて頂きます。
この場を借りまして、バーチャル接客業に対する期待から弊社を応援して下さっている関係者皆様にお礼申し上げます。

株式会社ファントムコミュニケーションズ Karin

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