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知らないことはわからない

日々、調剤薬局で投薬業務をしていると、ふと隣のブースの会話が気になることがある。

「在庫の関係で今回はフルニトラゼパムを先発医薬品でお渡しします」
そう言って患者にサイレースを見せた。
患者の怪訝な雰囲気を私は感じた。その患者はもう何年と同じ薬を飲んでいる。投薬しているのは新人の薬剤師。

なぜ患者はフルニトラゼパムの先発品がサイレースであることを不審に思ったのか?

ここでピンとくる方はくるだろう。
その患者はフルニトラゼパムの先発医薬品はロヒプノールと覚えていた。
そしてジェネリック医薬品をずっと服用していて、久しぶりに先発品としてサイレースを渡された。
ロヒプノールと思っていたのにサイレース?
当然、説明がなければ混乱しても仕方がない。
そして現在、新人薬剤師にロヒプノールについて教えていることは少ないと思う。なぜならもう処方されない薬の名前だからだ。
知らないことはわからない。

ここでロヒプノールが発売中止になるまでの流れについて確認していきたい。
2017年4月1日、中外製薬が日本で販売中のロヒプノールの製造販売承認をエーザイへ移管承継した。(中外製薬は旧日本ロシュ)
その後、エーザイが販売していたサイレースと一本化のためロヒプノールは2018年8月に発売中止。

一時期、エーザイからロヒプノールとサイレースが併売されていた時期がある。その時はなんでそんなことをしているのだろうと思っていた。それから間もなく、ロヒプノールの方が名前が有名だと思うのだが、サイレースだけになり自社製品の名前を残したのだなと感じた。

ロヒプノールと言うと思い出すことが2つ。

2015年6月に昏睡強盗で薬科大学生が逮捕されるという事件。
その事件の影響のためか2015年12月に白色錠から青色錠へ変更になった。今ではロヒプノールなどフルニトラゼパムを飲食物に混入すると青色に着色する。某薬剤師マンガでこれを用いたシーンがあった。

1994年4月5日に自殺したカート・コバーンがシャンパンとロヒプノールの併用して過剰摂取していた。ちなみにロヒプノールはアメリカでは持ち込み禁止の医薬品になっている。


薬剤師を20年くらいやっていきて感じたのが、医薬品の販売中止や用量用法の変更、併用注意の変更などの歴史を知った方が面白いし役に立つのではないかということだ。これからは薬の歴史について思いついたことを書いていきたいと思う。

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