【MHWilds】モンスターハンターワイルズの方向性について感じたこと
2024.10.29 ~ 2024.11.4にかけて実施されたOBTに参加してみて、ワイルズってこういう思想で作ってそうだなと感じたことをまとめてみます。
初めに、筆者は無印MHの頃から本作シリーズを知っており、ポータブルから本格的に参入、一部プレイしていない作品があるもののほとんどの作品をプレイ済みで、最近のRise、Worldも派生作品も含めてプレイ済みです。
ちなみにメイン武器は今話題のランスとスラアクです。
そのような視点から、最新作ワイルズのOBTをプレイした際に、過去作との違いや変化を感じ取れた点を紹介・考察します。
①ゲームスピードの抑制を目指している?
まず、OBTチュートリアルのチャタカブラと遭遇し、交戦を始めたときの第一声は「えっ、おっそ!?」でした。
まず、こちらの動きが少し遅くなったなと感じたのもありますが、むしろチャタカブラの攻撃に対して遅いと強く感じました。
ジャストガードからの派生はどんなものだろう?と早速試そうとガードを合わせようとしても、あまりにもチャタカブラの攻撃が遅すぎて全てディレイ攻撃のように感じられてしまい、全然タイミングが合わなかったのです。
チュートリアル用の最初のモンスターだから特別にそうである可能性があったことに加えて、筆者はフロムゲーが好きなのでもっと過酷なアクションゲームに慣れきってしまったからというのも一因かもしれませんが、客観的に判断しても直近の作品と比べてゲームスピードが遅くなったと考えています。
これは最終的に第1回OBTの目玉モンスターであるレ・ダウに対しても同じ感想を抱いたことで確信できました。
まず、ほとんどの攻撃は「見てから」「区別・判断して」「確実に対処が間に合う」ものでした。
そんなのアクションゲームとして当然のことじゃないかと思われがちですが、そうではないものは意外なほど多く、人気の高いMHシリーズとて完璧ではないと考えています。
ハンターが強力な必殺技やワイヤーアクションを手に入れて半ばチャンバラスポーツ化したRiseでは、新たに登場したモンスターもそれに対抗できる動きを身に着けており、中には毎回見てから余裕を持って確実に回避可能と言うには難しい攻撃も含まれていたと記憶しています。(あまりやり込めてはおらず曖昧)
一方、ワイルズでは明らかに機動力が低下した武器種があったり、攻撃モーションがわずかに鈍化していると同時に、モンスター側も遅くなって一挙手一投足を見極めやすくなっていると感じました。
OBTに登場したモンスターが弱いものばかりだったので偶然そう思えたという可能性はありますが、かのリオレウスに代表される大型の飛竜種かつ新モンスターであるレ・ダウでさえもあの様子であったことから、偶然ではなく全体的な既定路線であるように思います。
①-1 アクションゲームにおけるゲームスピード
ここで、自身の様々なゲームのプレイ体験を通じて感じていたアクションゲームとゲームスピードに関する問題意識を共有します。
もはや近年と言えないほど昔の話になりますが、ゲームハードの進歩と共に、キャラクターが高速で戦場を駆け巡り、目にも止まらぬ速さのコンボを繰り出す「スタイリッシュアクション」とか「ハイスピードバトル」などと謳うアクションゲームが増えました。
かくいう筆者も最初はそれらのゲームが新鮮で楽しめていたのですが、しばらく遊ぶうちに、そうしたゲームの「底の浅さ」が気になるようになっていました。
その類のゲームにおける敵の攻撃は、得てして「見てから反応することが困難」であったり、場合によっては「ほぼ不可避」であるものが多く含まれます。そうでなければ高速で縦横無尽に動き回れるプレイヤーには容易に避けられてしまい、意味をなさないからです。
それに対抗するプレイヤー側は、敵が回避困難な攻撃を持ち合わせているのであれば、できるかわからない回避のために手を止めるくらいなら被弾覚悟でゴリ押し、自分が力尽きる前に敵を倒すことが最善策になります。
見て・避けてという要素が完全になくなるわけではないものの希薄になり、大部分は休む間もなく攻撃を続けるのがベターというゲーム性になっていくので、悪い言い方をするとスタイリッシュだのハイスピードだのといった小綺麗な謳い文句とは裏腹に、その実態は「ほぼ連打ゲー」に近くなるケースが多いということです。
一例としては、ハンティングアクションというジャンルを確固たる地位にしたモンスターハンターが現在も大流行しているなかで、それに倣ったゴッドイーターが流行らず消えていった一因は、少なからずそういうところにあったのだろうと個人的に考えています。
要するに、アクションゲームにおいてはある程度ゲームスピードを抑えた方が、見切って・避けて・攻撃する、という駆け引きを楽しめるレベルに整えやすいのではないか、ということです。
前置きが長くなりましたが話題を戻します。
MHシリーズは昔から重厚なアクションが特徴で、前述のとおり敵の攻撃をしっかり見切って回避し、的確に弱点を狙って反撃する面白さが評価されてきたと認識しています。
しかし、シリーズを重ねるごとにハンター側の攻撃性能・機動力が増していったことに比例してゲームスピードも少しずつ増しており、敵の攻撃をじっくり見て捌くことよりも、ひたすら強い行動を擦り続けて削り切るのが主流になりつつあったと思います。
実際のところ、Riseでは受け身からのリカバリーが容易で死のリスクがほとんどない都合もあって、防御行動を軽視した連打ゲーに近づいていたと感じており、それが退屈で長く続かなかったことを覚えています。
それに対し、ワイルズではそのような変化に歯止めをかけ、初心に帰るようにアクションをより重厚なものとし、ゲームスピードを抑えたい意図があったのではないかと今回のOBTで感じた次第です。
今作の大きな特徴となっている集中モードによる弱点狙いや、敵の攻撃を見切ってジャスト回避・ガードで捌いてカウンターという操作はゲームスピードが速いほど難しくなる操作であることも、意図的にゲームスピードを抑えているのだろうと解釈した裏付けになっています。
②リスク・リターンは度外視?
言うまでもありませんが、リスク・リターンの考え方を端的に言えば「リスクの大きい選択肢ほどリターンが大きい」あるいはそうであるべきとする考え方です。
これはゲームに限らず日常においても常識的な考え方であり、言葉を知らずとも直感的に理解されているレベルのことですが、不思議なことにワイルズではこれに当てはまらない事例が散見されるようになりました。
今回は監修が及ばずこうなってしまっただけなのか、はたまた今後のポリシーとして決まった方針なのかは定かではなく、ひょっとしたら現時点では歪に見えても将来的に実装されるスキル等を全て加味した最終装備でバランスが良くなるように調整されている可能性もあるため、今後の動向を注視する必要がありそうです。
ここではOBT時点での例をいくつか列挙しますが、実際はそれぞれが相互に絡み合っていたりするので適切な括りにできていない点はご容赦ください。
②-1 遠距離攻撃と近距離攻撃
一般論ですが、ゲームにおける遠距離攻撃は、敵の攻撃範囲外から一方的に攻撃できるため、その安全性を加味して近距離攻撃よりも威力が劣るように設定されたり、攻撃回数を著しく制限することで抑制されます。
そうでなければ、わざわざ時間を費やして敵へと駆け寄り、危険を冒して敵の間合いへと踏み込み、敵の攻撃を全て避けながら直接叩く必要がある近距離攻撃の価値が皆無になるからです。
一方、ワイルズのOBT環境では、遠距離攻撃の中でも弓が特に強く、レ・ダウTA(落石なし)でも群を抜いてトップの結果となっていました。
スキル依存度が高そうで属性ダメージが主力であるはずの弓が、OBT環境のスキルと無属性の武器でこの結果ですから、仮に現状のバランスのまま正式に発売されたとしても最終的な評価はそう変わらないか、さらに格差が広がる可能性すらあると予想されます。
正直なところ、遠距離攻撃の方が如実に強いという現象はワイルズから始まった話ではないことは知っていますが、前述のゲームバランス上の都合を加味して客観的に考えると、やはり適切ではないと思うのが一般的なゲーマーの感覚であることは間違いないでしょう。
最終的にガンナーは1撃でほぼ即死のような環境になるからこその火力なのかとも思いましたが、通常の回避行動の無敵時間では回避しにくかったよう持続の長い攻撃も緩い判定でジャスト回避ができるようになったり、ランスより頑丈なガード性能でジャストガードができたりするので、脆弱さの代わりに許された火力という説明は過去作よりも一層難しくなったと考えています。
②-2 軽量武器と重量武器
こちらも一般論の話からですが、素早く動けて手数の多い武器よりも、鈍重で手数が少ない武器の方が単純な火力は高く設定されるものです。
移動が遅いと敵の間合いから逃れたり、逆に自分の攻撃が届く間合いに潜り込むのが難しくなるし、攻撃が遅ければ安全に攻撃を差し込めるチャンスが少なくなるし、攻撃動作をキャンセルできない硬直時間が長いが故に敵の攻撃を回避することも難しくなるからです。
一方、ワイルズOBT環境においては、一部の武器間でこれに当てはまらない事例が見られるように(というかより目立つように)なりました。
一例としては、鈍重で攻撃一辺倒のスラッシュアックスの火力が低いとされている一方で、コンパクトな攻撃モーションで移動も素早く、各攻撃からすぐに派生できる見切り斬りによる無敵回避を備えた太刀は高い火力を備えている、といった具合です。
一応、スラッシュアックスも相殺やカウンターが可能になりましたが、攻撃モーションが遅い都合上タイミングを合わせるのが難しかったり、成功してもなぜか手痛い貫通ダメージがあったり、カウンターの威力も高くない、と惨憺たる有り様でした。
太刀があの基本スペックであの見切り斬り~気刃大回転斬りを備えているのであれば、スラッシュアックスの相殺やカウンターも鈍重さとタイミングを合わせる難しさに見合うだけの性能は最低限備えていてほしいところです。
こうした点はゲーム開発に関して素人の目線でも不公平に思うようなことなので、特に解消を期待したいところです。
開発&ユーザーからの寵愛を受けている太刀が強すぎるというのが問題の本質なのかもしれませんが、安易に出る杭を打つようにナーフされても選択肢が狭まるだけなので、相対的に劣っている方を底上げしてもらう方が遊びの幅が広がると思います。
②-3 攻撃重視と防御重視
武器にはそれぞれコンセプトがあり、攻めを強みとした武器と守りを強みとした武器(主に盾持ち)があります。
一般的に、火力が高いのは当然守りを捨てた前者であり、後者は守りと引き換えに火力が控えめになるはずです。まさにリスク・リターンの考え方そのものですね。
一方、ワイルズではジャスト回避・ジャストガードからのカウンターと相殺が多くの武器に展開されたことで、その関係性が乱れてしまったのではないかと感じました。
その被害者となった筆頭といえば、もちろんランスです。
MH無印より堅牢な防御を強みとしており、モンスターの苛烈な攻撃のさなか、どっしり構えて他者が回避に専念する瞬間でさえ反撃が可能という点が強みであり、それによって平時のDPSは低くても実戦におけるDPSの差は縮まっていたと思います。
それがジャスト回避・ガードからのカウンターや相殺がほぼ標準搭載されたことで、敵の攻撃をいなして即反撃できる点はランスだけの強みではなくなったわけです。
それだけならまだ良かったのですが、さらに厄介なのはジャスト回避・ガードからのカウンターや強化要素にも大きな武器間格差があったことです。
ジャスト回避・ガードを成功させることで武器が強化されたり、強力なカウンターに派生する武器があるなか、ランスは盾で軽く小突くだけの反撃が自動で発動するのみで、その後に繋げられる返し突き・大返し突きなどの派生技も尽く平凡という有り様でした。
多くの武器にジャスト回避・ガードからのカウンターや相殺が普及して単純に地力が強化されていく流れの中で、ランスは最大の強みであった防御面でのリードを売り渡し、代わりに最も貧弱なカウンターを買わされるという不当な取引を強いられたわけです。
それも、元々カウンターを主力とする武器であったにも関わらず、と考えると益々理不尽に思えてきます。
周囲の環境が大きく変化して攻防両面で進化していく中で、ランスには「守りが堅いのだから火力は低くても良いだろう」という古い考え方がそのまま継承されて時代錯誤になってしまった形といえるでしょうか。
しかし、ランスとほとんど同じ防御性能を持つガンランスは、ジャストガードから派生する強力かつ派手なカウンターを与えられているため、尚更度し難い状況になっています。
全体を横並びで見たときに違和感が目立つことはこれまでも大小様々にあったものの、ここまで極端な差はなかったと記憶しています。
現時点では、各武器の調整班がそれぞれの匙加減で調整したものがほぼそのまま出てきているというわけでもなければこうはならなくないか?と邪推してしまうのもやむなしのバランスでした。
②-4 メリットとデメリット
異なる武器間の例だと他の項目と重複する部分もあるため、ここではひとつの武器内で起こっている問題をピックアップします。
一般的に、何らかの十分なメリットがあれば相応のデメリットを伴うもので、仮にメリットしかないものがあるのであれば、それだけを使えば良いことになります。逆にデメリットしかなかったり、デメリットに釣り合わないメリットしか得られないのであれば選択肢になり得ません。
この問題が実際に発生してしまった例が、弓の新技「導ノ矢」です。
簡単に説明すると、マーキング弾を撃ち込むと続けて放つ矢が自動的にそこへ向かって飛んでいくというもので、要するにホーミング性能を伴った矢が放てるという新技です。
弓を扱う技術(≒弓の難しさ)の真髄は、ボウガンよりも危険な間合いで瞬時かつ的確に狙いを定めることで、その難度に見合った火力が約束されていたわけですが、導ノ矢はその手間を踏み倒せる攻撃ということになります。
メリット・デメリットの考え方でいくと、オートかつ必中になるのだから、簡単になる分だけ威力が抑えられたり、距離の調整が難しくなるのだろうと考えるのが道理ですが、実態はそうではありませんでした。
なんと、普通に矢を放つより威力が高まり、さらにガンナーを悩ませるはずの適正距離の概念さえも無視してしまうという破格の性能だったのです。
ざっと反響を調べてみると、これにはより強くなって利を得たはずの弓使い当事者さえも苦言を呈している様子でした。
これまではエイムこそが腕前を発揮して他者との差別化を図れる要素であり、弓の楽しさそのものだったはずのエイムを忘れて導ノ矢を連射することが最適解になってしまったわけですから、この先が不安になるのも当然と思います。
エイム精度への依存度が高すぎて上級者と初心者の火力差が著しいといった裏事情があったとすれば、あえて火力の大半をオートエイムの導ノ矢に集中させたという可能性もありますが、その真意を知りたいところです。
もう一例はランスの「溜めカウンター」です。
突き3回の後から派生できる新技で、同じ状況から派生できる行動として同じく新技の「三連突き」があります。
溜めカウンターは成功すればランスの中でも最高倍率を誇る攻撃手段になりますが、敵の行動を瞬時に予見して備えるカウンター技の性質に反して事前準備が長く、溜め中はなぜか無防備となり、敵の攻撃を相殺するようにジャストタイミングで放つことで初めて成功するという全武器を見渡しても別格に高難度な技となっています。
事前準備が長くて咄嗟に放つことができないため、多くの場合は敵の行動を見てから使うのではなく、きっとあの攻撃が来るだろうと予想して「置いておく」ように使う運用になります。
そのため、思い通りの攻撃が来なくて不発に終わることもあれば、予想外の連撃が来てフェイントに釣られるように被弾してしまうケースが多々あります。マルチプレイ中に至っては、そもそも次に自分の方を向くかどうかさえわかりません。
さらに、思い通りの攻撃が来ても放つタイミングが早ければ倍率は伸びないままに手痛い反撃が直撃、放つタイミングが遅れればノーガードなので一方的にダメージを負うことになります。
このように、不確実性が高くて失敗時の損失も大きい割にそこまで目を見張るような威力でもないため、メリットとデメリットが全く釣り合っておらず、代替手段となる三連突きをしておいた方が確実で特にリスクもなく無難だと考えるランサーが多かったのがOBTの現状です。
少し話がずれますが、元々立ち回りの要であったカウンター突きを没収された上でこの仕打ちであるため、周囲が派手な攻撃手段を手に入れていくなか、ランスだけMH黎明期に戻ったかのように愚直に基本動作を繰り返すしかなくなったという点で強弱とは無関係の「面白くなさ」が別途問題視されています。
これは他の問題のようにちょっと数字をいじれば解決できる問題ではないため、発売までの短い期間中では解決が見込めなさそうという点も悲壮感を煽っているようです。
③総括
個人的な気づきをまとめてみましたが、元々Xでは書ききれないことを書くためだったので長文になってしまいました。すみません。
後半は既にX等で騒がれているようなネガティブなことを多く書くことになりましたが、個人的にはグラフィックやアクションの進化等も含めて全体では満足している上で「ここがこうだったらもっと良かったな」というポジティブな意味での見解だと思ってください。
第2回OBTもしくは製品版での変化を楽しみに待ちつつ、何か気づきがあって、あと気が向いたらまた感想を述べようかなと思います。