#1 アイロンがけ
私がアイロンを引っ張り出す時は
服を売り出す時くらい。たまーに使う。
今日も売りに出したい服を黙々とアイロンがけをしていた。
去年までは着ていたのに似合わなくなったなぁとか、アイロンがけをしている最中の香りがクリーニング屋さんみたいで好きだなとか考えながら黙々とかけていた。
ふとアイロンをかける母の姿がまぶたの裏に見えた。
母は毎日アイロンをかけていた。
父のワイシャツを黙々とかけていた。
あの時なんとも思わなかったけど
自分でアイロンがけしろよと悶々してきた。全くしょうがない男だな。
私は自分でアイロンがけする男と結婚するぞ、と決意した時「あれ?」ともう1つの姿が見えた。
それは自分の制服をアイロンがけをする母の姿。調理師の母は自分の白衣やエプロンにも毎日丁寧にアイロンをかけていた。
いや、もう敵わないな。仕事着のシワを丁寧に伸ばし、そして仕事に誇りを持っている。
私は、誰かが洗濯をしてその又誰かがシワを取ったものを何とも思わず着ている。なんなら「洗濯しなくてラッキー」って回収袋にぽーいとぶん投げている。
一人暮らしを始めるために家電屋さんで必要な物を揃えているとき、そういえば
冷蔵庫 電子レンジ 炊飯器 アイロン … とメモをしていた。
アイロンかぁと渋った私を見て
「必要なものよ」と言っていた母の言葉が数年時を経てわかったような、気がする。
もう少しいい頻度でアイロンと服と向き合ってみようなと思いながら、やっぱり服を出品する時だけかなとめんどくさがりな私が囁く。
所作に現れる誇り、私はそんな母を尊敬している。
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