推し香水ならぬ推しから贈られた設定の香水を作った話【前編】
今、一部のオタクの間で推し香水なるものが流行っているらしい。
推し香水とは、好きな芸能人やキャラクターなど所謂‘’推し‘’をイメージした香りの香水を指す。
推し香水は調香師さんに推しのイメージを伝えて調香してもらうもの、既存の香水の中から選んでもらうものまで様々だ。
ここでは、私と推し香水の出会いから届くまでの一連の流れを紹介していく。
最初にお断りしておくと、推しの名前はこの記事では一切出さない。推しに迷惑をかけないために、自分の保身のために。
1.推し香水との出会い
推し香水の存在は『裸一貫!つづ井さん』②の巻末の書き下ろしで知っていたが、そのときは「へー、いいなあ。楽しそう」くらいの感想で自分が作ることまでは考えていなかった。
なぜなら、私は匂いの地雷が多いからだ。バニラやココナッツなどの甘ったるい香りは吐き気を催すほど苦手だし、コーヒーの香りも頭痛が引き起こされるので好きになれない。
もうひとつの理由として、推しの好みと私の好みが恐ろしく合わないからということが挙げられる。
以前とある企画で、推しが自分のイメージ香水を作ったことがあった。出来上がった香りは尽く私の地雷の香りで、その時点で推しと同じ香りを纏うことは断念した。
(推しが普段使用している香水は私でも平気そうな香りだったが、廃盤商品のため購入は叶わなかった)
香りにさほど興味なく生きてきた私であったが、ある日推し香水についての記事が目に止まった。
地雷の香りが多いにも関わらず、この記事を読んで私は猛烈に推し香水が欲しくなった。
2.お店選び
1で紹介した記事の読んだ後、逸る気持ちを抑えられず推し香水を頼むとしたらどこがよいか探し始めた。
私は下記の条件で探した。
・通販に対応していること
・香りが気に入って瓶が空になっても、同じものを再度オーダーできること
・自分がイメージしている香り、避けてほしい香りなど事細かにオーダーできること
・手頃なお値段であること
これらの条件に当てはまるのが、記事でも紹介されているDANCEさんだった。
条件には挙げていなかったが、DANCEさんは推し香水を数多く手掛けていて推し香水に対する偏見などもなさそうなのも高ポイントだった。
3.推し香水から推しに贈られた設定に変えたきっかけ
もし頼むのであれば、DANCEさんにお願いしようというところまでは決めたが、私の中で一つ問題が立ちはだかった。
それは権利問題だ。
私の推しは実在する。実在する人の名前を出してオーダーとなると、様々な権利的にはよろしくないのではないだろうかと。(記事ではがっつりキャラクターの名前が出ているが、架空のキャラクターであっても同様に権利問題はある)
このことが気がかりで、作りたい気持ちを抱えながらも実行に移せずにいた。推し香水のレポを読んだり、DANCEさんのTwitterを拝見したり悶々とした日々を過ごしていた。
そんなある日、DANCEさんのTwitterを遡って拝見しているとこのようなツイートを発見した。
推しから贈られた設定とな???????これはよいのではないか????????
「推し香水じゃなくて、オーダー時推しの名前を出さずに推しから贈られた設定の香水いいんでない!?どう思うよフォロワー!!」的なことをTwitterのフリートで問いかけてみたら、数名のフォロワーから好反応があった。よし、これは頼もうと決心する。
そうなると、設定が必要になってくる。妄想が膨らむ。
4.推しと私が知り合ったきっかけ(妄想)
妄想爆発なので、そういったものが苦手な方は読み飛ばしてほしい。
推しが私の推しであることは変わらない世界線ではあるが、私という人物は完全に別物だ。
限界オタクの戯言なので、読む勇気のある方はサラッと読み流して欲しい。
私は、関東のとある図書館で働くオタク。
常連さんに、推しの嫁(以下嫁子さん)らしき方がいらっしゃる。らしきどころかカードに記入されているお名前・ご尊顔からして嫁子さんであることは確実だが、職務中のため「旦那さんのファンです」だなんて話をするわけにもいかない。嫁子さんが来館されたときは、感情を押し殺して淡々と仕事をこなしていた。
ある日仕事が終わって帰ろうと職場の外へ出たところ、嫁子さんとばったり会った。職場外で利用者に会ってしまうと多少の気まずさが発生するものだが、これまでの利用者との遭遇とは比にならないほど気まずかった。なぜなら、私と嫁子さんは同じトートバッグを持っていたのだ。それも、私の推しグループのグッズで販売されたものだ。
嫁子さんとバチッと目が合う。私は一瞬で目を逸らしてしまったが、嫁子さんの表情からは驚きが読み取れた。とりあえず、その後は空を見つめた。終わった。気づかない振りをしてこの場を去るか、はたまた思い切って声を掛けてみるか。この後のシミュレーションを3秒くらいの間に様々考えてみたが、最善の方策が見つからない。
「推しグループ、お好きなんですか?」
嫁子さんの透き通るような声が、私の耳に流れ込んできた。その声でハッと我に返る。3秒考えを巡らしている間に、嫁子さんは私の目の前までいらっしゃっていた。旦那さんのファンであること、すぐそこの図書館で働いている者であること、本の好みが嫁子さんと似ていることなど聞かれてもいないことまでベラベラ話してしまった。
「いつも利用させていただいてとても助かっています」
とにこやかに接してくれた。こんな素敵な奥様なら、推しもさぞかし幸せなことだろうと余計なことを考える。
却ってこちらこそご利用ありがとうございますと伝え、嫁子さんをいつまでも引き止める訳にはいかないと思ってお暇しようと帰る素振りを見せた。すると嫁子さんの口から、願ってもない言葉が発せられた。
「ちょっと待って!今お時間大丈夫?うちの人にそこまで車で乗せてきてもらっているの。よかったら、会う?」
嫁子さんと会話できるだけでよかったのに、世界に光が満ちてしまった。推しとは夢とライブで会えるだけでよかったのに。認知されたいと思ってしまった。お言葉に甘えて、私は推しと初対面を果たしてしまった。
初対面のときは気持ちが昂ってしまい、推しとどのような話をしたか記憶にはない。鮮烈な記憶として残るのは、推しからお線香のような香りがしたことだった。
この出来事がきっかけで嫁子さんと連絡先を交換し、推し一家との交流が始まった。
(推しとの連絡先交換は、たかだか1ファンごときが烏滸がましいので丁重にお断りした)
結構事細かに考えたところで、自分何やってるんだろうとふと冷静になってしまった。これまたそのときの気持ちをTwitterのフリートに投下すると、フォロワーが励ましてくれた。
そこから暫くまた悶々と考える日々が続いたが、フォロワーの後押しもあって遂にオーダーをした。
5.実際にオーダーをする
DANCEさんでは、大まかには下記の中から組み合わせてオーダーができる。
・ボトルのサイズ(10ml,30ml)
・ジュエルあり、なし
(ありを選択すると香水の中にさざれ石を入れてくれる)
・箱あり、なし
・スペシャルギフトボックス
私はその中から30ml、ジュエルなし、箱無しで選択してオーダーした。
推しから贈られた設定なのでいかにも贈り物っぽくスペシャルギフトボックスを選択しようとも考えたが、そこまですると、また冷静になったときに虚しくなりそうなのでやめた。
誰をイメージして作るものなのか、性別、年齢、血液型など確固たる事実のところは簡単に答えられるが、他の項目を答えるのが案外難しい。
自分を知らない人に向けて自分について説明するといった類のものは、私の苦手分野だ。だから私は新卒のときの就活は失敗した。
色に関しては、答えやすいは答えやすいようで答えにくい。
私は緑が好きだ。でも、好きな緑とそこまで好きじゃない緑がある。その好きな緑の色を言語化するとしたら、何という名前なのか。
好きな果物は?普段あまり果物は食べないが、果物を食べる機会があったら何が嬉しいか。
ファッションだって、自分の中でこういったファッションが好きだという自覚はある。しかし、それが何というジャンルなのか。
自分の好きなものとは何なのか。自分のことを自分が1番わかっているようで、分かっていない。
自分自身と向き合って、以下のようにフォームを入力した。
DANCEさんは推し香水のプロだ。数多のオタクたちの性癖を聞かされており、推しから贈られた設定の香水なんて何とも思わないだろう。
イマジナリー推しは苦手な香りを配慮してくれるだろうし、想定しているイメージも漠然としながらもゴリゴリに希望を書いてカウンセリングフォームを送信した。
6.まとめにならないまとめ
オーダー後、例のごとくTwitterのフリートにてオーダーしたことを報告した。
すると、ほぼ毎回同じフォロワーから反応がある。ありがとうフォロワー。
今のところ一番楽しかったのは、推しとの関係性・贈られたシチュエーションを考えたところだ。
オーダーに漕ぎつくまで何度か冷静になってしまったが、こういうことは冷静になってはいけない。
オーダーしたのは6月28日の晩。到着まで約3ヶ月なので、恐らく9月下旬くらいに届くだろう。
香水が届いたら、後編として改めてnoteにまとめようと思う。
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