持続可能性の低い、内藤市長の保育政策
依然として厳しい、徳島市の保育所入所事情
徳島市では10月23日から来年度の保育所・認定こども園等の利用申込みがはじまりました。
申し込み書類がダウンロードできるようになるなど若干の改善はあるものの、希望する保育施設に入れるかどうか不安を抱えた家庭も多いようです。
令和2年3月議会で議決された教育保育施設等整備費補助事業。
厚生労働省からの国の補助を受けることにより開園、増設予定だった認可保育所は8園あり、予定では令和3年4月には496人の定員枠が拡大される予定でした。
けれども内藤市長の「自らの政策判断」による事業見直しにより、1ヶ所を除いて白紙に戻されました(※)
唯一補助金を受けることができたその園は、今年度の新規入所保育児童の予定数は120人であり、来年度の予定は126人。結果として6人増えただけです。
また徳島市が来年度新しく認可する保育所・認定こども園は4園。ひとつは保育所から認可こども園に移行した園で、その施設は来年度の入所人数は増えていません。そして認可外から認可になる保育園が1箇所と、新設となる保育園が2箇所あります。
けれども「認可保育園」という区切りの中で見てみると、来年度増加する入所人数は、合計で64人ででした。
そして特に激戦と言われる育休明けの1歳児の枠については実際に増えた保育所が2つで、増加する受け入れ人数はたった7人です。
よって、例年以上に希望する保育施設に入園することが難しくなるのではないかと予想されます。
(※)
当初予定されていた8施設の施設が整備されると496人の定員枠が増える予定でした。けれども内藤市長が7つの事業所の整備を取りやめたため、481人の定員枠がなくなり、残ったひとつの事業所の15人(うち1号認定9名含む)だけ増えるにとどまりました。
(参考記事)
内藤佐和子さんの選挙事務所の地主さんとの関係は?
https://note.com/pftokushima/n/n7d863d3af044
ソフトの充実だけで解決できるのか?
「待機児童の解消には、保育士の確保が何よりも重要」と9月議会の所信表明で、教育保育施設等整備補助事業は行わず、代替案として保育士確保に主眼を置くことを強調した内藤市長。
10月23日付の徳島新聞の報道によると、保育士が確保できれば、最大で市立保育所・こども園の定員を上回る358人の受け入れが可能になるといいます。
けれども慢性的に保育士の人材不足が生じていることを考えると、人材確保を見越した政策は不確定要素が多く、待機児童を解消する政策として弱いと言えるのではないでしょうか。
苦戦する保育士の求人
事実、今年度徳島市内の私立認可保育所・認定こども園49施設が募集した保育士の数は104人だけれども採用できたのは90人(86%)、前年度は95人の募集に対して採用は78人(82%)と苦戦していることも、同じく徳島新聞で報じられています。
疑問が多い、県外からの保育士に50万円の一時金支給
また、内藤市長は保育士確保のため「県外から徳島に就職した保育士に50万円の一時給付金を支給する」と発表しました。そして20名ほどの利用見込みがあると言っています。
徳島県は保育士給与が全国平均からするとかなり低いという現実問題があります。厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、徳島県の保育士給料のランキングは38位で328万円です。
たった1度50万円を給付したとしても、根本的な低賃金は解決しません。
まして県外から移住してくるのであるならば、引越しや住居の準備費用だけで消えてしまうような金額です。
そもそも、全国的に保育士の給与水準が低い徳島市をわざわざ選んで、50万円の一時金を目当てに条件に合った人が県外から来てくれるかどうか、大きな疑問です。
また加戸悟市議は自らの「市議会だより」で以下のようにも述べています。
しかし「なぜ、一時金?」「なぜ50万円?」など、意味不明です。
なぜ保育士確保が大変なのか、それがわからずに行き当たりばったりで出してきた対策案だからです。
https://note.com/pftokushima/n/nacce4bae56f3
先進的な取り組み事例
1.松戸市の場合
例えば、千葉県松戸市では保育士を目指して指定養成施設へ通っている方へ毎月3万円の就学資金を貸し付を行っています。
千葉県で行っている貸付最大120万円とあわせて利用することで、最大192万円の貸付を受けることができ、保育士として5年間の勤務をすることで、返還義務を全額免除しています。
2.高松市の場合
また高松市では、潜在保育士が保育士として再就職した場合、就職準備金の貸付の増額や保育士宿舎借り上げ事業などを行っています。宿舎借り上げ事業は徳島市からも近い大阪市や神戸市などでも実施されており、県外保育士誘致のためには有効な事業だと考えられます。
待機児童を解消するためには、
もっと持続可能な政策が必要なのでは?
松戸市の取り組みは地元で保育士を養成し働き続けやすくするための仕組み、高松市の取り組みは県外から保育士を誘致して継続して働ける仕組みをつくる取り組みであり、保育士の満足度も高くまた持続性の高い政策だと言えます。
それと比べると「県外から就職した保育士に50万円を一度だけ支給」というのが恩恵を受けれる人が限定的で、かつそれが雇用の継続に繋がる可能性は「その人次第」となってしまい、安定した雇用を生み出すという点でも不安定な政策であると言えないでしょうか。
また県外保育士への一時金だけでは、既に勤務している市内の保育士からの反発が出る可能性も高いです。
山本市議とのオンライン勉強会でもこのような話も出ました。
9/6 自民党徳島市議団 山本武生市議とのオンライン勉強会
そして、雇う側の徳島市で保育施設を営んでいる方に話を聞いてみると「この50万円をもらう人を雇いたくない」と言ってました。
なぜかというと、例えば2人3人同時に雇った場合、徳島市出身者でそのままその施設に就職した方は50万もらえないんですね。
一方で同じタイミングで県外から就職した人は50万もらえます。
同じ仕事をしているのに、もらえない方はいい気分がしませんよね。
なので「雇えません」と言っていました。
こうしたことから、この「50万円の一時金を支給」という事による保育士確保は非常に難しいのではないかと感じています。
https://note.com/pftokushima/n/nde13fa207a25?magazine_key=m3804bb4aa6bd
県内に数多くいる潜在保育士が就職しやすくしたり、すでに県内で働いている保育士の県外への流出を防ぐために、まずはこうした県内保育士に対する継続した手当を手厚く行うなど、保育士がやりがいを持って徳島市で長く働ける仕組みづくりが必要だと思います。
そのためには、ハード・ソフト両面から改善をしていく必要があるのではないでしょうか。もちろん、国や県などからの補助金を有効に使って、徳島市の財政負担を減らすことも大切です。
それが行政の仕事であり、市長はリーダーシップを取って根本的に待機児童をなくす政策を進めていくべきだと、私たちは考えます。