内藤市長宛てに提出された「調査報告書」その内容や調査手法の信憑性は?
大阪の弁護士がまとめた報告書を徳島市が匿名で発表
8/20に徳島市は昨年度の教育・保育施設の整備などをめぐって市の職員に対して不当な要望や要求をした疑いがあるとして、弁護士による調査報告書を公表しました。
調 査 報 告 書
https://www.city.tokushima.tokushima.jp/shisei/mayor/mayor_press/press_2021/kaiken20210825.files/20210825-2.pdf
内藤佐和子市長宛に書かれたこの報告書を作成したのは、大阪の2名の弁護士。この報告書には20のケースで、市議3人が職員に不当な働きかけをした疑いがあると認定したとまとめられていました。
3人の市議の名前は匿名で発表されました。
このことについて報じた徳島新聞の記事ではこのようにも述べられています。
問題を浮き彫りにして再発防止や改善を図ろうとする市の姿勢は理解できる。しかし、報告書の内容や調査の手法には疑問点がある。
また、トリビューンしこくはこの2人の弁護士の報酬についてこのような発信をしていました。
総務委員会で内藤市長が実名を公表
8/31に開催された総務委員会では、出席した総務委員の市議から実名の公表を求める声が上がったそうです。
ちなみに、徳島市議会 総務委員は以下の市議で構成されています。
佐々木昌也(委員長)---徳島活性会議★
春田洋(副委員長)---朋友会★
藤田真由美---公明党★
岡南均---至誠会★
武知浩之---朋友会★
加戸悟---日本共産党
玉野勝彦---自由民主党
森井嘉一---自由民主党
委員会に姿をあらわした内藤市長は、匿名の3人の市議は自民党市議団の山本武生議員と須見矩明議員、それに共産党市議団の加戸悟議員と公表しました。
事の発端は昨年6月議会での岡孝治市議の代表質問
昨年6月議会で岡孝治市議が代表質問で「特定の第三者たちによる保育事業への過度な介入が行われたという疑念が払拭できない」と、市に調査を求めた事が発端となりました。
内藤市長寄りとされる朋友会、徳島活性会議、誠和会、至誠会の4会派(上記★印)が特定の第三者による事業への過度な介入があったかどうかについて、調査するよう、内藤佐和子市長へ申し入れました。
「刑事的な問題に発展する可能性がある」と記者会見で述べた内藤市長
その後の記者会見で、この4党派からの申し入れに対して内藤市長は
「調査を進めるうちに、刑事的な問題に発展する可能性がある」
と発言。
この発言に対し、報道各社から厳しい質問が投げかけられました。
▼記者会見の記録です
この記者会見では以下のようなやりとりがなされていました。
2020/6/30 内藤市長記者会見
市議会4会派からの調査申し入れについて
(徳島新聞社)
市議会4会派からの調査申し入れについて、刑事的な問題に発展する可能性があるとのことですが、どういうことからそのような可能性があるとお考えでしょうか。
(市長)
調査の関係もありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。
(徳島新聞社)
調査は第三者委員会で、と考えていますか。
(市長)
そうですね。それも視野に入れながら、と考えています。
(徳島新聞社)
司法関係者として、例えば元検事のような人にもお願いして、第三者委員会を視野に入れるということですね。
(市長)
そうですね。これにつきましては、決定次第ご報告させていただきたいと思っております。
(読売新聞社)
徳島市政における要望等に対する公正な職務の執行の確保に関する条例では、第三者から介入があった場合には、文書に残して市長にまであげることとなっていると思います。
第三者の介入の有無について情報公開請求をしたのですが、「該当がなかった」という回答でした。
それにもかかわらず、第三者委員会で調べるということは、条例が機能していないとお考えなんでしょうか。
(総務部長)
徳島市政における要望等に対する公正な職務の執行の確保に関する条例の運用について、情報公開請求をなさっているということですが、報告されている中に現実問題として該当がなかったということで、機能していないとか、そういうことではないです。
仮に機能していなかった場合には、第三者委員会など外部調査で、そのようなことが出てくるかもしれません。
(読売新聞社)
第三者の介入はあってはならないことだと思います。
以前、百条委員会が設けられた際(※1)に、二度とこういうことが起きないようにとつくったのが今回の条例です
もし介入があったのなら大問題だと思うので、条例に基づいて情報公開請求をしました。担当課から「今回のものに対する該当はなかった」という回答をいただきました(※2)。条例が機能しているのであれば、「自分のことだと思う」と発言された市議会議員からの介入は、事実上なかったということになると思います。
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(※1)
徳島活性会議の岡孝治徳島市議が市に対し、一般廃棄物処理業者に厳しい処分をするよう働き掛けたとされる問題で徳島市議会では60年ぶりに「百条委員会」が設けられました。
▼国立国会図書館にアーカイブされた報告書
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11459840/www.city.tokushima.tokushima.jp/shigikai/100jouiinkai_kekka/index.files/1.pdf
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(※2)
昨年の6月議会で総務部長が「現時点で不当な働きかけ事案の報告はありません」と答弁。
http://voices.city.tokushima.tokushima.jp/voices/CGI/voiweb.exe?ACT=200&KENSAKU=1&SORT=0&KTYP=2,3&KGTP=1,2,2&TITL_SUBT=%97%DF%98a%81@%82Q%94N%91%E6%81@%82S%89%F1%92%E8%97%E1%89%EF%81%7C06%8C%8E16%93%FA-10%8D%86&SFIELD1=HTGN&SKEY1=%95s%93%96%82%C8%93%AD%82%AB%82%A9%82%AF&SSPLIT1=+%2B%2F%21%28%29-&KGNO=144&FINO=655&HUID=27610&UNID=K_R020616001023
なお、市議会でこの発言をした総務部長は11月の異動で総務部長兼理事の部長職を解き、理事専任としたことが事実上の「降格では?」と徳島新聞記事でも報じられました。
これに対し、内藤市長は徳島市のホームページで抗議をしています。
http://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/shisei/opinion_on_press/20210423tokushima.html
(総務部長)
議会の中で、議員さんからそういうご発言がございました。それを受けて、万が一ですが、条例が機能していないという可能性も含めて、調べるということです。
(読売新聞社)
今のところ、情報公開請求をして、該当がないという回答でした。
市長は一部の議員が言っていることを信じておられるのかもしれませんが、一方で別の議員は、「自分のことかもしれないけれど、そういうことはなかった」と言っています(※3)。選挙で応援していた人の発言を重く受け止めるということですか。
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(※3)
実名公表された山本市議が市民とのオンライン勉強会でこのことについて詳しく言及しています
https://note.com/pftokushima/n/nbfcfbfa92f85?magazine_key=m3804bb4aa6bd
(総務部長)
今現在で、第三者の介入があったという報告はあがっていないんですが、議会の中でそういうご質問を受けましたので、調査をするということです。
(日本経済新聞社)
今の段階で調査することは妥当なご判断だと思いますか。市長ご自身が、「刑事的な問題に発展する可能性がある」と言い切っているわけですから、非常に重いと思います。その根拠のところを少しお話していただかないと、われわれ記者も納得できないと思います。
(市長)
そこも含めて、内部での調査が難しくなってくるのではないかということもあったので、今回、こういった形で、視野に入れて考えていきたいと発言しました。
(読売新聞社)
内藤市長は、条例が空洞化している、機能していないと理解されているのですか。
(徳島新聞社)
きちんと機能しているかどうかも含めて調査するということですよね。
(総務部長)
当然、そういう部分も含めての調査になってくると思います。
(読売新聞社)
市長もそういうお考えだということですか。
(市長)
そうです。
(毎日新聞社)
刑事的問題に発展する可能性があるという根拠がよく分からなかったんですが。
(市長)
それも含めて調査の関係もございますので、これ以上の言及はできないということです。
(毎日新聞社)
刑事的問題の可能性も視野に入れて調査を検討するということですね。
(市長)
そうです。
(共同通信社)
何かしら根拠があるから動くということでよろしいですか。
(保健福祉部長)
今回の件は保健福祉部のことであり、私が、本会議で議員からの質問にちょっと驚いて、とっさに「調査します」と言いました。その後すぐに、担当課以外の課も含めて保健福祉部の全部の課の職員に、この条例の運用がきちんとできているか確認しました。それぞれ仕事の内容も違いますし、本人の感覚もありますので、スクリーニングしづらい部分もありますが、きちんとできていないと感じた部分もあったので、条例に従い、きちんと記録を書くように指示しました。今回の件に関して、ヒアリングもして、市長にも状況は全部お伝えしたのですが、今は調査の段階なのでこれ以上は言えません
(徳島新聞社)
要は、本会議でも答弁があったように、条例に基づく報告があがっていないということで、条例が機能していないということですよね。
(保健福祉部長)
機能していないかどうかまでは分かりませんが、職員に周知がいき渡っていないのかもしれません。
(徳島新聞社)
でも、条例制定後、1年以上経っていますよ。
(読売新聞社)
本会議後、職員に聞き取りされて、その中で、実はこういうことがあり、本当は条例に該当すると思う、という話を部長が聞き取って、その事実が確認されたのであれば、刑事的な問題に発展する可能性があるとか、第三者委員会の設置とかの話が出てくるのは、自然な流れだと思います。
職員に確認されているんですか。
(保健福祉部長)
今、調査中です。とても繊細な部分なので、今の段階では言えません
(読売新聞社)
その段階で、内藤市長が会見で、そういったことがあったかのような発言をするのは、印象操作をしているように受け取れます。
(市長)
あったかのようにではなく、発展する可能性があるという話をしているのです。問題があったかもしれないので、専門家も交えて進めたいと考えているという発表をしているだけです。
(読売新聞社)
議会の発言を受けて内部調査をしたところ、疑わしい事態が確認されたので、専門家を交えて第三者委員会で調査することになるということが決まった段階で発表するのがフェアな対応だと思います。
(市長)
今回に関しては、内々で調査をする段階で、専門家も交えて調査した方がいいのではないかと、私が判断しましたので、そういう発表をさせていただいたということです。
(読売新聞社)
市長には、そういう情報があがっているということですね。わかりました。
(徳島新聞社)
先ほども保健福祉部長が、市長に報告しているとおっしゃっていましたので。
刑事的な問題に発展とはほど遠いのでは?
この記者会見から1年2ヶ月。
提出された「報告書」には以下のように書かれていました。
今回の調査結果は、市議会議員による要望等について、要望等記録が適時に行われないなど所定の手続がとられなかったことにより当該要望等が不当な要望等・不当要求に該当するか否かの認定が困難になったというものである。
https://www.city.tokushima.tokushima.jp/shisei/mayor/mayor_press/press_2021/kaiken20210825.files/20210825-2.pdf
つまり4党派が申し入れをしたような「過度な介入」や、内藤市長が昨年の記者会見で述べたような「刑事的な問題に発展する」ことを根拠づける資料が十分ではないということ。
つまり「明確な証拠がない」ということです。
なお、この調査報告書は実名を公表された3名の市議への聞き取りは一切行われていないとのこと。
内藤市長率いる徳島市は、職員からの聴き取り内容のみを鵜呑みにし、対象となる市議からは聴き取りをせず、確証の無い報告書をホームページに掲載し、挙げ句の果てには実名を公表したということになります。
調査報告書として公にするのであれば間違いはあってはなりません。
この件は今後大きな問題に発展するのではないでしょうか。