スタートアップ企業の「戦略手法」を考える vol.1
こんにちは。片道レンタカー「Simpway」を展開しているPathfinderの小野崎と申します。Pathfinderを2020年に設立しました。いわゆるMaaS/モビリティサービスのスタートアップです。
今回は、「スタートアップ企業の戦略手法」について考えてみたいと思います。Pathfinderがとる市場戦略は事例としてご覧ください。
私は総合商社でMaaSや自動運転関連プロジェクトにビジネス面で関わってきました。また、過去2回にわたり技術的強みを持つハードウェアの起業を二回経験しています。起業経緯についてはnote「商社から起業の道へ、コロナ過での片道レンタカー「Simpway」でも紹介しています。
現在12名メンバーがおり、私以外にも、先端アルゴリズムを実現するサイエンス/エンジニアリング、B2CのPRやマーケティング、そして攻めのファイナンスとB2B2Cに必要な経験を持つメンバーが、力を合わせてサービスローンチに向けがんばっています。
スタートアップの「戦略手法」の軸になるものとは?
本題に入りたいと思います。スタートアップ企業がとる「戦略手法」についてです。
まず、分かりやすい分類では「マーケットイン」と「プロダクトアウト」があります。Wikipediaには、マーケットインは「消費者がより必要とするモノを提供する」という事業方針」、プロダクトアウトは「「革新的商品があって初めて顧客にニーズが生まれる」といった方針」とあります。
スタートアップの事業方針としては、二元論はもう古い、どちらも大事、といいたくなりますが、「リソースには限りがあり組織や業界によって優先順位が変わる」と捉える必要があります。
また事業方針を考える別軸として、「Visionドリブンの事業を選択するか」、儲かりそう・スケールしそうな「計画達成の期待値が高い事業を選択するか」、という議論もあります。これは儲かるだけでは人はついて来ませんので、どちらも必要だと言えます。
ここで壮大なプロジェクト事例を参考に取り上げたいと思います。
“We choose to go to the moon”
有名な1962年のケネディ大統領演説ですね。
この演説の8年後に、アポロ11号の人類初の月面着陸は現実のものとなりました。アポロ計画はビジョンだけでなく、緻密なプロジェクトマネジメントだけでもなく、その両方があったからこそ実現しました。
“We choose to go to the Mars(MaaS)”
我々はまず、マーズもといマースに行くことを決めました。
そして、火星探査計画の名前「マーズ・パスファインダー」に由来した社名「パスファインダー」と付けています。
私たちが目指すMaaSの社会とはどのようなものでしょうか。
たとえば、Pathfinderが目指しているのは、完全自動運転社会の実現を早めることです。自動運転で、あらゆる人が、自由に移動できるようになれば理想とする社会に繋がると思っています。
また、便利なだけでは結果的に忙しくなり無機質なディストピアになるので、あくまで人間の活動が豊かになるような社会を目指しています。
ビジョンを設定すると同時にミッションを明確化し、そして緻密な計画を行うことで、取るべきアクションの鮮明度をあげていくことに注力しています。
課題、プレイヤーの多い事業領域における施策立案のプロセス
事業領域における戦略について考えていきたいと思います。
例えば、完全自動運転は2030年代にも実現すると言われています。ただこの業界はプレイヤーが多く、課題も多い領域です。自動運転の普及には、時間を要することでしょう。
このような事業領域での事業戦略を定めるためには、自社のポジショニングが不可欠かと思います。
私達は、その時代における「長距離移動の最適配置プラットフォーム」というポジショニングを目標として掲げています。
具体的に我々はどのように事業領域の現状をとらえ、自社のポジションを定義づけているのかをご紹介します。
まず、業界のゴールとしては全体の最適化があります。全体の中には短距離も長距離もあります。
現状、本領域のスタートアップは短距離にフォーカスしている会社が多いのですが、長距離・都市間の移動も組み合わせて考えなければ、都市ごとの車両の偏りなどが発生してしまいます。また自動運転時代へ進むとより車による長距離移動が増えるはずです。
そのような観点から、我々のポジションを「長距離・都市間の最適化を通じた全体最適配車を行う」スタートアップと定めているのです。
バックキャスティングからも施策を考える
さて最適配車や、トヨタやGoogleの自動運転車があれば、理想の完全自動運転社会は言えるでしょうか。全体最適配車を実現する上で、大きな壁となっているものには「ハード面」ではなく「ソフト面」があげられるのではないか、そこをクリアすることが、自社のポジションを得る上で重要なのではないか、と考えています。
そこで、事業戦略として「現時点も存在する”心理的なハードル”にアプローチすること」を掲げています。
たとえば自動運社会であったとしても「移動をあきらめてる人」「そもそも移動が難しい人」が必ずおり、彼らが自社領域のマジョリティ層となり得ると考えています。
彼らにどう使って貰えるかが、より人間社会を豊かにするうえで重要なのです。また会社経営的にも市場でパイを広げて行くための課題となり得ます。
心理的ハードルのあるマジョリティ層への長期的アプローチを続けていくにあたり、三種類の想定をしています。
「病気・体力の不安」「自分以外の不確実性への不安」「そもそものモチベーション・興味が上がらない事」です。
この中で例えば、自分以外の不確実性という点で、移動を諦めているのは私もそうですが「小さい子を持つ子育て世代」だったりします。
子育て層がターゲットで、子供を連れて遊びに行く時に、郊外の人気スポットへ楽して手軽にいけるサービスを事業として提供していきます。
デスティネーションの決め方、データのとり方、アルゴリズム、などは、我々の取り組みと親和性が非常にあります。
現実的に我々はこのようにバックキャスティングに加えフォアキャスティングからも自社の施策を考えています。
ビジョンドリブンな逆算方式だけではなく、足元成功しそうな積み上げ方式も取り入れる必要性を感じています。
以上、マーケットインとプロダクトアウト、ビジョンドリブンと積み上げ式の観点からスタートアップの戦略を考えてみました。次回は、より具現化するプロセスについて触れたいと思います。
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