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おと奥様のストーリー③
「部長の前ではいないって言ってましたけど、いますよね? 彼女が出来たんですよね!?」
「いないぞ。その予兆すらない」
今日は後輩の追及がいつにもしてしつこい。
やはり仕事がデキなくて、やる気もなかった奴が四か月連続で成績トップになれば、そりゃ不思議がるか。
そろそろ俺が変わった理由を話す時が来たかな。
「彼女ではないが……、俺の前に“天使”が現れたんだ」
俺の答えに後輩は目を丸くしたのち、よそよそしい態度を取られた。
こいつの性格なら「え、天使ですかあ!?」って話題に食いついてくると思ったのに。
「そういう話題はちょっと……、最近、ニュースとかで問題になってますし」
「いや、天使っていうのはだなーー」
「おれ、そういうの興味ないんで! じゃ、出先いってきまーす!!」
後輩は荷物と上着を持ち、この場から足早に退散していった。
あいつ、俺の話を宗教の勧誘だと勘違いして逃げやがった。
俺は後輩が出ていた扉を見つめながら、心の中で悪態をついた。