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しおり奥様ストーリー【5】

しおりと定期的に会い、少しずつ距離を縮めてきた。
 しおりも俺に気を許してくれたのか、段々とラブホテルに入る前の時間を長くとってくれるようになった。その時間を使って、ショッピングモールを周り、夜景がみえるレストランでディナーを楽しんだ後にラブホテルに入るというのが定番になりつつある。
「孝之さんとの仲も二年くらいになるかなあ」
 デザートを食べながらしおりがぼやいた。
 そうか、不景気だなんだと喫茶店で愚痴を呟いてから二年が経つのか。
「君のアイディアのおかげで、前よりも稼げるようになったよ」
「ほんと!? 私、経営の才能があるのかなあ~?」
 えへへっとしおりは笑いながら冗談を呟く。
「自転車とかスクーターで配達する人も最近来るようになったんだよね」
「そうなんだあ!」
 じわじわと人気になり、テレビCMや広告で話題になっている個人配達アプリの配達員が来るようになった。そのおかげで、勝手に販路が広がり収益増になっている。
「いっぱい稼いでるんだったら、私、おねだりしても……、いいよね?」
「ま、まあ」
 しおりが欲しがっているものは確か――。
「下の階にあるブランドの限定品……、だっけ?」
「クリスマスコフレ!! 可愛い缶に入ったやつだから絶対欲しいんだよね!」
「クリスマス……、それもう売ってる?」
 まだ十月中旬でハロウィンも終わっていないのに、もうクリスマスの限定品の情報が出ているのか。
 しおりはスマホを取り出し、目当ての商品について検索した。
「えっとね、十一月の下旬に発売……、だって!」
 商品が映ったスマホの画面を俺の目の前に突き出す。横文字のブランドでなんと読むのか分からない。ロゴの形は覚えたので、ビルを出る際に店の場所を把握しておこう。

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