映画感想 『邦題:首都大地震/原題:DC Down』(アメリカ 2023)
【感想】
今年のテーマである「リスク」と、そこから発展する「リスクマネジメント」の参考に、無料だったので鑑賞してみました。
もし、ワシントンで直下型地震が起きた時にアメリカはどう動くのか、概要がわかりました。
タイトルから連想して「ブラックホーク・ダウン」ばりに期待していた緊急対応がほとんどなく、アクションシーンも少ない。というか、時間が短すぎるD級映画(もはやパニック動画)です!(笑)
ちょうどアメリカの映画組合のストライキもあった頃ですから、予算も人員も確保できなかったのかなと思います。
(出演者は作品の出来をどう思っているのか気になるところです(^_^;))
【あらすじ】
ワシントンで直下型地震が発生。崩れ落ちたホワイトハウスにパウエル大統領が閉じ込められ、副大統領は死亡。救出作戦が難航する中、恐るべき事態が明らかになる。この揺れは前震に過ぎず、巨大な本震が迫っているというのだ、、、、更に議長の陰謀が動き出す。
★モデルは、ワシントンDCが属する州の『バージニア地震(2011年8月23日 マグニチュードは5.8・震央はリッチモンド北西部)』とのことです。
地震が少ないアメリカ東海岸で起きた地震で、首都ワシントンで揺れを感じたのは93年ぶり。バージニア州内で発生した同規模の地震としては、1897年以来114年ぶりのため、災害ではなく10年前の9.11同時多発テロを思い出してパニックが起きました。
東京はどうでしょうか。
【結論】災害警戒時に事前に都内への移動や出勤を止められる強制力が必要だと思います。
『関東大震災(1923年9月1日 マグニチュード推定7.9・震源は相模湾北西部)』から101年が経ちました。
地震大国を自負する日本は、「免震構造・耐震構造」の研究は世界一と評されますが、多くの高層ビルは、3.11東日本大震災のダメージが残っているともいわれます。
そして、首都高速・地下鉄など平時では便利なインフラも被害想定は未知です。高架道路である首都高速が崩落することで、地上の幹線道路が寸断されるリスクがあります。また、東京湾からの津波が地下鉄網に浸水することで、永田町や首相官邸など23区内が水没するリスクもあり、いわゆる「帰宅難民」の課題が残ります。
●映画内では大統領が負傷、副大統領は死亡してしまった状況でしたので、臨時で国防長官に権限委譲され、「コグコンワン」という緊急対応指示をしていたのがポイントです。
恐らくこれは、「コグコン」じゃなくて「デフコン」だと思われます。
『デフコン(DEFCON)』とは、5段階に分類された「Defense Readiness Condition(防衛準備態勢)」の略です。実施の中心は国防総省です。
デフコン 5:平時における防衛準備状態。国防長官が宣言する。
デフコン 4:情報収集の強化と警戒態勢の上昇。冷戦中の態勢は全てこのレベル。
デフコン 3:通常より高度な防衛準備状態。第4次中東戦争時(1973年)、同時多発テロ(2001年)の際にも宣言された。
デフコン 2:最高度に準じる防衛準備状態。キューバ危機(1962年)の一度だけ宣言された。
※これは日本にも重要な発令で、沖縄・恩納村においては「核弾頭ミサイル」の発射準備が実施される
デフコン 1:アメリカ軍やアメリカ領土に対する攻撃想定として最高度の準備。現在まで宣言なし。
※「オプション・ブラボー」にて通常兵器の使用が許可され、核兵器の使用は大統領が直接命令
つまり、映画内では、地震の後にテロが予想されたので、「災害対応」ではなく「防衛準備」に切替えたのだと想像します。
日本の場合はどうでしょうか。
【結論】「支援」と「実行」を明確に分権化した行動計画が必要だと思います。
『南海トラフ地震臨時情報(2024年8月8日 マグニチュード6.8以上の地震等の異常な現象を観測した後、気象庁から5~30分後に発表)』が初めて発令されました。
幸い発災には至りませんでしたが、「避難準備」や「事前避難」など複数の基準があって、具体的な防災対応がわかりにくい印象です。
大規模な災害に対しての警報は、2013年から運用されている「特別警報」があります。これは、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっている場合に発表され、最大級の「警戒」を呼びかけるものです。自治体が自衛隊・警察・消防を動員できる「災害救助法」を発令するには「予報」や「警報」を待たなければなりません。
その後、総理大臣と災害地の知事が連携して対応することになりますが、知事には「法令対応」(支援)と「災害対応」(実行)の二重負荷がかかります。2024年元旦の「能登半島地震」が一番近い例です。「法令」によって瓦礫が即時撤去できず、損壊判定が不十分かつ遅いため、被災住宅などの復興復旧が進みません。
日本全国どこで発災しても知事要請を待たずに政府が速やかに関連法令を緩和し、被災地が消防・救助・復旧の実行に集中できる計画が望まれます。
●2つの災害対策省庁+アルファ
映画内には出てきませんでしたが、アメリカには「国土安全保障省」と「連邦緊急事態管理庁」があります。
まず『国土安全保障省』は、テロ防止・国境警備・出入国管理・税関業務・サイバーセキュリティ・防災災害対策を担います。人員規模で、国防総省と退役軍人省に次いで、3番目に大きな省とのことです。日本の旧内務省に相当します。
次に、『連邦緊急事態管理庁』は、国土安全保障省の一部で天災や人災に対応します。洪水・ハリケーン・地震・原子力災害を含むその他の災害に際して、連邦機関・州政府・その他機関の業務を調整し、家屋や工場の再建や企業活動・行政活動の復旧を資金面から支援する組織です。
また、被災したホワイトハウスの警備・救助のために「バージニア民兵団」という架空組織も動員されていました。「民兵」はアメリカ独立戦争時に組織された地域もありますが、現在は存在しないため、これは地方の治安維持・災害対策を担っている「州兵」や「保安官」に置き換えて検討します。
なお、州兵は、国家安全保障法(1947年)の制定によって、アメリカの安全保障体制が大きく改編された際に誕生した組織です。アメリカ国軍(陸・海・空・海兵)とは別に各州には「陸軍州兵」と「空軍州兵」が整備されています。
日本の場合はどうでしょうか。
【結論】自衛隊・警察よりも早く広範囲に活動できる「自警団・保安官(警察法に規定して公認化)」が必要だと思います。
災害に対応に対応するのは、「内閣府」「国土交通省」「防衛省」「海上保安庁」「警察庁・警視庁」「消防庁・東京消防庁」「厚生労働省」などがありますが、災害対応に即時機能するように統合されていません。阪神淡路大震災や東日本大震災があったのにもかかわらず、「防災庁」をこれから検討するくらい整備が遅れています。速やかに設立して関係省庁の統括をできるよう、与党副総理などを長官に据えるのが望ましいです。
また、東京のリスクは「行政と商業の中心」かつ「昼間人口の多さ」です。東京都の昼間人口は、2023年3月時点で1,675万人(昼間就業者1,018万人、昼間通学者186万人、常住人口含む)です。このリスクは、大都市である名古屋市や大阪市も同様だと考えられます。
23区内の省庁が被災すれば「災害対応」の全体指揮・判断が遅れます。人口が多い分、発災時の避難者が大量に発生して交通インフラがマヒします。さらには救急要請の激増による通信インフラのマヒ、消防車両の遅れによる火災延焼も予想されます。
これを解決すべく「避難誘導・交通誘導」を即時に東京全域で行える組織や権限は存在しません。警視庁は世界有数の規模を誇る警察組織ですが、職員は約46,000人で昼間人口1,675万人を対応するには見劣りしてしまいます。(職員一人当たり約364人)
しかも、警察官は「犯罪対応」が本分であり「災害対応」のプロではないのです。
また、災害時に活躍する自衛官も「領土・領海・領空の防衛」が本分であり、「災害対応」は副次的なものです。例えば、首都圏を守る陸上自衛隊の東部方面隊は、約20,000人(第1師団6,500名、第12旅団約4,000名、普通科4個連隊約9,000名?)です。
一方で、地域に必ずある「消防団」は、「消防組織法」で規定された救助・消防活動を支える公認組織です。東京都の消防団員数は、2023年3月時点で約27,000人(特別区1万6,000人、多摩地域9,050人、島しょ地域1,587人)とされています。
同様に災害時に限定した「救助・誘導・巡回」活動を行う「自警団・保安官(警察法に規定して公認化)」を各地域に設置すれば、課題である「避難誘導・交通誘導」に強力なサポートになるハズです。
これが自衛隊・警察に次ぐプラスアルファの組織です。
主に「保安官」は警察OBや退役自衛官など約4,000〜5,000人を中核とし、これに、東京都内で勤務する民間警備員約12万人(2021年3月時点で警備会社数は約2,000社)も編入するのです。先述した警視庁職員数46,000人と合わせて約17万人となります。(対応すべき昼間人口(1,675万人)が職員一人当たり約364人→約99人へ減少)
「自警団・保安官」の活動について警察法(公法)への規定が重要なのは、警備員の主要職務である「交通誘導」「施設警備」は、「警備業法」(私法)に規定されたものです。つまり、公法ではないため法的な強制力が無いのです。また、関東大震災直後に起きた民間の自警団による悲惨な事件を繰り返えさないよう、行動を統制しなくてはいけません。
数合わせかも知れませんが、災害時は「初動対応」が全てだと思います。避難者が一部に殺到しない様、適切に誘導するとともに、AIなどで適切な緊急車両のルート確保が望まれます。このためにも災害現場からの被災情報を速やかに集める事で災害全容を掴むことが重要です。
【最後に】
理想ですが、キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーは、学んだ心理学を思い出して災害時に冷静に行動し、デマ情報に惑わされない判断をする必要があります。
災害や事故は人々の心を傷付けます。東日本大震災後の活動実績もあるように、復興時には「傾聴力」を活かして被災者をケアしていくことで貢献できます。
参考になったnoterさん記事
トップ画像はAKISENさんの作品です☆
#映画感想 #ワシントン #地震 #首都 #東京 #リスクマネジメント #キャリアコンサルタント #キャリアカウンセラー