漫画紹介「Vドライブ!」~"配信者"が現代の変身ヒーローだ!~
こんにちは。ペッタ~です。
今回は5月27日に発売されたばかりの漫画「Vドライブ!」について紹介する記事です。
仮面ライダーの「変身」が好き
本編の紹介の前にまずは持論語り&前置きで仮面ライダーの変身が今どんな意味を持っているのかを語りたいと思います。
いや、いきなり何やねんとなってるかもしれないですけど、この布教記事に必要なので、ちょっとだけお願いします。
僕は他の記事でも繰り返し書いているように仮面ライダーシリーズが好きなんですけど、その中でも特に「変身」という概念が凄い好きなんですよね。
一義的にはバンダイの玩具を販促するためのコマーシャル番組なので、変身は画面で玩具の購入を促して遊び方をガイダンスをする商業的な義務があるわけです。
要は毎週の放送で必ず「変身」のワンシーンは入るわけですね。敵と邂逅して変身。仲間とすれ違って変身。衝撃の伏線が回収されて変身。変身、変身、変身。
このようなフォーマットが50年間繰り返されてきた中で探偵だったり学園だったり刑事だったりデスゲームだったりと普遍的な物語のテーマを持つ色んな仮面ライダーが生まれました。
で、僕は多様なテーマやモチーフの仮面ライダーが出てきた中で「変身」シーンには侵食性の高い一種のマクガフィンの様な役割が生まれてきたと思っているわけです。
普通は「探偵モノ」で真犯人が自分の近しい人だったらキャラが驚愕して逮捕するなりショックで慟哭するなりで終わりなわけですが「探偵モノの仮面ライダー」だったら、真犯人は怪人になるし探偵も変身ベルトを巻いて一戦交えるという展開が可能なわけですよ。
カレールーをかけたら何でもカレー味になる理論じゃないですけど、この「変身」という概念が注入されると、途端にその物語そのものを薄っすら「仮面ライダーっぽく」なるというヘンテコさが僕はずっと好きなんですね。
先に普遍的な物語のモチーフやプロットがあって、それが「変身」という装置との合体により「今年の仮面ライダー」になるという順序があると僕は解釈しています。
話は変わりますが、僕はまんがタイムきららだったり美少女が出てくる作品も好きです。これも過去記事を読めば一目瞭然ですね。
オタクたるものやはりビジュアルのいい美少女は好きです。可憐な女の子を眺めて萌え過ぎます!と叫んでいたい。
はい、ここまで読んで僕が何を言いたいか分かりますね。僕のオタク的な欲張りセットは「美少女作品というプロットに『変身』という概念を注入した作品」です。特にまんがタイムきららが好きなので、もっとあけすけに言ってしまえば「きららで『仮面ライダー』が読みたい」と思っていたわけです。
そして、やってくれました。「Vドライブ!」はそんな僕の欲望を満たしてくれるというお話です。
配信業はヒーローの仮の姿
きららで描かれる特撮の「お約束」
まず「Vドライブ!」の基本情報ですが、当然レーベルはきららで「まんがタイムきららキャラット」で連載されています。
そして作者は「ニチアサ以外はやっています!」で細かい特撮ネタを高い表現技法と共に描いてくれた猫にゃん先生です。ある意味当然の帰結ですね。
猫にゃん先生の高い表現技法はニチ以の紹介記事で力を入れて解説しましたし、今作も表現の部分ですでに他の方がブログを書いているので、その辺りの話は今回は譲ろうと思います。
それでは、改めてあらすじを引用します
全く伸びない底辺アイドル系配信者「愛世きらり」として活動していた主人公「井瀬愛梨」がひょんなことから電脳世界からやってきた怪人に襲われてしまい、それと秘密裏に戦う組織に戦士として参加していくーーというあらすじなわけですが、もうこの時点でニチアサが好きな人ならかなり「それっぽい」ということが分かるでしょう
なぜVtuber事務所がレジスタンス組織になっているのかというと「侵略者と戦闘しているという事実」が「配信事務所の企画という体裁」で世間にミスリードする形で公開されている設定だから。
先に「配信者・Vtuberあるある」があって、そこからどうやってヒーローのお約束プロットをこなしていくか、という異なる二つの物語をなんとか接合しようとしたときに生まれる「変さ」がもうどうしようもなく毎週放送しているニチアサのそれなんですね。
専用のアプリケーションを使ってアバターを纏うという部分に今作の「変身」の概念が仮託されています。スマホを掲げてる画角が明らかにイケメン俳優が変身ベルトを持ってる時のそれですね。
則ち、「動画配信者は現代を忍ぶヒーローの仮の姿であり3Dアバター≒仮面」という思い切りの良さが作品設計の中にあって、そこを照れなくやりきっているという特長があります。
あと、個人的に好きなのが、第7話の「トンでもラーメン道」で完全に夏休みに放送されがちな料理対決を主軸としたギャグ回です。井上敏樹脚本と巨匠監督コンビがやらかしてる時のハイテンポさが良く作られていると思います。
前作「ニチ以」は特撮が好きな女子高生の自主制作を描いていた作品なので、いわゆる楽屋ネタ的に本家のオマージュが散りばめられていたわけですが、本作は特撮番組そのものに対する構造のオマージュを根本にして進行していきます。
また「配信者・Vtuberあるある」だから、こちらの取材もしっかり作り込まれています。
クール設定のキャラがロールプレイを演じきれなくて暴言吐いてるのがファンからウケているとか、戦士の共闘命令が「百合営業」のワードでラッピングされているとか、とにかく「Vtuberあるある」が「ニチアサあるある」にマッピングされていく。
特に作中二人目のライバー「二乃宮白(活動名:ニノ・スノーホワイト)」のエミュレーション具合は相当高いです。
作中の登場順は2番目だけど、戦士としての歴は主人公よりも先
重い過去を背負っているので、途中で合流したした主人公と対立する
「勘違いしないで」「私はあなたを認めていない」と言う
そう、これでもかというくらいに「2号ライダー」のパブリックイメージを基に「クールキャラをロールプレイしきれていないVtuber」という翻案として、きららナイズされて出力されているキャラなのでとても読んでいて楽しい。
クリーチャーデザインも良い
もちろん特撮のオマージュ要素が強い作品なので、敵のデザインも相当凝っていて読んでて楽しいです。
例えば、作曲家が素体のユニコーンVルスはピアノの黒鍵をあしらったジャケットがシマウマみたいに見えるとか、一角獣→レイピアが武器といった連想ゲームからモチーフを引っ張ってくるのがデザインの意図としてよく練られていると思います。
後半には幹部怪人も出てきて「兎」「龍」「蛇」になっています。デザインがバチバチに決まっていてカッコいいし、干支の並びになっているので分かりやすいですね!
ただのパロディではなく・・・
前作でも同じように評しましたが、ただパロディや小ネタ出しで終わることなく、二つの題材に対するリスペクトと翻案が新しい漫画体験を生み出しているのは猫にゃん先生の高い技量と情熱があってこそでしょう。
作品の出発点は、構造レベルのオマージュではあると思うんですけど、きららでは比較的少ない人の死が明示されているハードな世界観(設定上Vルスが使ってる素体は元の人間が殺されていることになる)だったり、主人公は中卒で親戚をたらい回しされたところからの居場所としてVドライブ事務所が存在していたりと、本筋はちゃんと百合・疑似家族の作品として成立させています。
ここが本当に偉くて、ちゃんと「作者の趣味」的な部分が上滑りしていなくて骨太な作品として成立しているので安心して読むことが出来きる今一番おすすめの漫画です!
という訳で今回の記事は以上となります。
「Vドライブ!」是非ともよろしくお願いします。