緑の親指
緑の親指をもつ=庭仕事に秀でた
少年ティストゥと出会ったのは半世紀も昔。
ティストゥが触れると、触れたところに
いのちが萌える(*)。
公園や庭の花壇はもちろん
ちょっと乾いた石ころ混じりの土だって、大丈夫。
鋼鉄にさえ、ティストゥが触れると、緑が息吹く。
戦車も、大砲も、爆弾も、青葉若葉に覆われる。
表題画像の小球は、森の小鳥の卵でも、
空に届く千年の大樹の種子でもない ——
鉛色の球体は、まき散らされた悪魔の置き土産。
ティストゥは……天使だった。
緑の親指をもつ天使
ティストゥ、あなたは今どこにいるの?
(*)モーリス・ドリュオンMaurice DRUON 作
『ティストゥ、緑の親指 (Tistou, les Pouces verts)』(1957)