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春に

菜の花の黄と空の青
めぐり来る春の息吹を
伝えてよ、彼の地へ。

早春の朝まだき
人未だ眠る千年の都に
静寂の街区をぬって
男女の歌声が流れる

勇者たちの律動は
聖なる沈黙のうちに鎮まり
ただ響く魂のことば
「祖国の栄光と自由は滅びず」

            ***

マリアの名を持つ海辺の都市は、
またたくまに廃墟と化した。

人々は非日常の日常を生き
昨日までの住居、瓦礫のそばで
凍れる暖をとり、
その日の糧を料理する。

からくも運び出した椅子の背に
立てかけられた一枚の絵は
テレビカメラが一瞬とらえた
聖母子の像(イコン)

心よ、子猫の慄く心よ、
ひと夜 天翔って彼の地へ向かい
聖像のみ前にぬかずこう。

どれほどの力を空しく用い
愚かしい術策を弄そうと
誇り高き自由の民は
希求して止まない

豊穣の黒い大地がふたたび
麦穂(むぎ)のに覆われ
空のがさらなる高みを
めざし行くことを

いつか必ず
よみがえりの春に。