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パリオリンピック閉会式の音楽

こんにちは。あるいはこんばんは。おしゃま図書です。
あっという間に終わってしまったオリンピック。気づけば、秋のフランス語検定試験(仏検)までもう100日を切ってしまった…。オリンピックにかこつけて、たいした勉強してない怠け者の自分に心底ダメだしします…。


開会式についてのまとめ

開会式のパフォーマンスにローマ教皇から抗議がきたり、DJや演出家に殺害予告がきたりと、物騒なこともありました。メダルの劣化がひどいとか、審判のエコヒイキがひどいとか、セーヌ川の大腸菌問題とか…。そして、選挙で負けたマクロンのその後がどうなるのか。気になるところではありますね。

さて。パリを愛するものとしては、やっぱり、街全体が競技場になってるっていうのが、素晴らしかった。そもそもそういうことが出来るのも、ナポレオン三世によるパリ大改造と、19世紀のパリ万博のお陰かもしれない。
東京とかって、たくさんの人が無料で大勢集まれる場所ってほんとにないけど、西洋の町って、「広場」があるでしょ? コンコルド広場とか、エッフェル塔の前にあるシャン・ド・マルス公園とか、それがうまく、仮説の競技場の場所として機能したわけで、都市論や歴史に詳しい人の解説をもっと聞いてみたかったと思うのは私だけでしょうか。

と言うわけで、閉会式の前に、開会式そのものを見てないですって方、宜しければ、ぜひ、こちらをご覧ください。

 

誰も触れない消された”祝祭”

式の前には、開会式のダイジェスト映像が流されていましたが、例の第8章festivité(祝祭)については、ダイジェストからも外していましたね。これは日本の放送だけでなく、本国フランスのfrance.tvでも同様でした。まぁ、また火に油を注ぐことになったら面倒だからでしょうか。
フィリップ・カトリーヌ頑張ったのに…このまま封印されちゃうの?


結局ピアフにはじまり、ピアフに終わった
パリオリンピック

オリンピック閉会式。例によって私はリアルタイムで見ることができず(なぜなら翌日がコミケだったから)日本での放送は録画し、あとはコミケの会場でWi-Fiがつながったため、そこでfrance.tvがアップしてくれている通しのもの(例によって、冒頭にスタジオでのキャスターのトーク、カラオケタイムを経て、閉会式の完全放送ならびに、その後のキャスタートークまで、正味4時間10分)を、合間合間に見ていました。


閉会式のプレイリスト(どんな曲が使われたのか)は、こちら。

開会式の最初を飾ったのも、エディット・ピアフの《La foule 群衆》でしたが…。

閉会式のオープニングを飾ったのもピアフの曲。オリンピックの聖火台があるチュイルリー公園で《Sous le ciel de Paris パリの空の下》を歌うって、もう、「最高」以外の言葉がみつからない自分の語彙力のなさよ…。

歌ったのは、若干23歳のザホ・ドゥ・サガザン。最近の若い子のこと、本当に知らなくてゴメンナサイですが、今年のヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジーク賞(フランスのグラミー賞みたいなやつ?)の授賞式にて、年間最優秀オリジナル楽曲賞をはじめ、年間最優秀アルバム賞、年間最優秀ライブ賞、年間最優秀女性アーティスト賞の4冠に輝いた期待の新生とのこと。
カンヌのときにもルイ・ヴィトンの衣装をまとっていましたが、今回も、そのときのデザインのバージョン違いっぽい。

やはり、フランス人にとっては、日本の美空ひばりのような存在なのでしょうね。面白いのは、「ひばり」も鳥ですが、「ピアフ」もフランス語(というか、パリジャンの俗語?)で「雀」を意味するということ、子どもの時から歌っていたこと、その後の歌手としての成功と、不遇な私生活など、リンクするところも多くて、鳥肌がたちます。
もしピアフってどんな人?というのを知りたくなったら、マリオン・コティヤールがピアフを演じたこちらの映画もぜひ。


選手入場の後はカラオケタイムのスタート

そして、今や世界の「カラオケ」。歴史的なフランス歌曲とユーロダンスのオリジナル・メドレー。カラオケで歌うって言ったって、フランコフォンじゃない人たちは困るのでは? 歌える人は歌っていますね。
でも会場の様子をみると、さほど気にしている感じは見受けられませんでした。そして、閉会式の日本版放送のアナウンサーはよかったなぁ。ちゃんとカラオケタイムの曲の説明とかもしてるし。

Emmenez-moi(シャルル・アズナブール)

Aux Champs-Elysées(ジョー・ダッサン)


そしてFreed From Desire (Gala)…って、これ、第8章festivitéのファッションショーでかけてた曲じゃんか!!! まぁ、でもみんな楽しそうだし、いいか。

最後は、クイーンの《We are the champions》


英語で歌うフレンチバンドからアメリカ国歌へ

閉会式に登場したアーティストは、バンドスタイル。
90年代後半から2000年代に出てきたフランスのバンドって、「世界」を視野に入れているので英語で歌うんだよね。Phoenix(フェニックス)しかり、Air(エール)しかり。今回のオリンピックには出ていないけれど、Tahiti80とかも英語で歌っていて。正直、フランス好きの日本人としては、フランス語が聴きたいから、英語で歌われるとちょっと残念な気持ちあるんだけれど、開会式が全編フランス語の曲だったのに対し、閉会式は英語で歌うフランス人を入れるあたり、次のオリンピックがアメリカロサンゼルスであることを含んでの人選なのかな。
日本の放送でも、フェニックスやエール、カヴィンスキー、アンジェル(ベルギー出身)のこともちゃんと説明していました。開会式の時もこのくらいきちんと解説してくれていたらよかったのに…。

あと、ソフィア・コッポラが好きな人なら、キュン死にしちゃう曲、AirのPlayground loveをかけてくれたのも好き!!!『ヴァージン・スーサイズ』で使われていた曲ですよ!!! 

ちなみに、Phoenixのボーカルは今のソフィアの旦那さん。
なんかもう、「フランス経由アメリカ→オシャレ」という公式の正解は、ソフィア・コッポラ一択ってことなんでしょうかね。(そういえば、ソフィアは『マリー・アントワネット』も撮ってるしね)

そして、このフレンチバンドから一転。続いて若干27歳にしてグラミー賞5部門、アカデミー賞、エミー賞を受賞した音楽アーティストのH.E.R.(ガブリエラ・ウィルソン)がアメリカ国歌を斉唱。そして、ミッションインポッシブルのテーマ曲に変わって… トム・クルーズ降臨!!!

Le monde の記事から見ていきましょう。
あそこからは、アメリカ側の演出ということで、2018年の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』になぞらえて(パリでロケされたアクションシーン)こんな風に述べています。

「グラン・パレの屋上にパラシュートで着陸。エトワール広場を、ヘルメットなしで大型バイクを乗り回し、警察に向かって逆走。ポン・ヌフを大型トラックで猛スピードで横断。パッシーで乱射。セーヌ川(まだ浄化されていないときの)のモード・エ・デザイン・シテ付近で車を爆破し、護送車を川に突き落とす…。」と比べたら、8月11日にトマ・ジョリが用意したショーは、まるで後援会のパーティーと見なしたくなるかもしれない。

Le Monde, le 12 août 2024Par Jacques Mandelbaum

さすが、人のことには辛辣なフランス人!!! さらには、こんなことも。

古代と現代のスポーツの祭典の間、トマ・ジョリと脚本家たちがドラマチックに演出した閉会式は、再生という普遍的なテーマを前面に押し出したと言える。エピローグでは、その一部をトム・クルーズが体現し、象徴的にこの俳優を、ヘルメスと天使ガブリエルの中間に位置する、モーターで動く神の使者のような存在に変えている。

Le Monde, le 12 août 2024Par Jacques Mandelbaum

電動バイクでパリを疾走したトム・クルーズ(ハーレーダビッドソンの電動バイクとして誕生し、現在は独立したブランドとして展開されている「ライブワイヤー」というモデルだそうですよ)を、新たな時代の英雄となぞらえた締めくくり。この人の記事だけでなく、他の記事も読んで、いろいろな意見を比べてみたいところです。ちょっとね、ル・モンドって頭のいい人が書いてるから、すごく表現とか難しい…。

とりあえず、アメリカパートは置いといて。
最後は、すごく神妙に、小さなランプに閉じ込めた聖火を、アスリートたちで吹き消すの。これまでの壮大な何かと比べると、すごく厳かな。というか、日本でやった東京オリンピックの時って、聖火が消えるときどうだったっけ? 思い出せない。あのときはコロナのことで気持ちがいっぱいだったから。

新聞記事はとりあえず、興味が持てる範囲でオリンピックの記事を引き続き漁って、語彙を増やしていけたらと思います。

今回は、日本の放送のアナウンスが丁寧でしたね。
そして10日後にはパラリンピックか…。しばらく私の中のまだオリパラ熱は続きそう。そして、今回の開会式と閉会式のおかげで、私のSpotifyに、たくさん曲が追加されました。やっぱりフランスの曲、好きだな。


余談ですが。先日、『ボレロ 永遠の旋律』を観に行きました。

見事なくらい観客が高齢者ばかりでビックリ。
でも、いろんなジャンルの人たちが奏でるボレロをつないだタイトルバックがよかったですよ。ねえ、ちょうど100年位前の人で、世界的に知られていて、15分に1回、世界のどこかで誰かがボレロを演奏しているって。今回のオリンピックでも使ったらよかったのでは? と思いましたけど。

(追記)マイウェイについて

肝心なことを書き忘れていました。
ラストソングです。
「マイウェイ」といえば、フランク・シナトラが有名ですが、原曲は、フランスのポップスター、クロード・フランソワです。フランスでの知名度ほど日本での人気がない二大スターのうちの一人(もう一人はジョニー・アリディ。ちなみに俳優ローラ・スメットはジョニー・アリディとナタリー・バイの娘)。
トップスターだったときに、やはりトップアイドルだったフランス・ギャルとの破局を歌にしたというのが、原曲「Comme d'habitude」(いつものように)なのでした。全然前向きな歌じゃないので、多分、ポール・アンカがメロディを気に入り、「マイウェイ」としてシナトラに歌わせなければ、ここまで世界的に有名な曲にはならなかったかも…。
クロード・フランソワの半生は、ジェレミー・レニエ主演で映画化されています。絶対に日本公開しないだろうなと思ってフランスからDVDを取り寄せたら、公開してくれたんですよね。配信にあがってないから気楽にはみれませんが、気になる方はどうぞ。
個人的には、フランス語版で歌って欲しかったけど、内容的にはマイウェイだよね。


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