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昭和16年に16歳男子が書いた、6つ上の姉の追憶:前置き

実家に亡父(大正14年生まれ)の小学生時代の日記がまとめて残っている。当時の暮らしとかちょっと面白いところがあるので、いつかここに転載しよっかなーと思っているんですが、その前に、もう少し成長した父が書いたものを試しに載せてみようと思う。
ここは、その前置き部分です。

父方の親戚は遠方に住む人が多くあまり馴染みがないが、都内に住んでいた伯母(父の姉)は、時々実家に顔を出してくれた。私が小さい頃にはもう子育てを終えて仕事に復帰し、煙草をふかしながらしゃきしゃきとお喋りする快活で聡明な人。
父よりも長生きしたし、病没だが亡くなる直前までかなりしっかりしていたと聞く。
父は家では寡黙だったが、伯母が来ると楽しそうだった。

父と伯母に、もうひとりお姉さんがいたことは、時々祖母から聞いていた。
祖母の自慢の長女は、大正8年生まれ。
子供の頃から作文や少女雑誌への投稿で入選を重ね、後に短歌でもその文才を発揮していた。しかし22歳の若さで病を得、小さな一人息子を遺して急逝した。昭和16年1月のことだった。

数ヶ月後、祖母は長女の遺稿を整理し、一冊の小さな本を編んだ。
巻頭には妹と弟—私の伯母と父—が序文を寄せた。

十数年前に他界した父は、家では余り感情を表に出さない人だった。ブロディやスタンハンセンが活躍した頃までは必ずプロレス中継を見ていたので、土曜の夕食タイムにTV画面のリングが白熱すると、お茶碗持ったまま身を少し乗り出す。それが私の記憶にある父の最高エキサイトの瞬間かもしれない。

そんな父しか知らないので、姉を喪った悲しみを吐露する序文を書いた16歳男子と、父がなかなか結びつかないのだが。

次に転載するのは、父の書いた序文だ。
伯母の短歌も載せたいが、伯母の息子さん…うんと年上の従兄の許可が必要だと思うので、やめておく。

https://note.com/petitelanterne/n/n07bc6e590114

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