
アナログな感情、デジタルな言語
突然だが、今読んでいる本の一節を紹介する。
人間の脳は、複雑なものを単純化し、多様なものに境界を引いて区別するという能力を発達させてきました。
まだ読んでいる途中だが、この一節を読んで色々な考えが湧き出てきた。書きながら整理してみる。
人間はバラバラが苦手
例えば「次の数字を3秒で覚えろ」と言われたら混乱する。
5 8
1 3 9
3 7 2
では、これならどうだろうか。
58139372
最後に、これならどうか。
12335789
登場する数字は全く同じだが、覚えやすさは全然違う。散らばった数字を横一列に並べるだけで覚えやすくなる。小さい順に並べ替えると、さらに覚えやすくなる。
「なに当たり前のこと言ってるの?」と思われるかもしれない。私は「バラバラが苦手」という人間の性質があらゆる物事に関係している気がする。
区別しないと理解できない人間
国境
人種
川の上流と下流
昼と夜
大人と子供
これらは人間が勝手に定めた「区分」によって生まれたもの。
当書で「富士山はどこにあるのか」と問われていた。富士山の頂上は一目瞭然だ。しかし、富士山の裾野はどこまで続くのか。東京も大阪も富士山と繋がった大地にあるし、海底を含めればアフリカにだって繋がっている。
自然界には境目なんて存在しない。しかし、人間は境界を作って区別する。人間とサルにも境目はない。サルが川の流れの如く連続的に進化して人間になったのだ。
我々が人間とサルを明確に区別しているのは「分類学」という人間が勝手に作り上げた「区別の手引き」を信じているからに過ぎない。
人間は自然をデジタル化する
(ここからは本の内容ではなく、私が勝手に考えていること)
「区分」というキーワードは「デジタル」を想起させる。人間はアナログ(連続的)な自然を、区分によってデジタル化(離散化)している。
虹を7色で表現するのもデジタル化の一例。実際の虹は無限の色から成る。緑色の隣が急に青色になるのではなく、限りなく微細な変化を無限に積み重ねて緑色から青色になる。
無限の変化をつぶさに追っていくと人間の脳はパンクしてしまう。アナログな自然をデジタル化するのは合理的と言える。しかし、デジタル化された物事が真実ではないことを忘れてはならない。
(補足)デジタル?アナログ?
私の言語化能力では、これ以上説明できない。ChatGPTに「デジタル」と「アナログ」の違いを小学生にもわかるように説明してもった。

なるほど。音量調整の例がわかりやすい。
スマホの音量ボタンを押すと、音量が段階的に変化する。これがデジタル。他方、音量バーを触って動かすと動かした分だけ変化する。これがアナログ(厳密にはデジタル信号だろうけど)。
言語によって感情をデジタル化する
とにかく、人間は物事を区分する能力、すなわちデジタル化する能力に長ける。自然界はアナログだが、人間はアナログをアナログのまま理解するのが苦手。複雑かつ多様な自然を単純化すべく、あらゆる区分を設ける。
これは「感情」にも言えそうだ。「嬉しい」「悲しい」など、感情を表す語彙は山ほどある。感情を表す語彙を用いなくても、自身の内面を言語化して説明することもできる。しかし、言語は所詮デジタル。アナログな感情を表すには限界がある。
だからと言って、感情を感情のまま吐露する(声を荒げる、睨む、泣きじゃくるなどの非言語コミュニケーション)だけでは足らない。「わかってよ!」「察してよ!」と感情の言語化を放棄するのは怠慢だろう。
感情を伝える難しさ
良好な人間関係を築くためには、感情伝達の精度が重要になる。感情を伝達するには対話が欠かせない。しかし、感情を正確に表現するのは困難だ。
言語は真なる感情を表せない。それでも言語の精度を高めれば、感情の80%くらいを言語で表現できるかもしれない。また、言語を介さずに感情を推し測るのも不可能ではないかもしれない。
感情伝達の精度を高める方法として、①言語の精度を高める方法、②言語を介さず感情を比較する方法について考える。
言語の精度を高める
まさに、言葉にするのが難しいのだが、私のイメージを頑張って説明してみる。一言でいえば、言語による近似の精度を高める方法。不規則で複雑な感情を、できる限り高精度の言語で表現する。理系の人には伝わるだろうが、区分求積のイメージを持っている。

不規則な形を規則的な形(長方形)の組み合わせで近似する
異なる感情を比較していく
感情を言語化しなくても、他の感情と比較して一致度合いを確かめる方法もありそう。例えば、なんとなくモヤモヤしているが、それ以上説明できないとする。「そのモヤモヤはどんなモヤモヤに近いか」を考えれば、ある程度は感情を共有できる。
足を踏まれたが謝ってもらえなかった時のモヤモヤ
友人に陰口を言われた時のモヤモヤ
ズルをして勝った時のモヤモヤ
今抱いているモヤモヤは、どんなモヤモヤに近いか。下図でいうと、感情Aは感情C、感情Dよりも感情Bに近い。こんな感じで、感情を他の感情に変換してイメージさせる方法もある。

感情Aに似ているのは感情B〜Dのどれか
あとがき
何か結論があるわけではないが、読書途中に湧き出た思考を整理してみた。私は時折、妻の感情が理解できない。プラスの感情か、マイナスの感情かはわかっても、それ以上のことがわからない。そんな時は、妻の言語化能力に頼るか、私が質問をして探っている。まさに、後半に考えた2パターンだ。「区別」の話からはだいぶ逸れたが、非常に興味深い本だ。
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