なぜ、主夫になろうと思ったのか【主夫マガ#1】
「なぜ、主夫になったのか」をテーマにしようと思ったが「主夫になろうと思った理由」と「主夫になれた理由」は分けて考える必要がある。配偶者の同意なくして主夫にはなれないからだ。
今回は主夫になれた(=妻が同意してくれた)理由ではなく、そもそも私が主夫になろうと思った理由を時系列で話す(2564字)。
先に結論から
主夫になろうと思った理由は、次の3点に集約される。
卒業したら就職する、という常識への疑問
会社員としての適性に対する葛藤
家での暮らしを充実させたい願望
就活生時代
正社員になるのが普通?
「やりたいことがない」というのは、就活生によくある悩みだ。多くの人は、正社員や公務員としてのやりたいことを探す。生きていくには金が必要だし、正社員になれば安定した給与を得られるからだ。
しかし、私は「正社員や公務員」という前提に疑問を感じた。金はいくら必要なのか?安定とは何を意味するのか?こうした疑問を解消しないと気が済まなかった。私は「正社員や公務員として」ではなく「一人の人間として」どう生きたいかを考え始めた。
主夫もアリ
最初に出した答えは「幸せに生きたい」だった。しかし、これでは抽象的すぎる。自分にとっての幸せとはなんだろうか?
まず、私は就活生の時点で、既に幸せであることに気づいた。最低限の衣食住、信頼できる人間関係、勉強や読書を通じた学び、そして手軽に楽しめる娯楽。幸せを感じる条件が十二分に揃っていた。
そして、この幸せを維持するには「健康体」「人間関係」「自由な時間」「月8万円の生活資金」が必要だとわかった。言い換えれば、これらを損なわず、毎月8万円を調達できれば良い。
さらに言えば、自分で稼ぐ必要すらなく、他者に養われても構わない。こうして正社員や公務員に限らず「フリーター」「ニート」「ヒモ」「生活保護」「主夫」といった選択肢も出現した(気概もスキルも足りなかったので、起業やフリーランスは考えなかった)。
ひとまず正社員
しかし、養ってくれる人を見つけるのは簡単ではない。当時の彼女(今の妻)に「養ってくれない?」と冗談めかして聞いてみたら「無理」と言われた。
しかも、私は黄金の「新卒カード」を持っていた。新卒のタイミングを逃すと、正社員には二度となれない可能性が高い。
そんなわけで結局は正社員になる道を選んだ。しかし、心の中では主夫になる選択肢も消えてはいなかった。実際、内定式の一週間前に自治体主催の「主夫講座」に参加しているのだから。
(余談)会社選び
「正社員になる」と決めたからには、後悔のない会社選びをしたかった。周囲は知名度や給料を基準にしていたが、私は手取りが月8万円あればよかったし、知名度なんて二の次だった。
会社員の最大の利点は、個人では関われない大規模なプロジェクトにローリスクで参画できること。所詮は他人の事業だし、失敗しても社員が負うダメージは少ない。ゆえに、私は「会社員としてやりたいこと」を明確にし、それを実現できる「場」としての会社を探した。
具体的なことは伏せるが、熟考の末、BtoBのメーカーに入社した。
会社員時代
入社して半年が経った頃、心身の異常を感知した。何の脈絡もなく涙が止まらなくなったのだ。普段泣くことなどない私にとって、これは明らかに異常だった。以前から抱えていた違和感もあって、会社を休みたい一心で心療内科に駆け込んだ。
診断の結果、休職することになった。この休職を機に主夫という選択肢が現実味を帯びてきた。妻と話し合って「結婚して主夫になる」と決めてから退職届を提出した。では、なぜ私は転職やアルバイトをせず、主夫という道を選んだのか。その理由を語る。
チームワークから逃げたい
転職する気は一切なかった。会社に問題があれば、会社を変えることで解決できるが、問題は私自身にあったのだ。
勤め先は名実ともにホワイト企業で、業務内容も「会社員としてやりたいこと」と合致していた。今でも、元勤め先の製品を目にすると嬉しくなる。
精神的な不調の要因を一つに絞ることはできないが、チームワークへの不適応が大きかった(詳細は別記事)。毎日同じメンバーと顔を合わせ、共同作業を続けるのが苦痛だった。
悩みに悩んで入社した会社を、わずか半年で辞めたわけだ。「もったいない」と感じる人もいるだろう。しかし「あれだけ真剣に選んだ会社ですら嫌になった」と思えば、むしろ諦めがつく。
主夫への憧れ
就活生時代から、私は主夫に憧れていた。なぜなら「家」で営まれる「日常生活」を愛していたからだ。私の幸福の大部分は、日常の些細な瞬間からもたらされていた。主夫になれば、大好きな家を職場として、愛しい日常生活を存分に楽しめる。
私は社員寮に住んでいたのだが、休職中は寮に居づらく、彼女の家に居候していた。最初は本当に「寝ているだけ」だったが、体調が回復するにつれ、少しずつ家事を手伝うようになった。結果として、休職中に主夫の生活を疑似体験できたのだ。
この経験を通じて、主夫としてやっていける自信がつき、また主夫の生活がいかに充実しているかを実感した。こうして、主夫への憧れは、より現実的で具体的なものへと変わっていった。
まとめ
なぜ、私は主夫になろうと思ったのか。
きっかけは「学校を卒業したら就職する」という常識への疑問だった。常識に縛られず考えてみると「就職」は数ある選択肢の一つに過ぎなかった。しかし、養ってくれる人を見つけるのは簡単ではない。新卒カードもあることだし、まずは正社員として就職することにした。
それでも、正社員になって一年も経たないうちに、会社員としての生活に嫌気が差した。チームワークを前提とした仕事には耐えられず、フリーランスのように独り立ちするスキルも気概もなかった。
一方で、以前から抱いていた主夫への憧れが、休職中の疑似体験を通じて現実味を帯び、主夫として生きていく意志が固まったのだ。
そして、私のこの変化を隣で見ていた妻が「大黒柱になる」と決意したことで、私は主夫になることができた。この詳細については、主夫マガジン#2で語ることにする。
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