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なぜ、主夫になれたのか【主夫マガ#2】

自分を養ってくれるパートナーを見つけるのは簡単ではない。特に、主夫は旧来のジェンダー規範に反する存在として見られがちだ。今回は、私が妻の同意を得て主夫になれた理由を紹介する(2811字)。

主夫マガジン(略して主夫マガ)は、主夫にまつわる疑問・質問に対して、私なりの答えを集めたマガジン。テーマや目的などの詳細は主夫マガジン#0に書いた。


結論

これから「私が主夫になれた理由」を偉そうに語る。以降の文章からは、妻への尊敬の念が感じられないかもしれないが、その点を心得たうえで書いている。

妻が私の選択に同意してくれた理由
・主夫になりたい理由を丁寧かつ素直に話したから
・主夫になった場合の不安点を整理したから
・主夫としてのスキルをアピールしたから

素直に話し合う

私が「主夫になりたい」と言い始めたのは、大学院(修士)1年目。このとき妻は新卒社員だった。私は卒業後の生き方を考えた末に「必ずしも就職しなくていい」と結論し、選択肢のひとつとして「主夫」を提示した。

(主夫になろうと思った理由は、主夫マガ#1に書いた)

彼氏が「就職しないかも」なんて言い始めたら普通は動揺する。卒業後に就職するのは常識だし、男性に稼得能力を求める風潮も根強い。私は「男として失格」と評されても不思議ではなかった。

しかし、妻は話を聞いてくれた。私たちは交際当初から、何でも話し合える関係性を大事にしてきた。だからこそ、突拍子もない提案でも、妻は冷静に聞いてくれた。

私は就職にこだわっていない理由、主夫が選択肢になりうる理由を素直に話した。それに対し、妻は常識に反することへの恐怖心や、将来への不安を話してくれた。

結局、この時点では妻も納得できず、同意を得られなかった。そして私は会社員として就職することにした(詳細は主夫マガ#1)が、この時の話し合いは決して無駄にはならなかった。


(補足)妻に話したこと

妻に話した内容を大まかに紹介する。興味のある方はどうぞ。

就職(賃労働)をする目的として最もメジャーなのは、生活費を稼ぐこと。貢献、成長など自己実現を目的とする場合もある。目当てがお金であれ、自己実現であれ、最終的には自分が幸せを感じるために求める。

翻って、学生時代の私は、働いていないにもかかわらず、既に幸せを感じていた。私にとって「賃労働」は幸福の必須要件ではなく、健康体、妻や友人との人間関係、自由な時間、最低限の生活費があれば良かった。

この中で、卒業後に就職しないと得られないのは、生活費だけである。学生の時は月8万円の奨学金で暮らしていたが、月8万円ならアルバイトでも稼げるし、他者に養ってもらっても良い。

私は社会を相手にして働くより、日常生活に目を向けていた方が幸福度が高い。一方、妻は家の外に出て他者と協調して働きたい欲求が強い。だから、私が主夫になるのもアリじゃない?


不安に対処する

結局、私は会社員になったが、入社一年目に休職をした。正直、復職せずに退職したかった。退職後の進路を考えた時に、再び主夫という選択肢が浮上してきた。

しかし、妻にとって「大黒柱になる」というのは大きな決断だ。私が休職している間に、二人で葛藤していた。ここでは、私が主夫に(妻が大黒柱に)なるという決断に伴う不安と、その対処を紹介する。

経済的な不安

「妻一人の給料で二人分の生活費を賄えるのか」という不安が真っ先に浮かんだ。

私たちは実際にどれくらいの負担が増えるかを試算してみた。生活費は世帯人数のルート倍で増えるとされている。つまり、二人暮らしでは生活費が約1.4倍になるのだ。試算の結果、当時の妻の給料で十分に足りるとわかった。

キャリアの不安

次に浮かんだのは、妻のキャリアが制約されるのではないか、との不安だ。妻が大黒柱になれば、転職や退職が難しくなることが懸念された。

これについては「妻は夫のために働いているわけではない」との認識を共有した。もちろん、妻が働いてくれるおかげで、私も生活できている。ただ、妻は私たち夫婦の経済的支柱であり続けるとは限らないことを再確認した。

世間体に関する不安

最後に残ったのは、世間の目だ。「大黒柱妻と主夫」という珍しい構図は、非難や偏見を受ける可能性があった。特に、妻は親の反応を気にしていた。

これについては、具体的な対処法というより、時間をかけて徐々に心の整理をしていった。「普通とは何か」「常識とは何か」といった問いに向き合いながら、少しずつ覚悟を固めていったのだ。

実証する

主夫としてのスキルをアピールすることは重要だが、私の場合、あえてアピールしたわけではない。交際中の私の行動が、結果的に「主夫力」を裏付けることになったのだ。

家事・炊事

私は家事全般に自信があったし、妻も私の家事スキルを知っていた。特に、私が大学院生だった頃、仕事終わりの彼女(現在の妻)に手料理をふるまうのが定番だった。妻にとって、帰宅後に夕飯が用意されている喜びは大きかったようだ。

休職中、私が妻の家に居候していた時にも家事や炊事を手伝っていた。妻にとっては主夫生活を疑似体験することとなり、私が主夫になるイメージを具体的に膨らませられたようだ。

家計管理

一馬力で生活する場合、家計管理を徹底しないと経済的な不安がつきまとう。

節約は私にとって趣味であり、我慢や苦痛を伴わずに楽しめる。そのため、無駄遣いをして家計を脅かし、妻を不安にさせることもない。加えて、私はFP3級も保有しており、最低限のマネーリテラシーはあると自負している。

自信

妻は周囲の目が気になる性格で、少数派に属することに不安を抱きやすい。一方、私は「夫婦の在り方に意見できるのは私たち夫婦だけであり、親ですら部外者だ」と考え、常識や周囲を軽視する。

私は妻の不安を和らげる中和剤になっているのだ。もし、夫婦共々が周囲の目を気にしていたら、夫婦生活は不安と葛藤に満ちていただろう。日本で少数派として生きていくには、非常識だと言われても気にしない自信が求められる。

心の余裕

以前も書いたが、主夫(主婦)にとって重要なのは家事よりも「心の余裕」だと思っている。仕事の世界には競争があり、強制や同調圧力に支配されがちだ。その中で「競争疲れを癒し、ついでに家事もやる存在」として主夫がいることで、良好な夫婦関係が保たれる。

資本主義的な考え方に染まると「自分が苦労しているから相手にも苦労を求める」という不健全な思想が生まれがちだ。主夫として最も大切なのは、経済的問題の解決や家事スキルではなく、心に余裕を持って日々幸せに暮らす姿を妻に見せることだと信じている

まとめ

素直に話し合える関係性を土台に、現実的な不安を一つずつ対処し、主夫としてのスキルや心構えを実証したことで、最終的に妻の同意を得られた。

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