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Polar-horrorヘッドドレスシリーズについて

Petit écrin étoile(プチエクランエトワール)のeriと申します。ロリータファッションのヘッドドレスやアクセサリーを製作・販売をしています。

今回はPolar-horror ヘッドドレスシリーズについてのnoteです。
偏光×ホラーをテーマにしたヘッドドレス、3型(各2色)を展開。プチエクランエトワールでは普段明るいテーマでアイテム製作することが多く、作品を追ってくださっている方の中には新鮮に感じた方もいらっしゃるのではと思います。

"ホラー"で私にとって思い入れがあるものは幼稚園の後半〜小学生の頃に出会った児童書の『ぞくぞく村のおばけ』シリーズです。

ぞくぞく村にはおちゃめで個性豊かなおばけの住民達がいます。他人からコンプレックスや短所に見える特性を抱えている住民が多く、しかしそれぞれが個々の悩みとうまく付き合いながら困難を明るく乗り越えるお話が沢山あります。
内容も表現もやさしくて勉強が苦手だった当時の私にも理解がしやすく、楽しい読書時間を過ごすことができた素敵なシリーズです。

沢山の住民達の中で当時私のお気に入りだったキャラクターはピンクのロングのウェーブヘアを持つ人魚の姿をした妖精レロレロ。強くて優しくてきれいなレロレロお姉さんのお話は繰り返し何度も読み返し、外出の際は鞄に入れて一緒にお出かけしました。
他の住民がメインの本でもレロレロが少しでも出てくるなら、その箇所から先に読んだほど好きでした。
なんだか思い出すと子供ながらに今で言う推し活みたい、憧れのお姉さんを推すことを全力で楽しんでいたようで面白いです。

今回の偏光×ホラーのシリーズを企画する中でこのことを思い出し、当時大好きだったレロレロのモチーフの人魚(海の魔物)を私も同じくアイテムのラインナップに加えることを決めました。

"siren" ヘッドドレス

セイレーンは海の魔物。人魚の姿をしているという話も本当は鳥の姿をしていたという話もあるため、海を感じつつ人魚すぎないデザインを意識しました。

本体はインド刺繍リボンに偏光のオーガンジーフリルを合わせています。フリルはFluoriteヘッドドレスで使ったものと同じもので、この色から先にブルーとグリーンに決めてからそれに合うような色・柄の材料を探しました。

Fluorite シリーズ

色々迷って選んだのは少しエスニックな柄のインド刺繍リボン。模様の刺繡が単色でシンプルなタイプです。地の色と刺繍の色がトーン違いの同系色になっており、遠くから見ると少しぼうっとした感じがあります。これがまるで姿の見えるようで見えないセイレーンのように感じてこのリボンに決めました。

ブルーは砂浜のような色のインド刺繍リボンと透き通るようなフリルの青を合わせて海の浅いところをイメージする配色にしました。
グリーンは逆に海の深いところが想像できるような配色。水色の刺繡リボンに少し暗さを感じる緑のフリルをあわせています。
イベントで展示する際に「セイレーンの歌声に誘われちゃってください」と思いながら2つを並べています。

左右の飾りはFluoriteで使用したものと同じだがちょっと形の違うゴールドのレースモチーフをベースに、海を感じるビーズ刺繍の飾りを製作しました。

四角いアバロンシェルのビーズ(暗めの貝のビーズ)、ベッコウのような模様のチェコガラスビーズ、落ち着いたブロンズの小さな小さなビーズにカットが入っており水面のようにきらきら光るブルー(グリーン)のビーズ、陽の光のような模様のゴールドのスパンコール、鱗のような少しオーロラがかったブルー(グリーン)のスパンコールを使っています。それぞれ全てが魅力的な材料で、手に取ったり選ぶ時にはとてもわくわくしました。

大好きな小さな材料たちの好きなところなど、いくつか語らせていただこうと思います。

・水面のようなカラービーズはビーズ屋さんで一目惚れ。沢山の色や大きさのビーズがある中で、そのブルーとグリーンの2色は魅力的な色と輝きに自分の目が吸い寄せられるような感覚になったので、素敵な歌声で海へ誘うセイレーンの飾りにぴったりだと感じて選びました。
・今年はスパンコールの年なのか仕入れに出向くと大体気付ば私の体はスパンコール売り場にいます。このシリーズの一つ前で出した金平糖のconfettiヘッドドレスと同じ亀甲型で、またまた「フランス製」の文字に吸い寄せられてしまいました。

好きなクリエイターさんのおさかなのはしおきと記念撮影してました

・アバロンシェルに関しては活動初期から「いつか使いたいな」と思っていたので今回念願が叶いました。明るい色の貝も好きですが、今回使用したような暗い貝にも何とも言えない魅力を感じています。耳飾りやネックレスだけのシリーズでクラシカルなアイテムを作るのも楽しそうだなと、一回使ってしまえば沢山のやりたいアイディアが浮かんでしまいます。

モチーフの形は人魚のヒレの先の広がりにも鳥が羽ばたく時の羽の広がりにも見えるようななんとも言えない形を目指しました。セイレーンらしく、鱗みたいなスパンコールがしっかり目立つ飾りができました。

今作は色味も雰囲気も身に付けた感じも大人っぽいヘッドドレスになり、かつてレロレロお姉さんに憧れた私にとっての今表現できる”大人のお姉さん”的な作品でもあるなと今回の記事を書きながら思いました。

mummy ヘッドドレス

包帯のおばけ mummyがモチーフのヘッドドレスはまずカラーバリエーションから決まりました。
全身に巻き付く包帯の少し古く汚れた白い布と、目の位置の隙間があいて陰になっている部分をイメージし、生成りと黒の2色展開にしました。

本体はFallen fin ヘッドドレスで使用したものと同じ、やわらかくてやさしい素材感のレース生地・チュールフリル・ハーフリネンで製作しています。

Fallen fin ヘッドドレス

レースとチュールの境目はFallen finのお花のブレードとは異なるものを、なつめが連なったような形でほんのりキラキラしたブレードを選びました。ブレードの色はブラウンベージュ(生成)、グレー(黒)。どちらもくすんだカラーが魅力的で退廃的な雰囲気が演出できたと思います。

こちらもいつも通り手縫いでちまちま縫い付ける作業がたまらなく好きで、製作内では癒しのひと時だったりします。

飾りのリボンはお気に入りでもう何回目かの綿サテン。これもFallen finと同じものです。
それぞれ本体のレースなどの色と同色を選び、その上から生成にはパープル×オレンジ、黒にはブラック×グレーの偏光のオーガンジーリボンを重ねました。綿サテンとオーガンジー、ちょうど幅がほぼぴったりでいい感じ。やさしいのになぜかどこか「重たいな」という質感になりました。透け感のあるオーガンジーを重ねたことから布地の目が細かく見えるからでしょうか?このアイテムの不思議ですごく好きな部分です。

リボンの真ん中には刺繍モチーフを飾りました。
【生成】
生成のモチーフは枯れた花束。ブラウン〜ベージュ〜グレー〜グリーンの間にある、微妙にニュアンスの異なる6色と虹色のメタリックな刺繍糸を使用しています。プチエクランエトワールは鮮やかな刺繡が多いため、普段と違う色選びは新鮮な気持ちで楽しめました。
図案のデザインを考える上で思い浮かべたのは包帯に包まれたおばけのmummyが花束を抱いて眠っているところ。何年も、何十年も経っているので花束はドライフラワーになっています。
あるとき不思議な力が花束に宿り、それがmummyを目覚めさせるきっかけになるかもしれない。そんな背景を想像して花束の一部を虹色のメタリック刺繡糸で刺繍しました。

【黒】
黒は目の刺繍をしました。mummyの包帯の隙間から覗く目は一体どんな目をしているんだろう、と考えたことからこのモチーフに決めました。
図案自体はシンプルに、生地から浮かないようにグレージュ~グリーンの間の色を2色と虹色のメタリックな刺繍糸を使用しています。
目の虹彩(カラコンで色付く場所のあたりです)の部分を虹色のメタリックな糸で刺繍しています。mummyが不思議な力で目覚めて動き出す時をイメージしました。
図案は毎回同じですが、都度手作業でレシピノートから転写して刺繍をしており、さらに余白も多いため、モチーフひとつひとつの個体差が出やすかったりします。眠そうな目もぱっちりさえたように見える目もできるためmummy一体一体の個性のような気がして愛しいポイントです。

モチーフの周りはチェコガラスのビーズでぐるっと囲んでいます。プチエクランエトワールではおなじみの形になってきました。今作では2カラーとも透け感のない濃い色のビーズを選びました。色味のバランスからの選択ですが、まるでおばけが動きはじめたのちに実体化したのを表すみたいで物語を感じています。

発売後いままで2つのイベントに持って行きました。どちらの色も好評で、お客様がご試着された時の笑顔が明るくなる様子がアイテムの自体の薄暗さとなんだかギャップを感じて私には楽しく感じられました。
ちょっと変わった奇抜なコンセプトではありますが、好きを詰め込んで一生懸命形にしたアイテムを気に入っていただけるのは大変嬉しいです。

vampire ヘッドドレス

吸血鬼のヴァンパイアで思い浮かんだモチーフはやっぱり十字架。ロザリオを模した刺繍のモチーフを飾っています。
このロザリオの図案はSolenne ヘッドドレス(販売終了品)と同じもの。

Solenne シリーズ

ラメ入り刺繍糸で刺繍し、繊細で少しクラフト感のあるモチーフを作りました。ロザリオのメダイや珠にあたる部分をシルバーのスパンコールで飾っています。

ロザリオ刺繍につけたリボンはつやのあるうすめのグログランリボン。Solenneと同じものを使っています。この上から偏光のオーガンジーリボンを重ねました(こちらのデザインでも幅がほぼぴったりでちょっと気持ちよかったです)。オーガンジーリボンは生地の薄さから発色もごくごく薄く見えますが、黒色に重ねたことで急に意外なほどにはっきりした発色になり、こういう事があるから製作って面白いなと感じます。

左のオーガンジーの色が、黒に重ねると右のようになります

今回のヘッドドレスはプチエクランエトワールの定番の形、全体が布でたっぷりのフリルになっているタイプですが、ブランド内では珍しくこのフリルの下にさらにフリルを重ねて製作しています。
下から覗くフリルは飾りのリボンに重ねたものと同素材の、偏光のオーガンジーフリルです。やわらかくてうすいオーガンジーフリルがちゃんと見えるよう、この上のメインのフリルにはかたくハリのある黒のジャガード生地を選び、色と質感のギャップで両者の境をはっきりさせました。

平置きで見ると全然目立ちませんが、実際に頭へつけていただくと色の入ったオーガンジーが角度によってほんのり見えるようになっています。つける方の髪の色によっても少しずつ印象が変わりそうで、いろんな方のつけている姿をみたいアイテムの一つでもあります。

メインのジャガードは一見タフタに近いようなするするとした触り心地がとっても素敵。そしてなにより細かく入ったプリズムのような柄にステンドグラスを連想し、キュンとしています。
実はこのプリズムのような柄、似たような雰囲気の柄を飾りリボンのロザリオ刺繍につけたスパンコールも持っていたりします。なんとなくひんやりした無機質な雰囲気が吸血鬼の牙みたい。牙を立てて血を吸われるときってひやっと冷たいのかもしれないなと想像をしました。
今回はアイテムを冷たい雰囲気にしたかったため金具はシルバーを採用しています。

センターラインには梯子レースのようなデザインに端っこはレザーのような質感の素材が含まれている、少しハードな雰囲気のブレードを縫い付けています。全体にプリズムのような柄が入った上から無地の異素材ブレードをつけることにより、ほんのり落ち着きが生まれてまとまりが良くなったと感じます。
本作、ほぼ一番最後の作業がブレードの縫い付けです。ギャザーのおかげで何枚も重なりができたジャガードをすくいながらブレードを縫い付けている時はテンション的に山登りのラストスパートみたい。はじめて作り終わったときは達成感がとても大きかったです。

色展開は血の色のボルドーと、その補色の黄緑。デザインから決めた後、2つ並ぶとなんだかちょっぴりハードな吸血鬼姉妹みたいで可愛いかもと思ってこのカラバリにしました。
ギターとキーボードでバンドデュオとか組んじゃったりして。いっしょに原宿でクレープ食べちゃったりして!想像してニマニマながら取り扱いをしています。

さいごに

それぞれの説明でもちょこちょこ別のアイテム名が出てきましたが、今回のシリーズはプチエクランエトワールのもともとのアイテムをセルフアレンジしたものになります。

sirenはFluoriteヘッドドレス、mummyはFallen fin ヘッドドレス、vampireはSolenneヘッドドレスをそれぞれシリーズのコンセプトに合うよう材料やモチーフを変えるなどして製作しました。
私は音楽で好きなアーティストの曲を楽しむ時、アルバムや企画などで既存曲のアレンジされたバージョンを聞くのが好きです。手芸という全く違う分野ではありますが、音楽と同じく”表現”でもあるため自分でもやってみたいなと考えたことから取り組んでみました。

シリーズ名はポララー・ホラーと読みます。偏光を意味する「polarized light」と「Horror」を合わせた造語です。
フランス語ではあらら!と驚いた時に「Oh là là(オーララ)」と言うそうで、語感が似ているなと思い気に入ってつけています。
繊細で大人っぽいsiren、やわらかく退廃的なmummy、ガーリーでちょっとハードなvampire。シリーズ全て並べた時にそれぞれが個性的に見え、私の好きなコミカルなホラーに近いものができたなと感じました。
いままでとまたちょっと違う製作ができて大満足です。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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