ライブ、ライブ、ライブ
一気に温度が上がる。
思い思いの挨拶を観客に向けると、彼らは自らの楽器を携えて定位置に着く。
もうすぐだ、もうすぐ。
期待がぐんぐん膨れ上がる。全員の思いが一致している。
耳馴染みのあるメロディラインが演者たちから紡ぎ出されて、観客は感情を叫びや、手に込めて精一杯応える。
最高の空間の始まりだ。
音に合わせて自由に体を動かす。やりたくないことはしなくていい。やりたいことだけすればいい。音に乗っかったら、あとは体が思うがままに任せていい。
少し高いステージ上から観客に注がれる視線は、時に睨めつけるようで、時に妖艶で、時にキラキラ光っていて、魅力という言葉を具現化したようだ。
放たれる音楽は、言葉は、観客の剥き出しになった情感にそのまま訴えかける。目の前で作り出される音楽は、生の音楽しか持ち得ない躍動を持っている。
コールアンドレスポンスで一体感が高まる。隣の人も前の人も、みんな同じ曲を知っていて、このアーティストを好きでいる。一時だけでも、繋がったような気持ちになる。
大声のレスポンスを受けた時のアーティストの、この上なく嬉しそうな顔が好きだ。私たちが、今アーティストであるあなたたちを幸せにしている。そして、言うまでもなくあなたたちが私たちを幸せにしている。
まとまっていないMCも、台本を覚え込んできたのかっていうくらい完璧なMCも好きだ。等身大のあなたたちを見たいし、この空間にかけてくれた思いを感じたい。
昨日のライブでは、本当に感謝しています、という言葉を何度も聞いた。
アーティストがいなければライブなんて存在しえないけれど、観客がいなくても、確かにライブなんてできないのだ。
だからそうやって、観客の存在に感謝できるアーティストは正しいし、私たちは一層、この幸福感を、私たちからの感謝を、どうやって伝えようかと、拳を振り上げ、喉を枯らす。
元気が出ない時は、好きなアーティストのライブに行くといい。
好きでなくとも、音楽にひたむきに向き合っているアーティストなら、誰でもいいかもしれない。
今日のライブというこの空間は一回きりしかなくて、絶対に楽しませたい、観客の耳に自分の音楽を染み込ませたい、という強い意志で音楽を生み出すアーティストと、それに応えるほどの大きさの生命力をステージにぶつける観客。
この空間に、どうしても足を運んでみて欲しい。
きっと、明日からも目の前に広がる人生が、ほんの少し色を変える。