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お気に入りたち

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ちょっと前の私がかいた、今の私がいいなと思える、noteたちです。もし読んでくださったら、とっても嬉しい!
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#エッセイ

聴いてます①

普段音楽を聴いていることが多いので、音楽を聴きながら何かを考えることが多い。

でもそのとき思ったことは、音楽なしで語ることはできないので、音楽と共に書きたい。
それをこの「聴いてます」シリーズで書こうかな、と思う。
簡単に言うと好きな曲についてつらつら書くということなのだけど。
お付き合いいただけたら嬉しいです。

①は、この曲

GotyeのSomebody That I Used To Kn

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短歌とか短歌とか22

短歌とか短歌とか22

いつの間にみんなきれいになるのでしょう顔も心も文字も言葉も

例えば、3つ年下の男の子の手書きの文字がとても綺麗だった時。
久し振りに会った一つ上のお姉さんが、とても綺麗で大人びた容姿になっていた時。
乱暴で嫌いだった同級生が紳士じみた振る舞いをするようになっていた時。
先輩、と声をかけてくれた後輩の言葉遣いがあまりに優しくて素敵だった時。

その人間的な成長に感動と素直な尊敬を抱く裏に、どうして

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変、目にとめる世界

地下通路の端っこに、スーツ姿の男性が横になっていた。

倒れているようにも見える。息をしているのかわからない。スーツだし、もしかしたら熱中症か何かで倒れているのかもしれない。

地下通路を歩いている多くの人は、横目でちらっと見てそのまま歩いていく。今はまだ夕方の6時くらい。酔っ払いを見るには少し早くないですか?

けれど自分も、素早く行動できるわけではなく、とりあえず立ち止まる。観察する。眠ってい

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愛しのベルーガ

愛しのベルーガ

休日には水族館に行った。とても近いのに、一度も行ったことのなかった規模の大きな水族館。

雨の日曜日だったので、当たり前のようにたくさんのお客さんがいて、子供連れやカップルもたくさんいた。そうだよね、水族館、楽しいもんね。

けれどまあ、ご存知のように、水族館はあまりにも人が多いと見物しにくいところでもある。

子供が多く、親御さんも疲弊しているのか、前に強引に割り込んでくる子供や、水槽をどんどん

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ライブ、ライブ、ライブ

ライブ、ライブ、ライブ

一気に温度が上がる。
思い思いの挨拶を観客に向けると、彼らは自らの楽器を携えて定位置に着く。
もうすぐだ、もうすぐ。
期待がぐんぐん膨れ上がる。全員の思いが一致している。
耳馴染みのあるメロディラインが演者たちから紡ぎ出されて、観客は感情を叫びや、手に込めて精一杯応える。
最高の空間の始まりだ。

音に合わせて自由に体を動かす。やりたくないことはしなくていい。やりたいことだけすればいい。音に乗っか

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短歌とか短歌とか¹⁷

短歌とか短歌とか¹⁷

秋晴れの空見上げれば潮の匂い台風で海が近づいたのか

台風の次の日、海なんて近くない大学構内で、潮の匂いのようなものを感じた。なぜ。台風一過の晴れた空、ふんふんとずっと辺りを匂っていた。

潮の匂いがたまに訪れるときがある。
潮の匂いは、生きてるのかもしれないなぁと思わせる匂いである。

いつでもすぐに、この世界はすべて幻想とか、ゲームとか、誰かの想像とか、そんなもので、実は実態も何もなくて、神様

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光にまみれている

光にまみれている

窓から見える景色がどんどん緑を増してきて
私は息をしている

こんな時間に電車に乗っている人の
その服装とか態度とか髪型とかで
人生を類推するのは、ちょっと無理だということを知ってる

だって、私のことも誰もわからないでしょう?

誰にも分かられないような気持ちで電車に乗っている。心地いい。

眠っている人
音楽を聴いている人
明後日の方角をぼうっと眺めている人
スマホを触っている人

かくいう私

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「Lady Bird」をみた夜のこと

「Lady Bird」をみた夜のこと

ひとりで行動するときは、頭は冷静なのに、心臓が妙に騒ぐようなことがあって、それは私の克服しえない幼少期の記憶とか、そんなようなものが重なって起きているのだろうなと思っている。

妙にそわそわしてしまって、ともすれば考えが口をついて出て、ロボットがオイルを口から漏らすように、独り言がとめどなく溢れてしまいそうな、そんな気分になってしまう。
大抵気分が沈んでいるときに、そんな気分になってしまうのだけれ

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夢中になった映画の話がしたい

夢中になった映画の話がしたい

2018年5月、私は1本の映画に夢中になった。
「call me by your name」ルカ・グァダニーノ監督の長編映画5作目。アドレ・アシマン原作。ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーをメインキャストに据え、北イタリアの美しい情景とスフィアン・スティーブンスの楽曲や80年代のヒット曲が彩る、純粋なラブストーリー。

とまぁここまでつらつら書いてはみたが、私はそこまでの映画ファンでもないし、

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夕暮れの羽根

夕暮れの羽根

毎夏毎夏、私は、誰に言われることもなく、蝉が鳴き始めていることに気づいていた。今年はあの子の言った「蝉、鳴き始めたね」という何気ない言葉に、始めて蝉が鳴いているのに気づいた。

私は私を取り巻いている世界について、鈍くなっているかもしれないし、これは年齢を重ねたことの正しい反応かもしれない。よくない変化なのかもしれない。
別段、何も示唆していないのかも。
蝉が鳴いているなんて、夏が本格的に始まった

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短歌とか短歌とか⁸

短歌とか短歌とか⁸

トイレカバーベーコンきゅうり 走り書き 拾って渡したあの子の生活

暮らしに必要なものは意外と多い。
最初は物が少なくて、簡素で美しかった部屋も、次第に物であふれていく。

生活とは、物を買ってそこから何かをエネルギーや快楽として得て、残ったものを捨てて、また買っての繰り返しなのかな、とふと思う。

生活のサイクルを止めないために、働く。
生活に彩をつけるために、友達と会って、趣味に没頭する。

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息もできなくなっていた

中学生や高校生時分、自意識の権化のようになって苦しくなることがなかった人なんているのだろうか。

私がよく目にした漫画や小説やエッセイの主人公たちは、みんな肥大する自意識に苦しめられていた。(穂村弘さんのエッセイなんて、自意識についての話がとても多くて、どれだけ助けられたかわからない)
肥大する自意識を仮にもくちゃんと呼ぼう。もくもくとわき上がっていくからだ。もくちゃんは色んな形でやってくる。

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観念としてのオレオ

観念としてのオレオ

オレオ食べる
オレオ食べる
たまにわってからたべる
わってクリームをひとなめして食べる
たまにクリームをすべて舐めてから食べる

牛乳につけるとおいしいらしい
ふむ、と思いながら食べる
おいしいらしい
今度やってみるか
そう思いながらまた食べる

いつか私の思考も全部停止して、観念としてオレオを食べられたらいいのに
こんなにおいしいオレオを美味しいとも思わずに、けれどどこかでおいしいと思いながら食

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今、今この瞬間に

今、今この瞬間に

歌いだしたくなる
人ごみの中
夜のけだるげなにおいのする人たちの群れ
改札に向かう足取りの中

疲れた目を足元に向けていたお姉さんからは
一転、さわやかで甘い香りがした

この香りをまとった、家を出る前のあなたは、夜のあなたがそんな目をすることを予想していましたか

頭の中に流れてくるメロディを
口から出したくて、今この瞬間に
理性みたいなリミットを外してしまえたらいいのにと思っている

いや、リ

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