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ちょっと前の私がかいた、今の私がいいなと思える、noteたちです。もし読んでくださったら、とっても嬉しい!
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2018年7月の記事一覧

「Lady Bird」をみた夜のこと

「Lady Bird」をみた夜のこと

ひとりで行動するときは、頭は冷静なのに、心臓が妙に騒ぐようなことがあって、それは私の克服しえない幼少期の記憶とか、そんなようなものが重なって起きているのだろうなと思っている。

妙にそわそわしてしまって、ともすれば考えが口をついて出て、ロボットがオイルを口から漏らすように、独り言がとめどなく溢れてしまいそうな、そんな気分になってしまう。
大抵気分が沈んでいるときに、そんな気分になってしまうのだけれ

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短歌とか短歌とか²

短歌とか短歌とか²

こまつなの切り落とした根を指さして「ばら!」というの あなたはいうの

夜中にどばどばと料理がしたくなるホルモンがでるときってないですか。冷蔵庫がすっきりしていくことも、明日からの糧が形作られていくのも、順序を考えて冷静に料理地図を頭に広げるのも、全部楽しい!
そんな夜が20日に一回くらい現れる。
今日はそんな日。

小松菜って、どんな料理に使ったらいいのかわからなくて、あまりつかったことがなかっ

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彼の、夏の

夏は、ほんのすぐそこまで来ていて、彼は少し雨の匂いを嗅ぐ。
綺麗な水しぶきをあげながらおばあさんが道路に打ち水をしているのを眺めていたら、段差を越えてしまって、がくりと自転車が大きく揺れた。

片耳にだけつけているイヤホンからは、歌なのかノイズなのかわからないような重低音重視のハードロックが流れている。
首筋には汗の玉がいくつも浮かんでいて、シャツの襟に触れた瞬間にシャツの染みへと変わっていく。彼

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夢中になった映画の話がしたい

夢中になった映画の話がしたい

2018年5月、私は1本の映画に夢中になった。
「call me by your name」ルカ・グァダニーノ監督の長編映画5作目。アドレ・アシマン原作。ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーをメインキャストに据え、北イタリアの美しい情景とスフィアン・スティーブンスの楽曲や80年代のヒット曲が彩る、純粋なラブストーリー。

とまぁここまでつらつら書いてはみたが、私はそこまでの映画ファンでもないし、

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短歌とか短歌とか⁶

短歌とか短歌とか⁶

薄暗い部屋間違えている人生 明日をそっと叩いてなでる

何もやる気が起こらず、自分のことを癒さないといけない、と勝手に思い込む夕暮れ。とても悲しいことが起きたわけではない。とても怒ったわけでもない。体調が悪いわけでもない。
明日が来るのがとても嫌で、それでも明日がいい日になることをしっかり祈ってしまえるような、そんな気持ちでいる夜の入り口。

夕暮れの羽根

夕暮れの羽根

毎夏毎夏、私は、誰に言われることもなく、蝉が鳴き始めていることに気づいていた。今年はあの子の言った「蝉、鳴き始めたね」という何気ない言葉に、始めて蝉が鳴いているのに気づいた。

私は私を取り巻いている世界について、鈍くなっているかもしれないし、これは年齢を重ねたことの正しい反応かもしれない。よくない変化なのかもしれない。
別段、何も示唆していないのかも。
蝉が鳴いているなんて、夏が本格的に始まった

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短歌とか短歌とか⁸

短歌とか短歌とか⁸

トイレカバーベーコンきゅうり 走り書き 拾って渡したあの子の生活

暮らしに必要なものは意外と多い。
最初は物が少なくて、簡素で美しかった部屋も、次第に物であふれていく。

生活とは、物を買ってそこから何かをエネルギーや快楽として得て、残ったものを捨てて、また買っての繰り返しなのかな、とふと思う。

生活のサイクルを止めないために、働く。
生活に彩をつけるために、友達と会って、趣味に没頭する。

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息もできなくなっていた

中学生や高校生時分、自意識の権化のようになって苦しくなることがなかった人なんているのだろうか。

私がよく目にした漫画や小説やエッセイの主人公たちは、みんな肥大する自意識に苦しめられていた。(穂村弘さんのエッセイなんて、自意識についての話がとても多くて、どれだけ助けられたかわからない)
肥大する自意識を仮にもくちゃんと呼ぼう。もくもくとわき上がっていくからだ。もくちゃんは色んな形でやってくる。

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