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物患い ラビット

いつも通りにソファに腰かけていると、
二つの袋を持ちながら悩んでいるウサギがやって来た

「どっちにしようかな。どっちにしようかな」

そんなことを言いながら、近づいてくる
手に持っている袋は革袋とビニール袋
何かが入っているのだろうけど、中身は見えない

「どっちにしようかな。どっちにしようかな」

そんなことを繰り返しつぶやいているのを見ていると

ちらっ

「どっちにしようかな。どっちにしようかな」

ちらっ

こっちを見てる
ただ、こっちを見られても...

「どっちにしようかな。どっちにしようかな」

ちらっ、ちらっ

あー、これはあれですね。聞かなきゃダメなんですね
でも、何を聞けば

「どっちにしようかな。どっちにしようかな」

タンタンッ タンタンッ

ストンピングまでする始末
駄目だ聞かないとずっと繰り返しそう

「ねぇ、何を悩んでいるの」

ウサギに尋ねると鼻をピクっとさせながらこっちを見た

「どっちか選ばなきゃいけないんだけどね。どっちにすればいいのか迷ってるんだ」

ウサギはそういうと、そのまま続けて

「片方はとても好きなものばっかりなんだ、でももう片方はまだわからないから」

「好きなものが多いほうがいいんじゃないの?」

そう尋ねると、ウサギは不思議そうな顔でこっちをみて

「好きなものしかないってことは、全部知ってるんだよ?
 でも、もう片方は好きになるかもしれないものが
 たくさんあるかもしれないじゃない?」

ああ、そうか。そういう考えもできるのか。
なんだか、一本取られたような気分になった。

「それは迷うね。すぐ決めなきゃいけないの?」

「うん、そんなに時間はないんだよ。
 だからどっちに行くのかは歩きながら決めるよ」

そう言うとウサギは袋を置いて出口に向かっていった

この袋じゃないんだ。迷ってたの。
そのまま袋は放置されているし、なんだかよくわからなかった。


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